The Beatles、テイラー・スウィフト……洋楽作品がアルバムチャート好調 異なる視点で現代的な2作のあり方

参照:https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2022-11-07/

 ポストBTSとの呼び声も高い韓国ボーイズグループ ENHYPEN、日本1stアルバム『定め』が売上枚数23.2万枚で首位に輝いた今週のチャート。20万台突破は、グループのさらなる飛躍を感じさせるニュースでした。

 韓国デビューはコロナ禍真っ只中の2020年。現場での交流が難しい中、オーディション番組で生々しいバトルを発信し続け、いつ終わるとも知れない「おうち時間」をジャックするようにファンを虜にしていったENHYPEN。共同生活の様子やプライベートな素顔まで見せることでコンサート以上の親近感を与えていくのだから、アイドル育成リアリティ番組とは、こと2020年〜2021年に限っては最も強いコンテンツだったかもしれません。今になってその効力をじわじわと感じています。

 さて、今週取り上げるのは別の2作品。初登場5位のThe Beatles『リボルバー(スペシャル・エディション)』(約1.4万枚)、初登場7位のテイラー・スウィフト『ミッドナイツ』(約8千枚)です。K-POP以外の洋楽が10位圏内に複数登場するのも近年では珍しくなりました。

 まずはThe Beatlesのスペシャル・エディション。彼らのデビューは1962年10月であり、数年に一回の頻度で「特別記念」を銘打った再発企画が登場しています。今回のお題は1966年発表の『リボルバー』。貴重なセッションの未発表音源、最新技術を駆使したドルビー・アトモス・ミックスなど話題はあるものの、反応は世代と思い入れによって大きく異なるはず。誰もが飛びつくシーンのホットスポットとか、ロック界の台風の目だとか、そういう時流で語れる作品ではありません。

 では、なぜこの手のスペシャル・エディション盤は途絶えることがないのか。CDパッケージを必要としないアーティストが増え、サブスクの普及と共にベスト盤の需要も減った時代、名盤の最新リマスターだけは一定の需要で支えられている不思議。これはおそらく、音響技師たちが探りたい最新の機材と、聴き手が若い頃にできなかった音楽体験を、それぞれ確認するためのコンテンツとして存在するのだと思われます。極論を言うと、対象が『リボルバー』である必要はなくて、ただ、The Beatlesくらい広く聴かれてきた過去の名盤を、現代の技術でどう再解釈できるか。そこが焦点なのでしょう。でなければ、どうして秋のThe Beatles再発が何十年も継続可能なのか、説明がつかないのです。

The Beatles - I'm Only Sleeping

 1960年代にアナログレコーディングされたマスターテープは、最新の技術によって相当なレベルまで解像度を高めることができ、誰も気づかなかった新解釈を掘り起こすことが可能に。同時に聴き手の環境も単一ではなくなり、自慢のレコードプレイヤーで鳴らしたい人と、ハイレゾ音源を小型ワイヤレスイヤフォンで楽しみたい人がいれば、それぞれ理想の音は変わってきます。そういう細かいニーズに応えていくのがエンジニアの手腕。今回の『リボルバー』、オリジナル・モノラルミックス・リマスターとニューステレオ・ミックスはどれほど違って聴こえるか。そこに至高の喜びを見出す音響マニアが相当数いるのでしょう。

 スマホで音楽を聴く世代にはピンとこない話かもしれません。これはいわば、大人たちの「あれほどの名作なのだから今もっと凄いものになるはず」という執念が生み出す作業。昔の特撮を庵野秀明監督が次々とリメイクしていく「『シン・』シリーズ」に近いと言えば伝わるでしょうか。もとの素材がしっかりしているのだから、技術が進歩する限り、楽しみ方に終わりはないのです。

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