DEAN FUJIOKA、初の日本武道館公演レポ 音楽活動の原点と10年間の歩み、そして新たな物語へ

 9月23日、DEAN FUJIOKAにとって自身初となる日本武道館公演『DEAN FUJIOKA Live 2023 “Stars of the Lid” at 日本武道館』が開催された。俳優 / モデル / 映画プロデューサーなど、多彩な活躍を見せるDEANであるが、彼の原点はミュージシャンとしての活動であり、今年は日本での音楽活動開始10周年イヤーにあたる。DEANは、その記念として7月に初のベストアルバム『Stars of the Lid』をリリースしており、今回はそれに続く形で同じタイトルを冠した日本武道館公演が実現した運びとなる。本稿では、歴代の代表曲が次々と披露されたメモリアルな一夜の模様を振り返っていく。

 オープニングナンバーは、ベストアルバムの1曲目を飾る「Final Currency」だ。気品とスリリングさを感じさせるバイオリンの音色に鋭いラップが重なっていく序盤を経て、サビにかけて重厚なバンドサウンドが立ち上がり、瞬く間に壮大にして深淵な世界が武道館に広がっていく。続く「Apple」では、会場全体が観客の持つペンライトにより赤く染まり、ライブだからこその一体感が武道館を包み込んでいく。何より、パワフルなラップ調のパートと艶やかで流麗な歌唱パート、その鮮やかなコントラストが圧巻で、DEANが誇る歌声の多彩さに改めて惹かれる。「Searching For The Ghost」では、前の2曲の流れを受けてさらなるダークな世界を追求し、「Plan B」では花道を歩きアリーナ中央のステージへ移動した上で、ゆっくりと四方を見渡して右手で力強くマイクを掲げる。大きな拍手が鳴り止まない中、彼は「武道館のみんな、今日は来てくれてありがとう」「最後まで楽しんでいこうぜ!」と叫び、そのまま「Spin The Planet」へ。DEANは何度もマイクを観客に託し、そして観客はばっちりとコール&レスポンスに応えていく。またサビでは、DEANの手の動きに合わせて手に持つペンライトをスピンさせ、会場に集まった全員で一緒にライブならではの一体感を作り上げていく。まだ5曲目にもかかわらず、まるでクライマックスのような熱気だった。

 「今ここにいることを選んでくれたみんな、ここから新しい物語を一緒に歩んでいこう」「今日が始まりの日」ーーそのDEANの言葉は、今回のライブは、これまでの10年間の総括である以上に、新章開幕を告げるものであることを物語っていた。そして、観客に何度も丁寧に感謝の言葉を届けた後、ここからノンストップで7曲のナンバーが披露されていく。「Runaway」では、ステージの上手・下手へ移動しながら「Make some noise!」と観客を力強く煽り、ラストのサビ前のブレイクでは「共に行こう、この先の未来へ!」と改めて固い決意の言葉を轟かせる。「生きていることを楽しんでいきましょう」という一言を添えて披露した「Teleportation」では、会場全体にカラフルなポップフィーリングをふりまき、一転して「One Last Sweet Talk」では、曲名の通りスウィートな歌声を響かせていく。また「Shelly」は、アコースティックギターとバイオリンの音色がグッと前面に出る今回のライブならではのアレンジが施されていて、その美しい響きと相まって彼の歌声が音源以上に深く心に沁み入る。ラストにおける超ロングトーン&フェイクも圧巻だった。

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