スガ シカオは“破格”の存在であるーー30年の軌跡、The Family Sugarとともに鳴らした極上の横浜BUNTAI公演

スガ シカオ、30周年記念BUNTAIライブレポ

 7月25日、スガ シカオのデビュー30周年イヤーの幕開けを飾るワンマンライブ『YOKOHAMA UNITE音楽祭 2026 presents スガ シカオ 30th ANNIVERSARY Shikao & The Family Sugar ONE NIGHT LIVE!』が神奈川・横浜BUNTAIにて開催された。本公演は昨年ファンから大きな反響を得た、レジェンドバンド・The Family Sugar(以下、ファミシュガ)との共演による一夜限りのアンコールライブだ。

 スガのキャリア初期の10年間を共に歩み、彼の思い描く独自のファンク/ソウル像を具現化してきたファミシュガとのプレミアムなステージに詰めかけたオーディエンスは、およそ5000人。本稿では当日の模様をレポートする。

初期名曲群の熱狂、炸裂するファミシュガの超絶技巧

 開演前、スガが敬愛するプリンスのダンサブルなミックスが流れる客席には、“Sugamania”のロゴ入りTシャツや過去のツアーグッズを身に着けた多くの観客の姿が確認できる。定刻を迎えると、沼澤尚(Dr)、森俊之(Key)、間宮工(Gt)、大滝裕子(Cho)、斉藤久美(Cho)とスガがステージに登場。バンドが繰り出したのは「かわりになってよ」。2000年リリースの4thアルバム『4Flusher』の冒頭を飾ったディープでマニアックなナンバーを、しかもアルバムと同様に2曲目の「性的敗北」へとシームレスに展開。往年のSugamaniaには堪らない予想外の初手に、客席は冒頭からヒートアップする。

『スガ シカオ 30th ANNIVERSARY Shikao & The Family Sugar ONE NIGHT LIVE!』(撮影=ヨシモリユウナ)

 「今日は30周年の記念ライブ。キャリア初期の名曲ばかりを集めて皆さんにお届けするつもりです」とスガが挨拶。7月15日にリリースされたばかりのアルバム『BEST SESSIONS!』の「全曲完全再現」を宣言し、病気療養中のオリジナルメンバー・坂本竜太(Ba)の代役としてシンセベースでサポート参加のGakushiを紹介。「初期の曲が全部生まれ変わった」という言葉通り、「ドキドキしちゃう」(1997年)、「アシンメトリー」(2002年)、「正義の味方」(1999年)と同作の収録曲で畳み掛けていく。

 ファミシュガの演奏は、“完全再現”どころか、アルバムで聴ける濃厚にして緻密なプレイをさらなるアゲアゲ状態で横浜BUNTAIという大バコに放つという暴れっぷり。「アシンメトリー」の歌い出しでは、斉藤と大滝のハモリの見事さに、「もう一回いい? 気持ちいい~!」と歌い出しをおかわりしたり、「正義の味方」のアウトロでは、あまりの野放図なグルーヴに沼澤の方を向いて、「ファンキーすぎだよ、アメリカでやってくれよ」と苦笑するなど、スガの微笑ましい様子も随所で見られた。

 「さすがファミシュガ。歌が振り落とされないように、付いていくのに必死」とスガが嬉そうな笑顔を見せる。「ロックが全盛の日本の一番片隅のほうで、ソウルとかファンクを一生懸命やってきた30年間でした」と振り返り、「どうしても今回のアルバムに入れたかった」という「ホームにて」(2006年)から映画『仄暗い水の底から』の主題歌「青空」(2002年)、スクリーンに映し出された初期のライブ映像を背に「黄金の月」(1997年)とドラマチックに繋げていく。さらに東京の雑踏と縦書きの歌詞映像をバックに、二度目のメジャーデビューを飾ったシングル「アストライド」(2014年)をエモーショナルに歌い上げると、「日曜日の午後」(1998年)ではファミシュガの面々がスリリングかつテクニカルなプレイの応酬を聴かせる。一曲ごとに、オーディエンスから温かい拍手や激しい手拍子、声援が送られる。幸福感と祝祭感に満ちた時間が続いていく。

『スガ シカオ 30th ANNIVERSARY Shikao & The Family Sugar ONE NIGHT LIVE!』(撮影=ヨシモリユウナ)

 あまりに濃厚なファミシュガの演奏に、「歌より演奏が長い。どういう気分なの?」とスガがメンバーにツッコミを入れ、森やGakushiをイジってのトークで笑いを誘う。本編は一層ディープな「あまい果実」(1999年)、「イジメテミタイ」(1997年)で中盤に突入し、スガがステップを踏んでステージを練り歩く。さらに、ハードにギラつくファミシュガ版「19才」(2006年)から、コーラスワークも各メンバーのフィルも冴えに冴えわたる「ストーリー」(1998年)、イントロのギターが1998年のSMAPバージョンを想起させる「夜空ノムコウ」(2001年セルフカバー)と強力なナンバーを連発。「夜空ノムコウ」では、スクリーンに昔のスガのスナップが映し出された。それはまだ何者でもなかった青年が“アーティスト・スガ シカオ”になっていくプロセスを描いたフォトダイアリーのようだった。

 ここでスガがファミシュガの面々をサッカーチームになぞらえてメンバー紹介。チームの精神的支柱として最後尾を守り、点取りにも走る攻撃的ゴールキーパー・沼澤。作戦を立て、攻撃の起点を作る左ミッドフィールダー・森と、スガの別名義バンド“ファンクザウルス”にも参加している右ミッドフィールダー・Gakushi。スリーバックのディフェンス陣として圧巻の歌唱力でアンサンブルを支えるコーラス・斉藤と大滝に、無口ながら底知れぬ存在感を放つギター・間宮。愛あるイジりやエピソードトークから、スガがメンバーに寄せる信頼と互いの絆が伝わってくる。

 ところによりゲリラ豪雨に襲われたこの日の横浜。「雨の日はこの曲を思い出す。僕が若い頃、海にドライブに行って、夕立ちにあった時の話です」と前置いて歌われた「夕立ち」(1999年)では、海岸線をとらえたイメージ映像をバックに繊細な情感をソウルフルに歌い上げた。

 終盤は怒涛のダンスチューンタイムに突入。「Soul Music」(2024年)では、(自称)男女でパートを分けてオーディエンスとのクラップセッションに興じ、「午後のパレード」(2006年)では、長年この曲の名物になっているお馴染みの振り付けを揃ってハツラツと踊るオーディエンスの姿を見て、「最高だぜ、みんな!」、「ヤバい、すごすぎる!」と感動ひとしおのスガ。ラストは最高潮までアガりにアガったボルテージで「コノユビトマレ」(2008年)を演奏して本編の幕が閉じた。

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