香取慎吾、『【推しの子】』は人生そのもの アイドルとして“嘘”と“愛”を守り抜く強さ

 香取慎吾が11月17日、自身のYouTubeチャンネルにて、動画「『推しの子』読んでみたらしんごちんの人生そのものだった!」をアップした。レジェンドアイドルの香取が、アイドルをテーマにした漫画を読むと、どんな感想を抱くのか。その答えが、すでにタイトルにあるように「僕の人生そのものだった」という言葉なのも感慨深い。

『推しの子』読んでみたらしんごちんの人生そのものだった!【香取慎吾】

 『【推しの子】』は、主人公・ゴロー(雨宮吾郎)が前世の記憶を持ったまま、推しのアイドル・星野アイの子どもとして生まれ変わる転生ストーリー。単純に“推しの子”として生まれた幸せを噛みしめるだけではないのが、この物語の肝とも言える。成長した主人公が母親のアイを取り巻いていた過去を探っていくサスペンス要素がスリリングで、「芸能界の闇」とも呼べる描写が非常にリアルだと話題の作品だ。

 なかでも、象徴的なキャラクターが“完璧で究極のアイドル”と称される星野アイだ。アイを語るうえで欠かせないのが“嘘”。作中にも「上手な嘘を吐(つ)いてほしいのがアイドルファンというものだ」「この芸能界(せかい)において嘘は武器だ」という印象的なセリフが度々登場する。その都度、香取は「そうなの?」とカメラに向かって問いかけるのだった。

 この一見何気ないリアクションに、改めてこの漫画と対峙した時の感じ方の違いを感じずにはいられなかった。いわゆる“一般人”と呼ばれる私たちは、ファンとして「そうそう」と頷いたり、「きっと芸能界で生きる人たちはそんなマインドで日々活動しているのだろうな」などと想像したりして、物語を読み進めていく。

 だが、香取は小学生の頃からテレビの世界で育ってきた、いわば生粋の“芸能人”。アイドルに憧れる側を経験する間もなく、自らがアイドルとなって多くのファンを魅了してきた。だからこそ、ファンがアイドルに対して求めている心理を「そうなの?」と想像していく側なのだった、と。

 「嘘はとびきりの愛なんだよ?」というアイの名台詞があるように、アイドルである“こっち側”とファンである“そっち側”という境界線は明確にある。圧倒的な努力を重ね、多忙なスケジュールをこなし、明らかに普通の暮らしとは違う生活を送るアイドル。しかし、その大きな違いがありながらも「同じ人間だ」と親しみを感じてもらうこと、それこそがアイドルの見せる“嘘”なのではないか。

 第1巻を読み終えた香取は、「(ファンは)見たいんだよね、もっと。だけど、見えるようで見えない部分もあるからこそ、そこに魅力を感じたりとか。こういうところってアイドルとして大切だと思うのね。――みたいなことを思ってアイドルしてきた僕と、どこか通ずるものはあるな」と、しみじみと語った。

 香取が自称する“パーフェクトビジネスアイドル”も、ほとんどがアイの“嘘”とほとんど同じ意味なのだろう。“ビジネス”や“嘘”と聞くと、どこか損得勘定が働くドライなイメージが先行しがちだが、“プロ意識”や“使命感”、“向上心”という言葉とも言いかえられる部分があることに気づく。

 何をどこまで見せることで、あるいは見せないことで、ファンが“人間”として親近感を抱きながら、夢を託す“アイドル”という存在に思ってもらえるか。香取がアイに共感したのは、その守るべきラインを、文字通り人生をかけて死守する強さがあったからだと思う。

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