Coldplay、ビリー・ジョエル、Queen + Adam Lambert、テイラー・スウィフト……ライブでのユニークな取り組みを来日前に復習
海外アーティストの来日ラッシュが止まらない。もはや1年以上に渡って「このアーティストも来るの!?」と驚き続けているような気がするが、その勢いはまだまだ落ち着く気配もなく、連日のように発表される新たな公演に嬉しい悲鳴が止まらないという状況だ。
今回は、そんなライブがより楽しみになるよう、もうすぐ来日を迎えるアーティストたちのツアーや最近のライブにおけるユニークな取り組みや記録について紹介していきたい。
Coldplay : 持続可能性やアクセシビリティを追求したワールドツアー
最新作『Music Of The Spheres』を携えて11月6日、7日に東京ドームにて約6年ぶりとなる来日公演を開催するColdplay。同バンドのワールドツアーといえば世界屈指の規模を誇る壮大な演出で知られており、作品だけではなくそのライブもまたポップカルチャーに大きな影響力を持つことで知られている(今では日本国内のコンサートでもよく見かけるLEDリストバンドは大規模公演では2012年に同バンドが初めて導入したものだ)。だからこそ、彼らが今回のツアーを(演出のクオリティは保った上で)「可能な限り持続可能なもの」として実現することに決めたのは当然の結論だと言えるだろう。様々な専門家や企業とともに作り上げられた今回のツアーは、ライブ演出における再生可能エネルギーの活用に加え、移動に用いる燃料や観客に配布されるLEDリストバンドの素材に至るまで「持続可能性」を考慮したものとなっており、2023年6月時点で前回のツアー(2016~17年)と比較して二酸化炭素排出量が約47%減少したという明確な成果を残している(※1、2)。
また、同ツアーではすべての人々がライブを楽しめるように、様々なアクセシビリティの取り組みが導入されている。全ての公演には現地の手話通訳者が参加し、聴覚が不自由な人々のために振動によって音楽を伝えるデバイス(SubPac)を、感覚過敏に悩む人々のためにノイズキャンセリングヘッドホンやサングラス、コミュニケーションカードといったグッズをまとめたバッグを配布している。そして、視覚が不自由な人々のために、ライブが始まる前に、ステージ衣装や楽器、演出で使われる紙吹雪などに実際に触れることができるタッチツアーも用意されている(※3)。タッチツアーのような取り組みは従来では舞台などで行われていたが、それを音楽ライブにも取り入れているというわけだ。まさに世界を代表するバンドとしての「あるべき姿」を、今のColdplayは示しているのである。
ビリー・ジョエル : マディソン・スクエア・ガーデンでのレジデンシー公演
2024年1月24日、東京ドームでなんと約16年ぶりの来日公演を果たすビリー・ジョエル。そんなビリーは、2014年1月からアメリカ・ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンにて毎月1回のレジデンシー公演(定期公演)を開催中だ。約2万人の収容人数を誇る同会場だが、それ以上にジョン・レノンやエルヴィス・プレスリーといった偉大なミュージシャンが公演を開催してきた歴史的なコンサート会場であると紹介した方が正しいだろう。開始から9年を迎えた今でもチケットが売り切れ続けているこのレジデンシー公演は、ビリーのポップカルチャーにおける重要性と普遍的な人気を改めて示すと同時に、今なお衰えることなく第一線のパフォーマーとして君臨していることを証明している(ちなみに同公演では(値段の高騰を見越して)最前列のチケットをあえて売らず、当日、最後方の席のファンにプレゼントするというファン想いの粋な試みも行われている)。今回の来日はまさに円熟の極みへと到達したビリーのパフォーマンスを目撃する極めて貴重な機会と断言していいだろう。また、このレジデンシー公演は生涯通算150回目を迎える2024年の7月での終了を予定しており、もしかしたらビリー自身、そのキャリアに一区切りをつけようとしているのかもしれない。