月9ドラマ『君が心をくれたから』の音楽はどう作られた？　松谷卓が広げる物語の世界

『神様のカルテ』で起きた考え方の変化

――これまでたくさんの作品を手がけてきた松谷さんにとって、特に印象深いものは？

松谷：『大改造!!劇的ビフォーアフター』ですね。僕の人生を変えましたから。音楽で食べていけるのかも全くわからない状態でこの世界に飛び込んだ僕があの作品と出会ったことで、『ビフォーアフター』の「TAKUMI/匠」の曲の人だと、みなさんにとんでもなく認知していただきました。

――私自身も、あの楽曲はとても印象に残っています。元々作っていた曲を『ビフォーアフター』の中で使用したということでしたよね。

松谷：「TAKUMI/匠」はあの番組のために作った楽曲ですが、僕はもともと学生時代に曲作りを勉強していたわけではなく、遊びで作曲していたんです。『ビフォーアフター』の中には、高校時代にそうやってポチポチと作っていた曲も使われていますが、そんな遊び感覚のまま大学にも行かずに音楽の世界に入っちゃった。音楽の仕事のことも全然知らないまま、突然揉まれながらやってきたのが始まりなんです（笑）。

――当時は高校を卒業したばかりだったと思いますが、テレビ番組から声がかかるようなチャンスをどのように掴んだのですか？

松谷：19歳で発表したオリジナルデビューアルバムのほか、舞台音楽などをやっていく中でテレビ業界の音楽の人と繋がりました。「こんな曲を作ってるんです」と聴いてもらったところ、これは面白いからやってみようという流れになりました。

――『ビフォーアフター』以降の仕事はどのように決まりましたか。

松谷：僕が音楽を担当した最初の映画が『いま、会いにゆきます』だったのですが、その時の音楽プロデューサーの方（北原京子さん）が声をかけてくれました。北原さんにはその後もお世話になりっぱなしですが、当時『ビフォーアフター』の音楽をやっていたとはいえ、右も左も分からない僕を上手に誘導して下さったと思います。なので北原さんのおかげでそのまま映画の世界に飛び込めました。

――音楽を作っていたらトントン拍子に導かれていったのですね。

松谷：トントン拍子かどうか自分では解りませんが、音楽を目指している人からすればきっとそう思われるかもしれないですね。何も知らないまま突然いろんな現場を経験して、とても大変でしたけれど（笑）。

――映像音楽の仕事というのは狭き門で、やりたいけれどどうしていいか分からないという人はたくさんいると思います。また、音楽を続けたいけど、自分の道を見つけられないという人も多いのではないかと。そういう方に向けてアドバイスなどはありますか？

松谷：前向きなアドバイスにならないかもしれませんが、みんな一人一人持って生まれたものが違っていて、すでに宿っているものも違うと思うんです。僕は自分が音楽家として続けていけるかもしれないと思うようになったのは、『神様のカルテ』という映画音楽を担当した時でした。それまではがむしゃらに食らいつく意気込みでなんとかしなければと必死でしたが、この映画をやった時に初めて“ひょっとしたら音楽の神様もいて、自分の音楽を見守ってくれているんじゃないか”と感じたんです。そこからはあまり欲張らずに作品と向き合っていこうと思えるようになりました。

――なるほど。

松谷：音楽を続けることに限らず、それぞれの人生って説明のつかないことだらけなんじゃないかと思うんですよ。人から認められるとか、多くの人に評価されるとか、そのためだけにみんな生きているわけじゃない。誰か一人を幸せにするために生まれてきている人もいるかもしれないし、それは動物や植物など自然に対してもそうだと思います。身の回りにある小さな幸せを忘れずにつかみ取ってさえいれば、みんな素敵な人生になれるんじゃないかと思います。すごく難しいことだけど、僕は音楽でやるべきことがあるのではないかという感覚ではあります。

――その答えが見つかるまで、苦しくなることはありませんでしたか？

松谷：それこそ、僕も音楽がつらいというところまで（気持ちが）落ちていましたから、苦しむこともありましたよ。でも、幸い家族に「そのままでいいんじゃない？」と言ってもらえたので、考えるための時間を与えてもらったというつもりで向き合い続けました。今にして思えば、その時間があったからこそ見つけられたことがたくさんありましたね。だから、悩むときは時間が許す限り悩んでいいと思いますよ。苦しいんだったら苦しくていいじゃんって。幸せしかなかったら、この苦しみを味わうことができない。そして、苦しみを知らなかったら味わうことができない幸せもあるでしょうし。そうやって自分を見つけていくことも大事な気がします。『君が心をくれたから』の雨と太陽にのしかかる宿命がどんなに苦しくても、この2人はそれを受け入れる準備をしてきているじゃないですか。そこから逃げようとしない2人の姿は本当に美しいと思いながら見ていますよ。

――では、松谷さんが今後挑戦してみたいと思うことがあれば教えてください。

松谷：コンサートをしたり、自分のオリジナル作品を発表したりするための準備を進めていきたいです。それを皆さんに聴いてもらえたら、どんなにありがたいことかと思いますね。ただ、きっとそれも巡り巡ってやってくるもの。自分に必要なことが、ちゃんと自分の元にやってくるものなんじゃないかと思っています。そういった自然な感覚を大切にしながら音楽と向き合っていきたいですね。

――最後に、『君が心をくれたから』オリジナル・サウンドトラックのポイントを教えてください。

松谷：聴いた時に、その人の中に生まれた感触を大事にしてほしいです。僕の中に湧き起こったものが音楽になった大事な作品ではありますが、だからといってその想いを強制するつもりはありません。聴いてくれた人の中で何か感じるものがあるのであれば、それを大事にしてほしいですね。それがみんな違っていても全然OKだし、否定的にとらえる方がいてもかまいません。気持ちを入れて聴いてもらえたなら嬉しいですし、それくらい自然体であってほしいですね。

■リリース情報
『「君が心をくれたから」オリジナル・サウンドトラック』
発売日：2024年2月21日（水）
形態：CD/ ESCL-5919＋デジタル配信
収録曲数：全26曲
価格：¥2,750（税込）
Pre-add/ Pre-save開始日: 2月12日（月）
※https://paps.grooveforce-jp.com/lp?id=2024020915145857e3zRvVN955&openExternalBrowser=1
Pre-order開始日: 2月19日（月）

■関連リンク
ドラマ『君が心をくれたから』公式サイト：https://www.fujitv.co.jp/kimikoko/
松谷卓　SNS/公式HP
X：https://twitter.com/Piano_Hitsuji
Instagram：https://instagram.com/piano_hitsuji?igshid=MTNiYzNiMzkwZA==
YouTubeチャンネル：https://www.youtube.com/@SuguruMatsutani
オフィシャルサイト：https://suguru-matsutani.com/
ソニーミュージック・オフィシャルサイト：https://www.sonymusic.co.jp/artist/SuguruMatsutani/