Spotify「RADAR: Early Noise」2024年ならではの特徴は? 近年の傾向や今後の展望も聞く

 Spotifyが毎年その年に飛躍が期待される注目の国内アーティストを選出する企画「RADAR: Early Noise」の2024年版を発表した。本稿では、改めて「RADAR: Early Noise」という企画の成り立ちや意図、今年ならではの傾向など、Spotify Japan 音楽企画推進統括 芦澤紀子氏に話を聞いた。

Spotifyならではの視点で選ばれた“ブレイク必至”のアーティストたち

 2017年より日本でスタートした「Early Noise」は、これまでにあいみょん、King Gnu、ずっと真夜中でいいのに。、Vaundy、藤井 風といった、今では日本の音楽シーンを代表する存在となったアーティストたちをいち早くキャッチし世に広めてきた。「RADAR: Early Noise」とは、そもそもどのような狙いのもと立ち上げられたプログラムなのか。

「Spotifyでは、パーソナライズされたおすすめやプレイリストを通して、新たなアーティストや楽曲との出会いを創出しています。そんな“発見”を生み出すストリーミングの大きな特性を活かした取り組みとして、日本で2017年にスタートしたのが『Early Noise』です。2020年春には、世界中のリスナーに各国の注目アーティストを紹介するグローバルプログラム『RADAR』と連携し、『RADAR: Early Noise』へと進化しました。プログラムを通して、Spotifyの国内外のリスナーに、自身の知っているお気に入りのアーティストだけでなくこれまでに知らなかった新しいアーティストとの自然な出会いを提供し、新進気鋭のアーティストのリスナー基盤形成をサポートする目的で立ち上げました」

 「RADAR: Early Noise」では例年、以下のような点を重視してアーティストを選出している。

「作品のクオリティやアーティストのポテンシャル、今後の活動計画などをベースに、リスニングデータの分析やその年の音楽シーンの方向性の予測も加味しながら、今後の躍進が期待できる10組を選出しています。リスニングデータについては、月間リスナー数や再生回数の推移はもちろん、どれだけ自発的・能動的に聴かれているかなども重要視しています。アーティストによっては、バイラルチャートアクションや海外でのリスニングデータを参考にすることもあります。近年の傾向として、動画投稿サイトなどを積極的に活用し、ソーシャルメディア上でバズを起こし、そこからストリーミングで一気に人気を広げるアーティストが増えています。また、楽曲の制作だけでなく、MVやアートワークなども自らプロデュースするなど、セルフブランディングに長けたアーティストが多い印象です」

 芦澤氏いわく、2024年の選出アーティストは「キャリアのスタートから選出されるまでのタームが短いアーティストが多く、歴代の中でもかなりフレッシュなラインナップになっている」という。

「ヒットの生まれる環境や構造が時代と共に変化したことで、例えばフルサイズの楽曲を多数リリースしていなくても、SNSを通じて発信基盤を持っていてクリエイティブのセンスやリスナーの反応を見ることができるケースもありますし、最近のトレンドとして、何かのきっかけで発見されてから広がるまでの期間が短くなっていることもその背景にあるかと思います。さらにストリーミングの浸透によって、ジャンルや年代感、国境などの垣根がなくなっていき、自由度の高いボーダレスな作品を届けるアーティストが増えてきていることにも注目したいと思っています」

「RADAR: Early Noise 2024」選出アーティスト10組

 フレッシュな顔ぶれが揃ったとはいえ、10組ともに実力や話題性においては折り紙付き。Spotifyが自信を持って世間に広めていきたいアーティストが名を連ねている。

「例えば、CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINは、都内の路上の車の中で、環境音や様々な道具を元に作り出すパーカッシブなサウンドを駆使し、夜な夜な遊びながら曲を制作する謎な動画がTikTokなどSNS上で話題に。しかし完成した楽曲はどれもハイクオリティでハイセンス。ほぼノンプロモーションにもかかわらず、多くのアーティストやクリエイターが注目し、朝霧JAM、FESTIVAL de FRUEなど各種フェスにも出演するなど、その評判は高まるばかりです。

 tuki.は、圧倒的な声の魅力と歌唱力にまず惹きつけられます。15歳とは思えない言葉選びによる歌詞も印象的。現在リリースされているのは『晩餐歌』『一輪花』と『晩餐歌(弾き語りバージョン)』の3曲のみですが、Spotifyの月間リスナーは早くも160万人を突破。自身のプレイリストやライブラリに楽曲を保存して繰り返し聴いているリスナーがどんどん増えており、同世代の若いリスナーのみならずあらゆる世代に広がっています。

 十明は、自身が歌唱したアニメ映画『すずめの戸締まり』の主題歌『すずめ』が、2023年海外で最も聴かれた国内楽曲ランキングの8位にランクイン。総再生数は1億1,800万回を突破するなど、すでに世界中の多くの人に歌声の魅力が届いています。2023年7月、野田洋次郎プロデュースの元にシンガーソングライターとして新たなスタートを切ると、一転して心の闇や劣等感などをテーマにダークポップな十明ワールドを展開。今後放たれる作品の表現の幅にも期待です。

 離婚伝説は、一度聞いたら忘れないインパクトのあるアーティスト名と、王道なポップセンスに彩られたクセになるサウンドがとにかくキャッチーで話題性抜群。年代もジャンルも超えて様々な要素を昇華した音楽性を備え、アートやファッションなど音楽以外のカルチャーへの感度も高い。CDショップバイヤー、ラジオ、TV、雑誌、WEBなど様々なメディアも注目し、パフォーマンスの評判から出演するライブが軒並みソールドアウトするなど、シーンの新たな“伝説”となる予兆を見せています」

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