マイキ×VoiSona開発者が語る、「MYK-IV」制作秘話と音声創作ソフトウェアの課題
株式会社テクノスピーチが提供する音声創作ソフトウェア「VoiSona」より、シンガーソングライター/ボカロP マイキとコラボしたボイスライブラリ「MYK-IV」がリリースされた。
「VoiSona」では、これまでにゴールデンボンバー 鬼龍院翔の「機流音」、SILENT SIREN すぅの「AiSuu」など、アーティストの声をもとにしたボイスライブラリをリリースしており、様々なクリエイターやリスナーから好評を博してきた。
人工知能を活用した生成AIは、ChatGPTをはじめ、イラストや音楽制作などの分野で話題を集めているが、クリエイターとの共存というテーマにおいて常に熱い議論が交わされている。リアルサウンドでは、株式会社テクノスピーチの代表取締役 大浦圭一郎とマイキの対談を企画。「MYK-IV」の制作エピソードとともに、これからのアーティスト・クリエイター・人工知能の在り方について語ってもらった。(編集部)
「VoiSona」は車で言うところの“オートマ”(マイキ)
ーーテクノスピーチさんが開発した音声創作ソフトウェア「VoiSona」の提供開始から丸1年が経ちました。現状での認知度や評価の手応えはいかがですか?
大浦圭一郎(以下、大浦):弊社として初めてのBtoCブランドなので、その開発やリリースにあたっては正直、かなり不安なところがあったんです。ですが、いざ提供を開始してみれば予想をはるかに上回るクリエイターさんにご登録いただき、非常に嬉しい悲鳴を上げている状況で。ボイスライブラリのいくつかは、楽曲投稿イベントなどでランキングに入るくらい使っていただけてもいるので、手応えは強く感じていますね。
ーー「VoiSona」として掲げている“AIと人間の共存、共栄”といった部分に関してはいかがですか?
大浦:リスナーさんがボイスライブラリのキャラクターや楽曲を気に入ってくれたとき、その中の人である音声提供者、アーティストにも興味をもってもらえるとより良いと思っています。「VoiSona」に関しては、微力ではありますが、キャラを通じてアーティストさんの知名度に貢献できているのではないかなと感じていますね。
ーー7月13日には新たなボイスライブラリとして、マイキさんの声を用いた「MYK-IV」がリリースされました。マイキさんはオファーを受けたときどんな思いを抱きましたか?
マイキ:僕は元々、ドラマーとして活動していたんですけど、この「MYK-IV」のお話をいただいたときが、ちょうど歌を本格的に始めようと思っていたタイミングだったんですよ。自分の歌声をもっと広めていきたい、何かおもしろいことをやっていきたいと強く思っていた時期だったので、テクノスピーチさんからの依頼に関しては、「やりたいです!」ってすぐ返事をさせてもらいました。
大浦:お引き受けいただけて、ありがたかったです。お声がけした理由はいろいろあるのですが、「VoiSona」ブランドのバランス的にアンニュイめのイケボが欲しかったっていうのがひとつの大きな理由だったんですよ。
マイキ:あははは。
大浦:もちろん男性ボイスであっても、しっかり人気のある方でないとビジネス的に回っていかないので、そういった点でもマイキさんはバッチリでした。もうひとつ、ご本人がボカロPとしてご活躍されているっていうのもよかったんですよね。すべてのピースがガチッと噛み合った感じでした。
マイキ:確かに僕の知っている限り、ボカロPが合成音声ソフトの音声提供者になるっていうのは聞いたことがなかった。その新しさもお引き受けした大きな理由だったかもしれないです。
ーーマイキさんはオファーを受ける前、「VoiSona」にはどんなイメージを持っていましたか?
マイキ:依頼いただく前に、実際にソフトを触ったこともあったんですよ。そのときに感じたのは、「とんでもないクオリティのソフトが出てきたな」っていうことで(笑)。
大浦:恐縮です(笑)。
マイキ:僕は他の音声合成ソフトも使いますけど、「VoiSona」は車で言うところの“オートマ”的な感じがするんですよ。初心者であってもすぐ使いこなせて、しかも超ハイクオリティなものができてしまうというか。もちろん深く追求しようと思えば、コアな表現もできるし。そこがすごいなと。
大浦:まさにその部分は我々が目指していたところでもあって。もちろん、歌を楽器のように扱い、音符を置きながら微調整をしていくような設計思想でも良いと思いますが、弊社の場合は、バーチャルシンガーさんに五線譜を渡し、ご本人感を出しながら自由に、好きなように歌ってください、みたいな設計思想なんですよね。そこがひとつ使いやすさになっている部分だと思います。
マイキ:今、“ご本人感”って出ましたけど、「VoiSona」の場合、声質はもちろん、歌い方までパッと再現されてしまうのが本当にすごくて。その上で、自分なりの調教もしっかりできるっていう。そこが本当に使いやすい。
大浦:「MYK-IV」に関して言えば、マイキさんの歌い終わりのニュアンス……言葉で伝えるのは難しいんですけど(笑)。
マイキ:ありますよね、僕のクセというか、息成分というか(笑)。
大浦:そこの再現性にはかなりこだわったので、私としてもすごく気に入っているところなんです。一聴して、「あ、マイキさんだ」とわかる感じ。
マイキ:うん。まさに“マイキ感”が出てますよね(笑)。