LE SSERAFIMが手に入れた自分たちだけの“自由” 快楽と陶酔が舞う2度目のワールドツアー『PUREFLOW』で見せる強かさ

LE SSERAFIM、快楽と陶酔の世界ツアーレポ

 足がガクガクになるまで無心で踊ってしまう、そんなライブを観たのなんていつぶりだろう。気がついたら音にただ身を委ねて体が勝手に動いてしまう。LE SSERAFIMのライブを観た、というよりも、非日常な空間で踊り続けたという感じ。ライブが終わったあとの疲労感は、パーティーでひたすら踊っているうちに朝になった時のあの感覚にかなり近かった。

LE SSERAFIM (P)&(C) SOURCE MUSIC

 筆者が足を運んだのは、最新スタジオアルバム『'PUREFLOW' pt.1』に合わせたワールドツアー『2026 LE SSERAFIM TOUR 'PUREFLOW'』のKアリーナ横浜公演2日目。「CELEBRATION」のMVに登場するクリーチャーがステージに現れ開演を知らせるというサプライズののち、18時ぴったり、赤と黒の煌びやかな衣装を纏ったLE SSERAFIMがステージ中央に登場した。

 歓声が上がると同時に始まったのは、「CELEBRATION」。LE SSERAFIMは、メロディックテクノの波にするする乗りながら、時に挑発的に、時にキュートに、時に妖艶に、私たちを彼女たちの世界へと誘惑する。それに導かれるかのごとく、「KIM CHAEWON!」「SAKURA!」とメンバーの名前を叫ぶ観客たち。会場の熱気は一気に上がる。そんな観客の熱量とエネルギッシュな楽曲にしばらく圧倒されていると、だんだん違和感に気づき始めた。

KIM CHAEWON (P)&(C) SOURCE MUSIC
KIM CHAEWON

 ドウンドウンドウンドウン……。彼女たちの背後から響く地を揺らす重低音。その音だけが異様に生々しいのだ。遠くで鳴るその音がこちらに届くたび、体を射貫いてくるのがわかる。その後も「Creatures」「Eve, Psyche & the Bluebeard’s wife」と矢継ぎ早につながれていくダンスナンバーのなかで、そのビートは延々鳴り響く。次第にその音が頭から離れなくなり、律動の反復に酔いしれていくと、「バンッ!」と音が鳴ってキラキラとコンフェッティが舞い上がった。そして、会場には「Pureflow」のあの一節が響く。〈ありがとう/私と手をつないで落ちてくれて〉。まるで彼女たちの世界へ入り込んだ私たちを歓迎するかのような演出だった。

SAKURA (P)&(C) SOURCE MUSIC
SAKURA

 『'PUREFLOW' pt.1』は、グループの第2章(=“FEARLESS 2.0”)を掲げている。恐れない強さを表現してきた彼女たちが、今は恐れを知っているからこそ強くなった。独自の道を歩む覚悟を歌った1stスタジオアルバム『UNFORGIVEN』以降、不安や悩みを吐露したり(「EASY」)、何かに夢中になる喜びを表現したり(「CRAZY」)、愛について思考を巡らせたり(「HOT」)と多面的に自己を見つめ直した。その末に行き着いたのが、自身のなかにある恐怖心を見つめ直すことだったのだろう。だからか、本作には打ち勝つような強さというより、ポジティビティを手放さない余裕や強かさがある。

HUH YUNJIN (P)&(C) SOURCE MUSIC
HUH YUNJIN

 そんなアルバムのツアーとなれば、メッセージ性を強調したステージになるものかと予想してしまっていたが、彼女たちはそう一筋縄ではいかない。攻撃性や感傷的なムードを極力抑えて、恐怖なんて気にしないといった具合に陽気に踊り続けている。もはや延々続くこの恍惚感は、私たちに踊ることの喜びを訴えかけているようですらある。それは単に目の前の快楽を優先しているのとは違う、自分たちだけの自由を高らかに宣言するような力強い幸福に満ちていた。

KAZUHA (P)&(C) SOURCE MUSIC
KAZUHA

 クライマックスは「BOOMPALA」〜「SPAGHETTI」が披露された後半。目まぐるしく切り替わる音の熱気に合わせて、スクリーンもまたさまざまな国や場所へと移り変わっていく。私たちはあらゆる雑多な路上でスピーカーを置きひたすら踊り続け、メンバーもまた時折ダンサーたちと混ざり合ってフリースタイルで体を揺らす。一糸乱れぬ振り付けをモノにしている姿とは対照的に、私たちと同じようにただ音に身を委ねている場面はまた何か特別なものがある。ステージと客席という境がなくなっていく感覚。音と体が溶け合いひとつとなったような快楽と陶酔。だんだん力が抜けて解放感に支配され何も考えられなくなる、そんな瞬間がここにはあった。

HONG EUNCHAE (P)&(C) SOURCE MUSIC
HONG EUNCHAE

 LE SSERAFIMには桁違いの美貌と才能のあるメンバーが揃っている。KIM CHAEWONは小悪魔的で、SAKURAには可憐さと強かさがあり、HUH YUNJINには憂いが常にチラつく。KAZUHAにはヘルシーな色気があり、HONG EUNCHAEは天真爛漫な親しみやすさがある。それぞれ「自分の魅力はこれだ」とはっきり提示しているにもかかわらず、それでも最終的に主役はここにいる全員――いや、もはや“人々”だと感じさせるステージであることに驚く。

 彼女たちのサービス精神旺盛なMCタイム――M!LKの「好きすぎて滅!」を披露(!)する場面や観客にハーモニー(?)を歌わせる場面など――がやってくるたび、その微笑ましいやりとりに、「そうだ、LE SSERAFIMのライブを観にきていたんだった」とハッとさせられるのだが、曲が始まればまた再び一体となり、その空気に酔いしれ、踊るためにここにきたのだと思わせられる。〈ありがとう/私と手をつないで落ちてくれて〉という言葉通り、LE SSERAFIMとともに何かへ落ちていくようなそんな公演だった。

LE SSERAFIM (P)&(C) SOURCE MUSIC

 しかし、それもまた「恐れを知って強くなった」という今のLE SSERAFIMだからこそ、選べる表現なのかもしれない。踊らせることに重きを置いたライブは、歌詞以上の強い主張を体感することができる。一方で、ある種の攻撃性を持った表現でしか伝えられない切実さもあり、それが第1章時代の“恐れ知らず”なLE SSERAFIMだったのではないかとも、今となっては思う。

 アンコールでは1stミニアルバムのタイトル曲「FEARLESS」も披露された。どこか強くあろうとする反骨の意識が滲んでいたこの曲が、今ではもっと自然に聴こえてくる。「私の傷も私の一部なら怖いものはない」(〈내 흠집도 나의 일부라면 겁이 없지〉)という言葉が本当の意味で確信になっているのかもしれない。そんなことを想像して、これからさらに変化していくであろう彼女たちの姿をもっと見たいと思った。

LE SSERAFIM (P)&(C) SOURCE MUSIC

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