AKB48 本田仁美、ストイックな姿勢は後輩メンバーの希望に Team 8、IZ*ONEを経て掴み取ったトップの座

 AKB48の本田仁美が2023年8月30日、グループからの卒業を発表した。同年5月、筆者が本田仁美をインタビューした際、意欲的な口調でこのように語っていた。

「自分が想像しない未来って、たくさん待っている。だからこそ挑戦し続ける楽しさ、おもしろさがあるんだなって。もしなにかに行き詰まっても、それらもすべて未来に繋がっているもの。だから失敗を恐れずにいろんなことにチャレンジしたいです」(※1)

 彼女と対面したのはこのときが初めてだった。どんな質問に対してもしっかりと考えて、こちらの「1」の問いかけに対して「10」を返してくれる、そんな人だった。その明るさ、前向きさ、なにより聡明さに多大な好感を持った。

 そのとき、こんな質問も投げかけた。まず筆者は「IZ*ONEを経てAKB48へ復帰し、韓国での活動経験を踏まえた上での『根も葉もRumor』(2021年)、『元カレです』(2022年)での本田さんのダンス、歌のパフォーマンスは凄まじいものがある」と前置きをした(これはインタビュー記事のなかでは文字数の都合で割愛していた)。このような前段を入れた理由は、本田から「今後」の話を引き出すためだった。そして「近年の本田さんのパフォーマンスを見ていると、どんな形であれずっとアーティストであり続けようという覚悟が感じられます」と続けた。

本田仁美のパワーはグループの一員として収まり切らなくなった

 AKB48復帰後の本田のパフォーマンス力はグループのなかでも別次元である。それは決して周りの実力が低いのではなく、彼女の表現力や動きが飛び抜けているのだ。明らかに立っているステージに違いがあり、もはやアイドルグループの一員としては収まり切らないパワーが感じられるようになった。そんな本田の姿から、彼女はすでに「その先」を見越しているように思えた。先述のインタビュー内容は、本田はまもなくグループを卒業するのではないかという筆者自身の直感があり、彼女の卒業に対する現状の意識、そしてその後の展開について、直接的ではない形で聞き出そうとした。

 本田はちょっと笑みを浮かべた。その表情は、うまく言葉にできないが「リアリティのある笑み」だった。そしてなんの迷いもなく「私個人としては、アイドルはいつか終わりが来るものだと思っています」とはっきり答えた。内心、驚いた。と同時に「これは間違いなく卒業を思い描いている」と考えることができた。さらに「一方でアイドルは、演技、モデルなどいろんな幅のお仕事ができるものでもあり、あらためて自分自身と向き合えるんです。『自分にはどんな仕事が合っているのかな』って」と口にした(※2)。

 実際に本田は、歌やダンスだけではなく、2023年7月スタートのドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)にも出演し、寂しさへの恐れが人柄に陰を落している生徒・江波美里を好演するなど、俳優としても才能を開花させている。人間の悩みや葛藤をあらわすその演技は、AKB48、IZ*ONEの活動があったからこそできたのではないか。

 本田は決して早くから脚光を浴びていたエリートではなかった。2014年にAKB48のTeam 8・栃木県代表として合格し、2017年にはローカルワイド番組『イブニング6Plus』(とちぎテレビ)でコーナーを担当していたが、それでも2018年にIZ*ONEのメンバーを決める日韓合同オーディション番組『PRODUCE 48』に挑戦するまで、全国的なテレビ番組などへ目立つ形で出たことは少なかった。Team 8の勢い、同期の小栗有以らの活躍などを目の当たりにしながら、本田は当時、いろいろなことに行き詰まっていた。本人曰く「これから自分はどうしようかな」とずっと悩んでいたという(※3)。長く抱いていた、先行きへの不安。それは、江波のようなキャラクターを演じる際に生かされるものかもしれない。

 ただ、『PRODUCE 48』で実力面が高く評価されるようになった。IZ*ONE在籍時は、パフォーマンスだけではなく、メイク、美容面での努力も知られるように。書籍『S Cawaii!特別編集 AKB48スペシャル』(2022年/主婦の友社)ではメンバーの小栗有以が「ひぃちゃんはメイクや美容にこだわりが強くてストイックな人」「ひぃちゃんも美容にストイックだよ」と、ストイックという言葉を何度も使って本田の人物像を紹介している。本田も2021年10月6日放送『1周回って知らない話&今夜くらべてみました 合体3時間SP』(日本テレビ系)に出演時、「カレーパンは食べるものではなく、見るもの」「徒歩1時間以内なら歩く」などのエピソードを明かし、番組出演者の指原莉乃は「ひぃちゃんはずば抜けて努力していたと聞いた」と感心していた。

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