ドラマ『東京貧困女子。』で描く無慈悲な現実と一縷の希望 THE YELLOW MONKEY主題歌が物語に与える深み

 シリアスに進行するリアリティの強い作品だけに、希望よりも絶望を覚えてしまう視聴者もいるかもしれない。しかし、そんな物語に一筋の希望を与えてくれるのが、このドラマの主題歌として制作されたTHE YELLOW MONKEYの新曲「ホテルニュートリノ」だ。

 このドラマ放送当日の11月17日夜、バンドとして約3年半ぶりの東京ドーム公演『THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024“SHINE ON”』を2024年4月27日に開催することを発表したTHE YELLOW MONKEYだが、それと同時に約4年ぶりとなる新曲「ホテルニュートリノ」が同ドラマの主題歌となることもアナウンス。情報解禁から数時間後には、ドラマのエンディングでこの新曲を早速耳にしたというファンも少なくなかったことだろう。

 同楽曲はドラマに寄り添い、吉井和哉(Vo)が書き下ろした渾身作で、彼らにしては珍しくスカ調アレンジを取り入れたアップチューン。再集結後に制作されたオリジナルアルバム『9999』(2019年)の延長線上にあるガレージロック的なテイストを残しながらも、来年で結成35周年を迎えるバンドとは思えないほどのフレッシュさと、ベテランだからこその渋みや重みが同居する聴き応えのある力作に仕上がっている。菊地英二(Dr)&廣瀬洋一(Ba)が生み出すシンプルで軽やかなビートに、時にリズミカルに刻まれ、時にディレイによってダブ的要素を生み出す菊地英昭(Gt)のギター、そしてオルガンやシンセサイザーといった“上モノ”が重なり、その上に喉の療養からの復活を感じさせる吉井の艶かしい歌声が乗ることで、王道感がありながらもどこか新しさも伝わる“唯一無二のTHE YELLOW MONKEYサウンド”を構築することに成功している。もちろん、不穏さがありつつも、どこか刹那さや儚さが伝わるメロディラインも健在だ。

 また、ドラマの物語を自身やバンドの境遇を重ね合わせたかのような他人事ではない歌詞も、非常に吉井らしいものがある。現実世界の残酷さや無慈悲さを嘆きつつも、それでも生きていれば誰にでも朝が平等に訪れ、わずかな希望を見出そうとする……そんな物語に「ホテルニュートリノ」というタイトルを付けるあたりも、実に吉井ならでは。タイトルに関しても、「ホテルニュー○○」という日本によくあるホテル名+イタリアの都市トリノと受け取るか、それともホテル+これ以上小さくすることのできない素粒子のひとつ・ニュートリノと受け取るかで解釈がだいぶ異なりそうだが、なぜ吉井がこの架空のホテル名をタイトルに冠したのか、いずれ発表されるであろう同曲フルバージョンを耳にした際に改めて考察してみたい。

 再集結後に“第二のデビューアルバム”といえるような『9999』で、一度は歩みを止めた物語の“その先”を最良の形で表現したTHE YELLOW MONKEY。その後も世界情勢やメンバーに起きた出来事により、思いもしなかったドラマが描かれてきたが、この「ホテルニュートリノ」から本格的に始まるであろう「THE YELLOW MONKEYの次なるステージ」でどんなストーリーが刻まれていくのか。まずはドラマともどもその世界観をじっくり味わい尽くして、“続き”を待ちたい。

■番組情報
WOWOW連続ドラマW-30『東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-』
2023年11月17日(金)23:00放送/配信スタート
【放送】毎週金曜23:00[第1話無料放送](WOWOWプライム)
【配信】各月の初回放送終了後、同月放送分を一挙配信(WOWOWオンデマンド)

番組特設サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/hinkon/

<スタッフ・キャスト>
原作:中村淳彦『東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか』(東洋経済新報社刊)
脚本:高羽彩 監督:青木達也 遠藤光貴 音楽:田渕夏海
出演:趣里 三浦貴大
霧島れいか 宮澤エマ 田辺桃子 安斉星来 東風万智子
金澤美穂 高田夏帆 樋井明日香 三浦獠太 梅舟惟永 川島潤哉 柿丸美智恵
淵上泰史/高橋ひとみ
主題歌: THE YELLOW MONKEY「ホテルニュートリノ」(ワーナーミュージック・ジャパン)
企画・プロデュース:大木綾子 プロデューサー:小髙史織 遠藤光貴
制作協力:ザ・ワークス
製作著作:WOWOW

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