つきみ、ギャルとパンクが出会った異色バンド 若者の共感呼ぶ“嘘のない音楽”が生まれるまで

“自分に向けて歌ってくれる”って勘違いするくらい刺さる(しゅか)

ーー最新作『きえたくなる度君、刻む♡』は、今お話にあったように、強くなろうとする女の子の歌が4曲収録されています。今年は配信シングルが何作も出ていますが、その中で今作はどういった位置付けなのでしょうか?

ににちゃん:今年配信したものは、昔からあった曲をレコーディングしてリリースしたという形なんです。だけど『きえたくなる度君、刻む♡』は最近作った曲だけが収録されていて。「全曲リード曲!」と思えるくらい、今の自分たちの全てが詰まった作品やと思っています。

ーー昔作った曲と比べて、歌いたいことに変化は感じますか? 先ほど、恋愛の仕方の変化が楽曲にも出ているとのお話もありましたが。

ににちゃん:それで言うと、ずっと変わっていますね。正直「寝込むくらい」は、“寝込むくらい好きでいてほしい”という気持ちを歌っていますけど、最近は「早く消えてくれ!」って思ってるし(笑)。そのときそのときに恋愛で感じた気持ちを歌っているから歌いたいこと、思っていることはずっと違う。振られたらキレるし、「めっちゃ好き!」って思うこともあれば「もう嫌だ! 会いたくない!」って思うこともある(笑)。ただ、この「寝込むくらい」は自分的には“ににちゃんの恋愛自己紹介ソング”だと思っていて。私はこういう女ですって。

しゅか:そうだね。

ーーににちゃんさんは「寝顔は可愛い」って言ってほしいと。

ににちゃん:ほんまにそう! 絶対に言ってほしい! っていうか、言わないとおかしいやろ(笑)!

つきみ / ミッドナイトセブンス Live Movie

ーーそんな自己紹介ソングのあと、2曲目は「ミッドナイトセブンス」。疾走感あふれるメロディアスな楽曲で、歌詞は愛憎渦巻く恋愛の曲です。

ににちゃん:前に2年付き合っていた彼氏がいて、その人と別れたときに書いた曲なんですけど、今年の夏にその人とヨリを戻したんです。だけど先月、別れてしまって。そのとき、この曲を作って「ヤバ!」「ヤバ曲作っちゃった!」って思いました。

ーー今のににちゃんさんにも響いた。

ににちゃん:はい。本当に今の恋愛観のすべてです。

しゅか:本当にいい歌です。初めて聴いたいたときに「めっちゃいい曲できたじゃん!」と思って。自分が思っていてもうまく言葉にできないことが歌詞になっていて「すご!」と思いました。「それそれ!」って。

ーー〈今後一生わたしって存在に苦しんでほしい〉という歌詞なんか、まさに思っていても言葉にできない感情ですよね。

ににちゃん・しゅか:(大きく頷く)

ににちゃん:そこは本当に、自分で見てもヤバイと思います。

ーーお話を伺っていると、恋愛しているときのににちゃんさんの感情は、ジェットコースターのように上がり下がりしていると思うのですが、どこの状態でもその感情を歌詞にできているような気がしますよね。

ににちゃん:でもハッピーなときは書けない。バッドに入ったときは言葉にできますけど、ハッピーなときは「万歳!」「大好き!」しか思わんから(笑)。

ーーちなみに「ミッドナイトセブンス」は先行配信もされていますが、反響はいかがですか?

ににちゃん:みんな「最近別れたからわかる」と言ってくれて。みんな失恋してるんやなって思いました(笑)。でも自分のことを傷つける男のために傷つく必要はないのにって、自分にも曲を聴いてくれる人にも思いますね。「どんどん次行こう!」って言いたい。

ーーつきみのお二人やつきみの楽曲が、一緒に失恋を乗り越えてくれる存在のようで頼もしいですね。3曲目「消えないで、天使」は、〈どうか強く強く生きてくれ〉という愛にあふれたメッセージが印象的な1曲です。

ににちゃん:この曲は「寝込むくらい」のアンサーソングです。「寝込むくらい」は私の自己紹介ソングやけど、「消えないで、天使」は自分も含め、メンバー、家族、友達とか自分が好きな人たちに対して書いた曲です。

ーーアンサーソングを書こうと思ったのはどうしてだったのでしょうか?

ににちゃん:ちょっと恥ずかしいんですけど……自分が自分の彼氏やったらこの歌を書くだろうなと思って。自分が彼氏にこう思っていてほしい。っていうか、こう思わんとおかしいやろ! って(笑)。そう思っていたら、自分含めて、私の大事な人たちにいつも思っていることを書いた歌になりました。

ーー自分に対しても、というのが素敵ですね。まさに今の世の中で大切にされているセルフラブの考え方でもあって。

ににちゃん:ほんまに自分のこと好きやから。何よりも大事やし。

しゅか:いいことだよ。

ーーしゅかさんはこの曲を初めて聴いたときどう思いましたか?

しゅか:どの曲もそうなんですけど、自分だけに向けて歌われているわけじゃないのに、“自分に向けて歌ってくれる”って勘違いするくらい刺さりました。

ににちゃん:ライブで歌っているときは、目の前のお客さんのこととか、一緒にステージに立ってくれているしゅかやサポートの人のことも考えて歌っているんで。作るきっかけは「自分が彼氏に書いてほしい」ということだったけど、今は本当に大事な人のことを思いながら歌っています。

しゅか:私、めっちゃコーラスが苦手なんですけど、「消えないで、天使」ではサビをににと一緒に歌っていて。レコーディングはドラムよりも緊張しました(笑)。でも一緒に気持ちを込めて頑張って歌いました。一緒にブースに入って歌ったんだよね、2人で。

ににちゃん:うん。一発目はボーカルを一人で普通に録って、そのあとしゅかが録るときに一緒に入って、しゅかの後ろで歌いました。

ーーサビを2人で歌うのは、すごく良いですよね。

ににちゃん:この曲は自分の大事な人に作った歌だけど、〈強く強く生きてくれ〉とか、“にに”としてじゃなくて、“つきみ”として大事な人に歌いたくて。だからつきみで歌いたいなと思ってシンガロングにしました。

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