Thinking Dogs、衝動的なロックで新たな姿へ 本当の自分たちが詰まった悲願の1stアルバム

Thinking Dogs 悲願の1stアルバムを語る

 Thinking Dogsがメジャーデビューから8年というタイミングで、念願の1stフルアルバム『FAQ』を12月13日に配信リリースした。映画やドラマのタイアップ曲でたびたび話題を読んできた彼らが「これまで言い切れなかったこと」を形にしたのが今作だという。全曲の作曲をわちゅ〜(Ba)が、作詞をTSUBASA(Vo)、Jun(Gt)、大輝(Dr)が手がけており、今年4月から毎月配信してきたシングル曲に、新曲3曲を加えた計13曲を収録。個性豊かな歌詞やサウンドを通して、全く新しい“ロックなThinking Dogs”を印象づけるアルバムだと言っていいだろう。本当の意味でスタートラインに立ち、バンドとしての衝動をたぎらせる彼らにインタビューを行った。(編集部)

「自分たちが心の底から言いたいことを曲に乗っけた」(わちゅ~)

──Thinking Dogsは2015年メジャーデビューですが、今作が初のフルアルバムとなります。まずは今作をどのような想いで作り始めたのか教えてください。

わちゅ~:僕たちはデビュー当時からずっと「君たち、何がしたいの?」ということを言われてきていたんです。これまでのシングルはすべてタイアップをいただいていたし、楽曲もいただくことが多かったので、いろいろなタイプの楽曲に挑戦させてもらっていて。その結果、自分たちでも「本当の自分たちって何だろう?」と見失ってしまっていた。今回は「君たち、何がしたいの?」という問いに対して「これが俺たちの答えです」と言えるような作品にしたいと思って作り始めました。だから『FAQ』というタイトルなんです。

──聴かせていただいて、ロック色の強いアルバムだと感じたのですが、今のThinking Dogsの鳴らしたい音楽がそういうものだったのでしょうか?

大輝:曲を作る上でTSUBASAの歌声を生かせる曲にしたいねという話になって。今までは綺麗に歌い上げる曲が多かったのですが、TSUBASAは実はしゃがれた感じも得意なんですよ。だからそういう一面も見せられたらと思った結果、ロックっぽい曲が多くなったのかなと思います。

──今作では全曲の作曲をわちゅ〜さんが、作詞を他の3人が手がけられていますが、楽曲の制作はどのように進めていったのでしょうか?

わちゅ~

わちゅ~:初めてメンバーで曲を作ってみようという話になったときは、曲を先に作って、そこにみんなが書いた歌詞を乗っけてみて「どの歌詞がいいか?」という流れで作っていたんですが、数年前から詞先になりました。というのも、特に今回のアルバムはそうなんですが、メロディに合う言葉を探すんじゃなくて、本当に自分たちが心の底から言いたいことを曲に乗っけたかったから。譜割とかを気にせず、自由に歌詞を書いてもらいました。

──全曲の作曲を手がけるわちゅ〜さんは、かなり大変ですね。

わちゅ〜:はい、大変でした(笑)。

TSUBASA:でも「早く歌詞ください」って感じじゃなかった?

わちゅ〜:うん。曲から先に作り出すと自分の手癖が出てきちゃうのでマンネリ化していたところもあって。歌詞が先にあると、自分の今までの引き出しになかったものが自然と生まれてきてくれるので、作っていて楽しかったですね。あとは「ライブでこういう曲が欲しいけど、今までなかった」みたいな曲も作っていけたので、すごく楽しみながらできました。

TSUBASA:コロナが明けてから特にライブを強く意識するようになりましたね。ライブができなかった期間、「できるようになったらこうしたい」みたいな願望をずっと溜めこんでました。

わちゅ〜:しかも今回は1曲ずつ小出しに配信リリースしていたので、1曲ずつライブでの反応を肌で感じられて。「じゃあ、他にこういう曲があったほうがいいかもね」みたいな調整もしながら作っていけたのでよかったです。

──本作にアグレッシブなロックサウンドが多いのは、ライブを見据えた曲作りをしていたからだったというのも一因なんでしょうね。

TSUBASA:いろいろなものが爆発したんでしょうね。自分たちのやりたいことが見えてきたときに、俺たちのライブってもっと思ってることとか叫んでもいいんじゃないかなって……爆発したんだと思います(笑)。

──特に前半の楽曲は怒りを歌った曲が多いですよね。

わちゅ〜:1曲目から「I xxxx YOU」だもんな〜(笑)。

大輝:歌詞を書く上で共通のテーマがあって。それが、溜め込んでいた鬱憤や、一人の人間として世の中に対して思うこと、だったんです。僕らがリアルに思っていることというのはもちろんなのですが、聴いてくれる人もみんな会社に対する不満だったり、家庭での苦労だったり、人それぞれ大変なことを抱えていて。でもなかなか口に出して言う機会はないじゃないですか。だったら俺らが曲にして代弁しようという想いも込めました。

Thinking Dogs『I xxxx YOU』LYRIC VIDEO

TSUBASA:最初、テーマを決めずに自由に歌詞を書いて提出してみたら、3人ともめちゃめちゃ怒り狂ってたんですよ。そこで「これが自分たちが今歌いたいことなんだな」と思いました。

わちゅ〜:僕らって、言ってしまえばすげえ弱いんですよ。良くも悪くもいい子ちゃんで。下手に社会に揉まれて生きてきちゃったせいで角も取れちゃったし、心の中では「こうなんだけどな……」って思ってるけど言えない。でも世の中にそういう人って多いと思うんです。だから歌詞を書いてくる3人にも、「自分のネガティブな部分もそのまま歌詞に出して」という話をしました。だからほとんどノンフィクションだよね? 「キャパクラ」なんてJunでしかないもんね。

Jun:そうだね。

TSUBASA:あ、〈薬〉は合法ですよ(笑)?

Jun:すべてがパンチラインになるような言葉を並べてみようかなと思って、当時の自分も重ね合わせながら、言葉遊びに重きを置いて書いてみました。そしたら、わちゅ〜さんがパキっとはめてくれました。

三者三様の個性が表れた歌詞

──3人が作詞を手がけられているということで、ご自身の書いた歌詞でも他のメンバーが書いた歌詞でも良いので、特に気に入っているフレーズや「すごい!」と思ったフレーズを教えてください。

大輝:どの曲がというわけじゃないんですけど、歌詞を書いてみて、自分は明るい歌詞が書けないなと思っていたんです。誰かの背中を押す歌詞よりも、「何くそ」っていう気持ちを書くほうが得意だなって。だけどTSUBASAは誰かの背中を押してあげたり、前向きに引っ張ってあげたりできる歌詞が書けるタイプなんだなって、今回改めて思いました。そこは自分にないものだし、すごいなと。全部ネガティブだと聴いている人も心が痛くなっちゃうかもしれないので、明るい歌詞が得意なメンバーがいてよかったなと思いました。

TSUBASA:僕は大輝の「多分絶対」というワードがすごく好きです。僕だけじゃなくて、聴く人がみんなハッとするんじゃないかなと思いましたね。僕じゃ絶対に書けないフレーズです。

Thinking Dogs『多分絶対』LYRIC VIDEO

Jun:僕も大輝の「I xxxx YOU」とか「多分絶対」というタイトルがすごいなと思いました。あと大輝の歌詞はストレートで気持ちいい。僕だったらもっと回りくどくなっちゃうなと思うんですけど、〈嫌い 嫌い 嫌い〉(「I xxxx YOU」)とかストレートに乗せてくるのはすごいなと思います。TSUBASAくんの歌詞は、表現の繊細さがすごい。「ダレカ」は女性目線で、よくこんな繊細な表現が思いつくなと思って。

──三者三様の歌詞を受け取ったわちゅ〜さんは、それぞれから歌詞を受け取ってどう感じましたか?

わちゅ〜:3人の歌詞がそれぞれ違う系統なので、すごく楽しかったですね。もちろんどの歌詞も全部好きなんですけど、まず大輝でいうと……「I xxxx YOU」は曲を乗せるのがすごく楽しかったです。どんどんイライラが増していくような歌詞だったので、曲も静かなところからどんどんボルテージが上がっていくようにしたいなと思って。さっき話に上がった〈嫌い 嫌い 嫌い〉も、実は最初はここまで「嫌い」というワードは多くなかったんですよ。でもこんなにイライラが募っているんだったら連呼したほうがいいんじゃないかという話をして増やしました。

大輝:俺、すごいイライラしてる人みたいじゃん(笑)。

わちゅ〜:(笑)。TSUBASAの曲だと「ダレカ」はもともと違う歌詞が乗っていたんです。その歌詞がすごく良かったから、たくさんの人に聴いてもらえるような間口の広い曲にしようと思ってバラードにしました。

TSUBASA

TSUBASA:でも僕はもっと攻撃的なサウンドになるだろうなと思って書いた歌詞だったから、わちゅ〜から曲が届いたときに、この歌詞だとイメージと違うなと思って全部書き直したんです。

わちゅ〜:そしたらすげえいい視点の歌詞になっていて。驚きましたけど、アルバムの中に1曲は恋愛の曲が欲しいなと思っていたので嬉しかったですね。しかも女性目線のこの切り口はTSUBASAにしか書けないんじゃないかな。「ダレカ」は思い入れもありますし、僕のイチオシの1曲でもあります。

TSUBASA:もともとは平和を願うような曲だったんですけど、そのとき観ていたドラマの影響もあって、恋愛の曲になりました。でも自分たちが思っていることを吐き出すというテーマからは逸れていないつもりです。

わちゅ〜:あと個人的にはJunのワードチョイスが好きで。他の曲のサビではフレーズを繰り返すようにしているんですけど、「キャパクラ」は全部のワードが好きすぎちゃって、繰り返しのフレーズがほぼなくなっちゃいました。

Jun:ストーリーとしても最後には光が欲しかったから、繰り返しがなくなってしまい……ボーカル泣かせです(笑)。

TSUBASA:(苦笑)。

Thinking Dogs『キャパクラ』LYRIC VIDEO

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