『ボカコレ』にDaoko、たなか、原口沙輔らプロが参戦 ルーキー部門の形骸化など課題も
先述の通り、ルーキー部門の役割は確かに形骸化しつつある。しかしシーンにはそれに代わる、新たなアマチュアの登竜門が今まさに育っている最中だ。昨年11月に第二回が開催された匿名投稿イベント『無色透名祭』はその最たる例だろう。応募総数は『ボカコレ』にも引けを取らぬ約4800曲を誇り、キタニタツヤをはじめシーン出身のプロクリエイターらもその動向に注目していた。
参加者の中には第一線で活躍するミュージシャンもいれば、今イベントで自作曲を初披露する、正真正銘のルーキーも非常に多い。活動歴や知名度を問わず全員が同じ土俵で勝負できる、稀有な環境。それが初心者の参加ハードルを下げることに大きく貢献しているのだろう。
また、昨年のシーン動向を見ても明らかだが、スマッシュヒットを成し遂げた曲は、『ボカコレ』の結果とは無縁のケースが大半である。ゆこぴ「強風オールバック」はSNSでの拡散が着火剤であったし、むしろシーンを超えた支持の獲得は、てにをは「ザムザ」、Guiano「私は、私達は」など、アプリゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』がきっかけとなる方が傾向として強い。
同様に原口沙輔の出世作「人マニア」も確かに前回の『ボカコレ』投稿作だが、当時は11位と、TOP10圏外という結果だった。直近で「人マニア」のロングヒット記録を止め、話題となった吉田夜世「オーバーライド」。こちらも『ボカコレ』とはまったく別所で起こったムーブメントである。
そう考えれば『ボカコレ』へのプロクリエイターの参入は、イベントの存在意義を高めること、そして文化全体の興隆においてはデメリットだけではない。むしろある意味、シーンがより大衆化・一般化し始めたことを象徴する現象かもしれない。音楽を生業とするプロクリエイターにVOCALOIDという土壌が、正しく意義のある競争の場として認められた。それはすなわち、ひとつのシーン成熟の証左と見てもいいのではないだろうか。
次回の『ボカコレ』のみならず、今後より大勢のプロがシーンへ参画することも予測される。それはつまりVOCALOIDというジャンルで、さらに多彩な音楽が生まれる可能性を秘めていることになる。これからの拡大もまだまだ期待できる、シーンの変化の片鱗。それが『ボカコレ 2024冬』で垣間見えたと言ってもいいかもしれない。
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