「可愛くてごめん」バズの理由を続編「すきっちゅーの!」から導く ヒントはZ世代の悩み&“ちゅーたん”の生き方にある?

 楽曲の元となる物語での推し活の対象こそ日本の男性アイドルであるものの、K-POPアーティストや俳優、マンガ、アニメなどの二次元キャラにVTuberなど、推す対象は変われど、その手法は今や普遍的な消費行動のひとつとなった。日常的にSNSを駆使する若年層にとって非常に身近な価値観。解像度高くリアリティある表現で描かれた情景への共感が、本作のバズに繋がった理由のひとつなのかもしれない。

 重ねて、ちゅーたんという人物像に対する憧れや、楽曲がまとうポジティブなムードもおそらくその一因となる。Z世代の意識調査(※2)では、上記要素と同時に、この世代が共通して持つ自己肯定感の低さもたびたび話題に上がる。そこから見えるのは、“推し活”や“自分磨き”に精を出す一方で、その行動を他者から否定されることに怯えるZ世代像、という仮定だろうか。

 そんな世代にとって本曲で描かれるちゅーたんの人物像は、自己への揺るぎない自信と信念を持つ、理想の女の子として映る側面もあるのだろう。人の目を一切気にせず、彼女のように推し活を楽しみたい。胸を張って推しを推していると公言したい。彼女のように生き生きと自分磨きに、自己研鑽に励みたい。楽曲を通して、その人物像を疑似的に纏った気持ちになれる。あるいは他者に開示しづらい自分の一面を、この歌が肯定してくれる気分になる。そんな心情もまた、大勢がこの曲を用いてSNSで自己表現を行う理由となるのだろう。
 
 余談だが、同プロジェクト内には他にもfeat.ちゅーたん名義の楽曲が存在する。「推し★ごと」「同担☆拒否」がそれに当たるが、前者は“推し活”のなかでもかなり限定的な描写で、後者は他者に対する攻撃的描写が楽曲内に散見される。そもそものメッセージ性が「可愛くてごめん」「すきっちゅーの!」に比べるとミクロな視点で歌われ、大衆的でない点も、この人気の差の原因に違いない。

 本来のコンテンツストーリーではいわば“嫌われ者”だったちゅーたん。しかし、彼女の持つ一側面が現代の若年層の価値観と大いに合致したことで、彼女は一躍今を生きる若者、特に女性にとって理想的で憧れの女の子となった。

 『告白実行委員会』シリーズとしては異例のキャラ単独ピックアップコラボの他、彼女を主人公としたコミカライズ制作も決定している。圧倒的な前向きさと好きなものに対する熱量を歌う本曲は、これからも大勢の背中を押し続けるのだろう。

※1:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000167.000033586.html/https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000090.000058653.html/https://www.n-info.co.jp/report/0036
※2:https://bae.dentsu-pmp.co.jp/articles/gen-z-2021/https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0012-imadoki.html/https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00569/00002/

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