連載「lit!」第66回:ポスト・マローン、ザック・ブライアン、ミツキ、ホージア……歌心あるボーカルに耳を傾けたいグローバルポップ
近年、ビリー・アイリッシュに代表されるようにダークなポップスがティーンの間で人気を集めている。ビリーとはDarkroomのレーベルメイトでもあるハンバーストーンもその流れに位置するアーティストだ。
今年のサマソニで来日した英国のシンガーソングライター、ホリー・ハンバーストーンがデビューアルバム『Paint My Bedroom Black』を10月にリリースする。先行曲の「Superbloodmoon」は、遠い昔に別れた愛する人への思いを2人の視点から歌う曲だ。同レーベル所属のd4vdとロンドンで制作したらしく、次世代スターのコラボレーションが奏功した良曲である。
今年の『FUJI ROCK FESTIVAL』で来日したばかりのd4vdだが、早速12月に単独来日公演が予定されている。しかも『The Lost Petals』という今年2作目となるEPをリリースしており、活動ペースはかなり活発だ。EP冒頭の「Notes From A Wrist」は鬱病を患った友人についての曲で、同世代の共感を集めているのもまさしく2020年代的だと言えるかもしれない。
そのd4vdもファンだというアイスランド出身で中国にもルーツのあるアーティスト、レイヴェイも新作アルバム『Bewitched』をリリース。大ヒットした「From The Start」はボサノヴァを取り入れた楽曲で、ロンドンのフィルハーモニア管弦楽団を迎えた「California and Me」も収録。大人びた存在感のある声で満たされたゴージャスなアルバムだ。
ニューヨークの歌手マディソン・ビアーは3年ぶりの新作『Silence Between Songs』をリリースする。先行曲の「Spinnin」は少し陰りのある逃避的で物憂げな一曲。新作についてはThe Beach BoysやTame Impala、そしてラナ・デル・レイから影響されたと語っているのも頷ける。この参照元の選び方からも、2020年代の若者のダークなムードを上手く捉えていると言えるのではないだろうか。