マカロニえんぴつを強くする確信と余裕 ライブの醍醐味詰め込んだ『マカロックツアーvol.16』

マカロニえんぴつ、代々木第一レポ

 マカロニえんぴつの全国ツアー『マカロックツアーvol.16 〜マカロニちゃん、じつはとってもシャイなの…仲良くなっても時間を置くとすぐまた照れちゃうからコンスタントに会ってくだシャイ…♡編〜』の東京・国立代々木競技場第一体育館公演。最新アルバム『大人の涙』のリリースツアーにして、キャリア最大規模のアリーナツアーでマカロニえんぴつは、ロックバンドとしての矜持と進化を明確に形にしてみせた。本稿では、2days公演より11月19日の模様をレポートする。

 登場SEはいつものようにThe Beatles「Hey Bulldog」。田辺由明(Gt)、高野賢也(Ba)、長谷川大喜(Key)、サポートドラムの高浦“suzzy”充孝、そして、はっとり(Vo/Gt)がステージに姿を見せると、広い会場を埋め尽くした観客から大きな歓声が上がる。アリーナ特有の高揚感が広がるなか、オープニングナンバー「愛の波」へ。オレンジ、赤の照明とともに骨太なバンドサウンドが響き、長谷川の鍵盤ハーモニカの音色、田辺のギターソロが楽曲を彩る。バンド全体の塊感とメンバーそれぞれのプレイがバランスよく体感できる音の良さにグッと惹きつけられる。

 「マカロニえんぴつです。楽しんでいきましょう。自由にやってちょうだい!」(はっとり)という挨拶に導かれた人気曲「レモンパイ」で一体感を演出した後は、ビートルズを想起させる爽やかで切ないポップチューン「ペパーミント」、印象的なベースラインから始まり、はっとりが「一緒に歌ってくれ」と呼びかけた「たましいの居場所」と、アルバム『大人の涙』の楽曲を続けて披露。新曲がステージで生き生きと躍動し、ライブ全体の軸をしっかりと担う。これこそが今回のツアーのキモだったことは言うまでもないだろう。

 「国立代々木体育館、こんな大きい場所でやれるようになりました。みなさんのおかげです、ありがとうございます」(はっとり)という言葉から、最初のMC。「声が出せるんで、せっかく。好き放題歌ってください。ここで出会った人たちと一つになるんだという思いで参加してくれると。最後までよろしく」と呼びかけると、会場全体を拍手と歓声が包み込んだ。オーディエンスの中心はおそらく10代後半〜20代前半。はっとりの言葉には、若いファンへの“ライブの醍醐味を知ってほしい”という切実な願いが込められていたと思う。

 ここからはマカロニえんぴつの奥深い歌詞の世界を味わえる場面が続いた。“もう触れられない愛”をテーマにした「リンジュー・ラヴ」から、〈愛がないならもう会えないよ〉というフレーズが刺さる「ブルーベリー・ナイツ」。葛藤や不安を抱えながら、それでも前を向いて進む決意を歌った「零色」、そして、〈憎むため じゃなくて 守るため たたかう〉と歌う「TIME.」。新旧の楽曲を結びつけ、愛とは何か? 人生とは何か? という普遍的なテーマをオーディエンスの心に響かせる。こういうケミストリーを起こせることもまた、今のマカロニえんぴつの強さだ。

 「俺たちがあなたのことを心から慕っているように、大好きであるように、あなたも特別な思いで接してくれていると思う」「でも、同じ気持ちで愛し続けるって、とっても難しい。だから途中で諦めてしまうこともある」「そんな当たり前の絶望のなかで僕が感じたこと、みんなも感じていることを歌います」というMCに導かれたのは、ギターの弾き語りで披露された「嘘なき」。さらに“きみ”の不在を切々と歌い上げる「ありあまる日々」、伝えたくても伝えられない愛のもどかしさを描いた名曲「なんでもないよ、」をつなぐ。曲調、歌詞のメッセージを有機的に結びつけながら、それぞれの楽曲を際立たせる構成も印象的だった。

 ゆるい雰囲気でメンバー紹介を行い、はっとりの「昨日のライブが終わって、軽く飲んでたら、酔っ払いのサラリーマンがいて……」というフリから、はっとり、田辺が出演する“酔っ払い”ムービーを投影し、昭和歌謡っぽいデュエットソング「嵐の番い鳥」へ。レーベルメイトであるゲストボーカリストのリコ(ヤユヨ)が登場し、音源の世界観を完璧に再現してみせた。

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