マカロニえんぴつ、“愛”と本気で向き合う覚悟とロックバンドとしてのこだわりを凝縮 2ndアルバム『大人の涙』全曲レビュー
7.リンジュー・ラヴ
TBS系金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』主題歌としてデジタルリリースされ、『wheel of life』にも収められた楽曲。そのドラマの放送1回目でこの曲を聴いた時、もうあらゆる人たちが「これでええがな!」と叫びたくなっただろうなあ、と想像した。
シンプルに淡々と始まって、サビでどーんと突き抜ける曲で、ストレートに愛を歌っているラブソング。〈何度もあなたの名前を 届かない声でも呼びたい/まだ死ねない!抱き合って感じたい〉というサビ。
これよ! こういう曲を作ればいいのよ! そしたらヒットするんだから! いや、マカロニえんぴつ、とうに大ヒットしているけど、「ヒットするには必ずしも必要ではない要素」を大量にぶちこみながら曲を作る人たちじゃないですか、普段。この曲ぐらいシンプルでいいんですってば。
現に、このアルバムにたくさん入っているタイアップ付きの配信シングルの中で、この曲がもっとも大ヒットを記録している。ただし、そういう印象の曲でありつつ、よく聴くと、アレンジ等で、さまざまなアイデアが詰め込まれていたりもするのだが。
それから。ドラマでは放送されなかった曲の後半、最後のサビのあたりまで来ると、アレンジが突如「どうかしていく」さまが、力いっぱいマカロニえんぴつで、すばらしかったりもする。その部分の歌詞が〈僕のロックは 忘れた頃にまた聴かせてあげる〉なのも、とてもいい。
8.嵐の番い鳥
何これ。どういうつもり。というか誰、歌っているこのふたり。特に、女の人の方。
と、脳内が「?」でいっぱいになる、男女デュエットの昭和歌謡な曲。誰が書いたんだ。詞も曲もはっとりだった。途中で昭和歌謡の範疇を逸脱する曲展開になるが、しばらくしたら、もとに戻ったりもする。
あれかな、このアルバムのツアーの、ライブの中でのアクセントというか、お楽しみコーナー的に、この曲を入れるのかな。以前のツアーにおける「街中華☆超愛」みたいな役割というか。どういうつもりで作ったのか、問いただしたいような気もするが、触れずにおきたいような気もする。
9.Flozen My Love
曲ははっとり。はっとりのロック魂が炸裂したような曲だが、それだけではない。
1コーラス目のテーマは「うちの冷蔵庫の音がうるさい」。2コーラス目のテーマは「カレが浮気してるから問い詰めた」。3コーラス目以降は……というような歌詞。で、曲展開、目まぐるしいことこの上ない。3分56秒の間に何曲分のアイデアを詰め込んだんだ、と、言いたくなるような。
これも、フェスとかでは演奏されない、ただしワンマンにおける素敵なアクセントになるであろう、と思わせる曲。曲の終わり方も、素敵にどうかしている。
10.だれもわるくない
作曲はベース高野賢也。デスクトップでひとりでトラックを作った時のテイストをそのまま残したような素朴な部分と、生のギターがサウンドを覆う部分のコントラストが鮮やかなアレンジに乗って歌われるのは、このアルバム全体のテーマにもっとも生々しく迫っているリリックである。
『大人の涙』というアルバムタイトルも、この曲の歌詞からつけられているほか、〈余分な痛みがあってはじめて正義は生まれるんだ〉など、耳にひっかかるラインがあちこちにある。後半、ブライアン・メイ・マナーのギターに「ラララ」のコーラスがかぶさっていくあたりも、ライブで体験すると、格別なものがありそう。
アニメーション制作会社MAPPAが、2023年5月23日に東京ガーデンシアターで行ったイベント『MAPPA STAGE 2023』の、オープニング映像のテーマソングとして提供された曲である。
11.TIME.
キーボード長谷川大喜の作曲。『wheel of life』の3曲目に収められている曲で、『wheel of life』というタイトルは、この曲の歌詞に出てくる言葉である。
一回目のAメロと二回目のAメロで、バックの演奏が違う。というふうに、アレンジが1曲の中で変幻自在に変わっていくのは、マカロニえんぴつにおいては常道だが、それらの中でも、もっともその振れ幅が大きな曲かもしれない。
というのに加えて、楽器以外のいわゆるSE的な音が、このアルバムの中で、おそらくもっとも効果的に使われている曲でもある。
〈この手はもう 奪うため じゃなくて/掬うために使わなきゃ〉って、「救う」じゃなくて「掬う」なのか。〈寝具とダンス〉は「sing」を「寝具」にしたんだな。など、歌詞を目で追うと発見できるポイントも多数。
初期から現在までマカロニえんぴつの歌のテーマに何度もなってきた「愛」についての、新しい角度・新しい切り口からの歌である。
12.星が泳ぐ
テレビアニメ『サマータイムレンダ』1stオープニングテーマで、このアルバムの中でもっとも古い曲である(2022年4月15日リリース)。
「愛の波」のイントロが力いっぱいユニコーンなら、この曲のイントロは、力いっぱいGRAPEVINEである。ただし、例によって、Aメロに入ると途端に違う曲になる。
というアレンジでありつつ、マカロニえんぴつのレパートリーの中にいくつもあるラブソングの中で、「なんでもないよ、」と双璧をなす存在だと思う、この曲は。このレベルのラブソングが、アルバム二作続けて収録されている、という事実、すごい。
13.ありあまる日々
作詞作曲ははっとりで、編曲クレジットはなし。つまり、はっとりがアコースティックギターで弾き語りするさまを、おそらく一発で、ギターも歌もハープも含めてマイク一本で、録った曲である、と思われる。
〈どれほどきみと居れば十分だったか/思い知る毎日だ〉というラインに端的に表れているように、「その人にもう会えなくなってしまった」という事実と向き合う自分を歌った曲。失恋の歌、と捉えることも可能だが、死によって二度と会えなくなった人と自分の曲、として聴くこともできる。
と解釈すると、1曲目の「悲しみはバスに乗って」と、ラストのこの「ありあまる日々」、「死」に触れた曲で始まり、死に触れた曲で終わるアルバムが本作である、という捉え方もできる。
■リリース情報
マカロニえんぴつ
メジャー2ndフルアルバム『大人の涙』
特設サイト:https://macaroniempitsu-otonanonamida.com
<CD収録曲・曲順>
01. 悲しみはバスに乗って
02.PRAY.(第95回センバツ MBS公式テーマソング)
03.たましいの居場所(日産「SAKURA」CMソング)
04.ペパーミント(日本テレビ系「DayDay.」テーマソング)
05.ネクタリン(NHK Eテレ「天才てれびくん」テーマソング)
06.愛の波(テレビ朝日系 金曜ナイトドラマ「波よ聞いてくれ」主題歌)
07.リンジュー・ラヴ(TBS系 金曜ドラマ「100万回 言えばよかった」主題歌)
08. 嵐の番い鳥
09. Frozen My Love
10. だれもわるくない(「MAPPA STAGE 2023」Special Opening Movie テーマソング)
11. TIME.
12. 星が泳ぐ(TVアニメ「サマータイムレンダ」1stオープニングテーマ)
13. ありあまる日々
■ツアー情報
『マカロックツアーvol.16 ~マカロニちゃん、じつはとってもシャイなの…仲良くなっても時間を置くとすぐまた照れちゃうからコンスタントに会ってくだシャイ…♡編~』
9月16日(土)宮城県 宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
10月14日(土)北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
10月21日(土)大阪府 大阪城ホール
10月22日(日)大阪府 大阪城ホール
11月4日(土)福岡県 福岡マリンメッセA
11月5日(日)福岡県 福岡マリンメッセA
11月18日(土)東京都 国立代々木競技場第一体育館
11月19日(日)東京都 国立代々木競技場第一体育館
12月2日(土)愛知県 日本ガイシホール
12月3日(日)愛知県 日本ガイシホール
[TICKET]
全席指定7,900円(税込)
※4才以上チケット必要。3才以下でも席が必要な場合は有料。
【マカロニえんぴつファンサイト『OKKAKE』最速先行】
受付期間:2023年5月18日(木)20:30~6月5日(月)23:59
受付URL:https://fc.macaroniempitsu.com/
【一般発売】
8月5日(土)10:00~
■関連リンク
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