藤井 風、新曲「満ちてゆく」に流れる“無欲の哲学” 人生初のラブソングに込められた愛の在り方
藤井のこうしたメッセージは基本的にデビューの頃から一貫している。執着を捨て、欲を断ち切ること。持っているものを手放すこと。このようなモチーフは、過去の彼の楽曲やMVでも描かれてきたし、今作に対する本人の「これまでずっと表現していたものの延長線上」というコメントからも窺い知れる。この曲はそうした彼の哲学が純度高く結実しているように思う。
その一貫性は今作の制作クレジットにも表れていると言えるかもしれない。この曲は、プロデュースにYaffle、録音とミックスに小森雅仁、マスタリングに山崎翼といった、1stアルバム『HELP EVER HURT NEVER』〜2ndアルバム『LOVE ALL SERVE ALL』に携わった国内のクリエイターが再集結。録音も日本で行われている。近年発表された「Workin' Hard」や「花」といった楽曲は海外プロデューサーを迎えて制作されていたため、今作はある意味で彼にとって原点回帰で、以前までの作品と地続きにあると言えるだろう。
そして、個人的には彼がアーティストとして無双状態に突入したような印象を受けた。今の彼なら、きっかけとなる“種”さえ受け取れば、常に高水準のアウトプットを生み出せるモードにいるように思う。もちろんそこには“種”との相性が必要で、今回の場合であれば主題歌となる映画の描くものと彼の哲学がフィットしたからこそ、こうした素晴らしい化学反応が生まれたわけだが、そうした条件さえ整えば、いつでも名曲を生み出し続けられるモードに入ったのではないかと感じた。今は活動を重ねるごとに彼の考え方や人間性、歌で伝えたいことが研ぎ澄まされていて、聴き手にわかりやすく、伝わりやすい形に洗練されている。以前よりも楽曲の解像度が上がり、はっきりと見えるようになってきた。今のこの状態の藤井 風に、何十曲でも何百曲でも作ってもらいたいくらいだ。
※1:https://realsound.jp/2024/03/post-1601177.html
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