SUM 41とNOFX、『PUNKSPRING 2024』は最後の来日公演に? パンク史に刻んだ功績を辿る
2006年に初開催され、2017年をもって一旦終了したものの、昨年2023年に奇跡の復活を果たした、国内外のパンク系アーティストが一堂に会する屋内音楽フェス『PUNKSPRING』。昨年はMy Chemical Romanceをヘッドライナーに据え、東京(幕張)と大阪で1日ずつ開催されたが、2024年は初の幕張2日間開催が実現する。しかも、初日3月16日公演のヘッドライナーは昨年の『PUNKSPRING 2023』を直前に出演キャンセルし、その後5月には解散、およびそれに伴うアルバムリリースとワールドツアー開催を発表したSUM 41。そして翌3月17日公演では、こちらもバンド解散を示唆しているNOFXがヘッドライナーを務める。どちらもここ日本で高い人気を誇るバンドだけに、両バンドにとって最後の来日になる可能性の高い『PUNKSPRING 2024』に寄せられる期待は、例年よりも大きなものがあるのではないだろうか。
SUM 41:ポップパンク+メタリックなギターで個性を確立
『PUNKSPRING 2024』初日のトリを飾るSUM 41はフロントマンのデリック・ウィブリー(Vo/Gt)を中心に、1996年にカナダで結成。時期的にはGreen Dayのメジャー1stアルバム『Dookie』(1994年)や続く『Insomniac』(1995年)、The Offspringの3rdアルバム『Smash』(1994年)などが大ヒットし、アメリカ発のパンクバンドが初めてチャート/セールス面で大成功を収めたタイミングだ(90年代初頭のNirvanaもサウンドやスタンス的にパンクバンドと捉えることができるが、その後に続くグランジムーブメントを考えると、ここではあえて切り離して考えたい)。彼らの台頭し始めた90年代半ばを境に、それまでのハードロック/ヘヴィメタルやグランジ、ラップメタルをはじめとするニューメタルとは一線を画するオーセンティックなパンクロック/ポップパンクに心を奪われたティーンは少なくなかったはずだ。SUM 41もそんなバンドのひとつと言えるが、1998年に生粋のメタルファンだったデイヴ・バクシュ(Gt)が加入したのを契機に、メジャーデビュー以降の方向性が確立。初EP『Half Hour Of Power』(2000年)を経て、1stフルアルバム『All Killer No Filler』(2001年)でアルバムデビューを果たす。
Green Day以降のポップパンクをベースにした楽曲に、シャープさの中にも親しみやすさが感じられるデリックのボーカルと、随所にメタリックなリフやフレーズが散りばめられたデイヴのギターサウンドが乗ることで独特の個性を確立。「Fat Lip」のヒット(Billboard Hot 100で最高66位)も手伝い、アルバム『All Killer No Filler』は全米チャートで最高13位を記録し、全世界で300万枚以上を売り上げるヒット作に。同年秋には同作の日本盤も発売され、翌2002年2月の初来日公演は即日完売を記録するほどの人気を博した。続く2ndアルバム『Does This Look Infected?』(2002年)は全米32位と前作を超えるヒットにはならなかったが、適度にメタリックなポップパンクサウンドが日本で好意的に受け入れられ、オリコン週間アルバムランキングで12位まで上昇(もちろん洋楽チャートではなく国内アーティストを含む総合チャートで、だ)。同アルバム発売直前の10月には早くも再来日公演が実現し、2003年5月には全国6都市を回るジャパンツアーも開催されるなど、彼らの人気は本国以上にここ日本で定着しつつあった。
3rdアルバム『Chuck』(2004年)は初の全米TOP10入り(最高10位)、日本ではオリコン2位まで上昇する大ヒットに(日本では本作がキャリア最大のヒット作となる)。2004年夏には『SUMMER SONIC 2004』に初出演し、Green Dayやアヴリル・ラヴィーンなどとともにメインステージに立つことになる。しかし、バンドとして順調にキャリアを重ね続けるも、2006年にデイヴがバンドを脱退。同郷のポップパンクバンド Gobでフロントマンを務めるトム・タッカーを迎え、バンドは活動を継続する。以降も『Underclass Hero』(2007年/米7位、日本2位)や『Screaming Bloody Murder』(2011年/米31位、日本7位)など作品を重ねつつ、2009年には『PUNKSPRING 09』に初出演(ちなみに、この年はNOFXも出演している)。その後も2012年、2016年に出演が実現している。
2013年にはオリジナルドラマーのスティーヴ・ジョクスが脱退するも、2015年には後任としてフランク・ズーモが加入。さらに、同年夏にはデイヴもバンドに復帰し、新たに5人編成で再始動。レーベルもそれまでのメジャーからインディーズのHopeless Recordsへと移籍し、6thアルバム『13 Voices』(2016年/日本盤にはONE OK ROCKのTakaをフィーチャーした「War feat. Taka (ONE OK ROCK)」を追加収録)、7thアルバム『Order In Decline』(2019年)を発表している。その後、コロナ禍を挟み2022年頃から活動を再開させ、初のCD2枚組作品となる8thアルバム『Heaven :x: Hell』の制作に着手。そんな中で発表された解散宣言だっただけに、驚きを隠せなかったファンも少なくないはずだ。
ラストアルバム『Heaven :x: Hell』は2024年3月29日リリース予定。ということは、『PUNKSPRING 2024』での日本ラストステージは新作発売前に体験できる貴重なステージになる。当日はキャリアを総括するようなグレイテストヒッツ的内容になることが予想されるが、そこに加えて先行リリース済みの「Landmines」「Rise Up」や、もしかしたらニューアルバム収録の新曲が初披露される可能性も高い。2000年代以降のポップパンク界隈を牽引し、日本のパンクバンドにも多大な影響を与えてきた彼らの最後の勇姿を、ぜひとも見逃さないでほしい。