Ado、BE:FIRST、TWICE、星街すいせい、Saucy Dog、羊文学……注目新譜6作をレビュー
New Releases In Focus
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はAdo「Value」、BE:FIRST「Set Sail」、TWICE「ONE SPARK」、星街すいせい「教室に青」、Saucy Dog「この長い旅の中で」、羊文学「tears」の6作品をピックアップした。(編集部)
Ado「Value」
穏やかな神秘性を感じさせる低音域、感情の繊細な動きとリンクする中音域、衝動的な波動を描き出す尖った高音域をシームレスにつなぎながら、楽曲に潜んだメッセージを浮き彫りにする。やはり彼女のボーカル表現は唯一無二だと改めて実感させられる新曲だ。作詞・作曲・編曲は「キレキャリオン」「Cynic」などで知られるボカロP・ポリスピカデリー。ふくよかな厚みを感じさせるトラックやエッジーなギターなどを組み合わせたサウンドはまさにジャンルレス。虚実が混ざり合い、記憶と現実の境目があいまいになる状況を描いたリリックもきわめて魅力的だ。神話的でもあり、ポストアポカリプス的でもあるMVはイラストレーター/アニメーターのG子がiPad Proで制作。(森)
BE:FIRST「Set Sail」
ONE PIECEカードゲームとのコラボから生まれた新曲。実際にこのゲームが大好きと公言するSHUNTOとRYUHEIが作詞に参加し、愛好家がニヤリとするであろう単語を散りばめている。メロディアスな歌を中心に据えたダンスチューンで、BE:FIRSTにしてはラップ/ヒップホップ要素が控えめ。というか、下敷きになっているのはバンドが鳴らすロックミュージックだろう。繰り返されるシンセの旋律はギターリフのようだし、高音域のロングトーンでたっぷり引っ張るサビと、そこから〈Yeah yeah yeah〉に流れていく歌のあり方は、明らかにハードロック的カタルシスを意識したもの。彼らにとってかなり新鮮なタイプの一曲となっている。(石井)
TWICE「ONE SPARK」
13thミニアルバム『With YOU-th』からのリード曲。軽やかなシンセ、ふわりと舞い上がる透明な歌声、一緒に歌いたくなるメロディと覚えやすい英語詞。挑発的なラップで駆け上がるガールズグループも珍しくない時代だが、ポップスとしての親しみやすさ、メンバーの美しさや愛らしさを前面に押し出すこの曲は、TWICEが10年間キープしてきた“王道”の強さを物語る。ドラムンベースが使われているのが新基軸と言えば新基軸だが、ビートがいかに斬新か、といったことは主題ではなくて、TWICEらしい安心感、かわいくてカッコいいダンスがメイン。ケーキに蝋燭などの小物を用意し、それぞれの仲の良さをアピールするMVも、今はなんだか新鮮に映る。(石井)