星街すいせい、野外ロックフェス出演は偉大な一歩 VTuberの裾野を広げる開拓者としての姿
VTuberは、その名の通りYouTubeをメインの活動場所に置いた、バーチャルタレントだ。
アバターを用いて活動するため、配信環境が整っている自身のYouTubeチャンネルやVTuberをメインとしたイベント/ライブなどへの出演がメインにはなるが、近年は徐々にそういった枠組みから飛び出して活動するVTuberも見てとれる。
2023年9月30日・10月1日に熊本県・野外劇場アスペクタにて開催された野外ロックフェス『ASO ROCK FESTIVAL FIRE 2023』に出演した星街すいせいはその筆頭だろう。
VTuberをはじめとしたバーチャルな存在が、不特定多数のアーティストが参加する音楽フェスに登場したり、リアルなバンドやアイドルなどと共演するタイミングは非常に少ない。ピーナッツくんのように着ぐるみ姿で活動するのは特例として、2019年の『SUMMER SONIC』にキズナアイが出演したことはあったが、野外のロックフェスにVTuberが出演するのは異例のことと言えるだろう。
星街すいせいは同フェスの初日9月30日に出演。熊本出身のロックバンド BLUE ENCOUNTがトップバッターを務め、スチャダラパー、天月-あまつき- 、小泉今日子などの世代・ジャンルを飛び越えたトップアーティストが集結したこの日、星街はトリを任された。
初出演の音楽フェスにおいて、自身よりも認知度や活動歴のあるアーティストが何組もいるなかでトリを任されたことは、「いまの星街すいせい」の立ち位置や期待度がいかほどのものかを知らしめることになった。
ステージの模様は有料配信でも見ることができた。そこで星街は「みちづれ」「灼熱にて純情 (wii-wii-woo)」などを披露し、オーディエンスによる合唱やコール&レスポンスなどが繰り広げられ、会場を大いに沸かしていた。星街を一目見ようと駆けつけたファンの勢いはすごかったが、「3時12分」「Stellar Stellar」といった星や夜空を想起させる楽曲においては、夜のフェス会場というシチュエーションも相まって多くの観客を星街すいせいの楽曲の世界へと誘っていたように見えた。
星街すいせいは2018年3月に自身のYouTubeチャンネルにて動画を初めて投稿し、活動をスタートさせた。当初は個人での活動を続けるいわゆる"個人勢"であったが、2019年5月にホロライブ内に新設されたイノナカミュージックに所属し、配信活動と音楽活動を両立していった。
2020年3月22日に配信されたデビュー2周年記念ソング「NEXT COLOR PLANET」、2021年9月29日には1stアルバム『Still Still Stellar』をリリースするなど、コロナ禍にあっても徐々に注目を集めていく。
2023年1月には2ndアルバム『Specter』をリリース。前作リリースからの1年半のあいだに人気トラックメイカー・TAKU INOUEとの2人組ユニット・Midnight Grand Orchestra(略称:ミドグラ)としての活動に加え、ラジオパーソナリティとして番組をもち、そしてYouTubeでのライブ配信を継続。VTuberとしての人気はもちろんだが、アーティストとしての活動も高く評価されるようになってきた。
そのアーティスト活動が一つ結実したのが、音楽YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』への出演だろう。
VTuberが同チャンネルに出演するのは初めてのこと。2023年1月に「星街すいせい - Stellar Stellar / THE FIRST TAKE」がプレミア公開された際は、同チャンネル歴代トップとなる同時視聴数16万人を記録。国内・海外ファンを魅了するほどのパフォーマンスと歌声で大きく知名度を広めることになった。
また、2023年7月に放送された大型音楽特番『THE MUSIC DAY 2023』にも出演。歌唱前に本人も「私みたいなアーティストを初めて見る人も多いと思うんですが」と語っていたが、普段接点のない視聴者層にバーチャルアーティストという存在、ポテンシャルの高さを見せつける結果となった。
また、同月には『バズリズム02』による初のバーチャルライブ『バズリズム LIVE V 2023』が行われ、そこで星街はフジファブリックと共演。バーチャルアーティストとメジャーなリアルバンドが共演したという実績は、星街の後に続くであろうバーチャルシーンの後輩たちにとっても希望となったのではないか。