=LOVE、初のさいたまスーパーアリーナ公演 オーケストラ迎えて観客と作り上げた幸せな空間

 アンコールのラストに佐々木舞香が「幸せな空間」と表現したように、10月19日にさいたまスーパーアリーナで開催された『=LOVE 6th ANNIVERSARY PREMIUM CONCERT』は会場いっぱいに幸福感が満ちていた。

 7月30日に行われた『イコノイジョイ 2023』にて発表された今回の『=LOVE 6th ANNIVERSARY PREMIUM CONCERT』。グループ史上最大規模の会場でのライブ2DAYS開催に向けて、『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)への出演やライブフィルム映画『=LOVE Today is your Trigger THE MOVIE』の公開など、さらなるファン層を取り込みながら、=LOVEはさいたまスーパーアリーナへと辿り着いた。

 今回のコンサートの大きな特徴として、2日目のセットリストの全27曲中13曲という半分近くをオーケストラ、またはバンドが生演奏していたことだ。オーケストラには、90年の歴史と実績を持つ東京室内管弦楽団が参加。指揮者が指揮棒を振ると優美なストリングスの音色が響き、髙松瞳のソロパートでの「=LOVE」からコンサートは幕を開ける。大会場でのコンサートでオーケストラが登場する、というのはアイドルのコンサートでは決して珍しいことではない。ただ、=LOVEの場合はオーケストラに頼るのではなく、しっかりとそのオーケストラを迎えるに見合ったパフォーマンスを披露していたように思う。

 「=LOVE」に続くのは、近づく冬の気配を演出する「僕らの制服クリスマス」「The 5th」の2曲。「僕らの制服クリスマス」では、諸橋沙夏の落ちサビからの伸びやかなフェイク、野口衣織のコーラスがボーカル全体を支えている。中盤に再びオーケストラと披露したのは「祝祭」「あの子コンプレックス」。前者はパーティーの前の高揚した雰囲気をイメージさせるホーンの音色、後者は楽曲の切なさを引き立たせる弦楽器とそれぞれが対照的だ。「祝祭」での野口のまるで獲物を仕留めるかのような表情、「あの子コンプレックス」の佐々木の今にも押し潰されてしまいそうだけれど、その奥に強さの見える歌声も印象的だ。

 「Junkies」から始まり、本編ラスト「青春”サブリミナル”」までの8曲はバックバンドを招いてのステージとなった。今年6月に開催された≠MEの日本武道館公演でも憧れのパフォーマンスとして継承されているように、=LOVEでは「=LOVE 5th ANNIVERSARY PREMIUM CONCERT」でもバンドメンバーを迎えてのステージであり、周年コンサートとしては徐々に恒例になりつつもある。だからこそ、回を増すごとのバンドとの一体感、グルーヴも感じられ、なかでも「ヒロインズ」は象徴的だったように思える。リズムの速い、変拍子の、さらには組曲的な楽曲構成であるこの曲は、=LOVEの中でも屈指の難曲と言えよう。初披露となった『イコノイジョイ 2023』では、その楽曲自体の難しさが少しばかり顔を覗かせていたが、今回のコンサートではそれからの3カ月での成長を感じさせるパフォーマンスだった。バンドメンバーの紹介から流れるように自己紹介ソングである「ヒロインズ」へ。ほとんどのメンバーがパートのラストにある決めフレーズを大胆にアレンジしていくなか、大トリである大谷映美里は何も発さず、無言のキス顔で会場を一気に掌握してみせる。そこまでほか9人がガンガンに盛り上げていった上での緩急。引き算の美学だ。会場やその公演毎に変化していけるのが「ヒロインズ」、そして=LOVEであることを証明していたパフォーマンスだったように感じる。

 振り返れば昨年の『=LOVE 5th ANNIVERSARY PREMIUM CONCERT』ではまだ声を出すことはできなかった。すでにライブシーンではコロナ禍以前の風景へと徐々に戻りつつあり、今回本編ラストに披露された「探せ ダイヤモンドリリー」「青春”サブリミナル”」の2曲ではメンバーの呼びかけによりファンのコール、クラップ、合唱が起こった。特に多くのライブで歌ってきた“君と私の歌”とも言える=LOVEの人気曲「青春”サブリミナル”」を“大きいステージ”で歌うことは、グループにとって意義のあることである。そのことを理解してか、2日目はさらに歌声が大きくなっていたことは、冒頭での「幸せな空間」を形作っている大きな要素の一つだ。

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