『響界メトロ』、7つの楽曲が出揃い明らかとなったストーリーの全容 クライマックスに向けて揺れるキャラクターたちの運命

『響界メトロ』、明らかとなった全容

 2023年2月に始動し、約半年をかけて駆け抜けてきた音楽原作プロジェクト『響界メトロ』。“「声優」「歌い手」と「ボカロP」のタッグでおくる音楽でストーリーを紡ぐプロジェクト”と銘打ち、ストーリーの起点となる楽曲陣と、そのヒントとなるショートボイスストーリーを中心に、一部キャラクターボイスのTikTokオーディションを行なったり、各曲のボーカロイドverを公開するなど、様々な仕掛けによって視聴者を物語に巻き込んできた。

 ボーカル&CVは、声優・内田真礼、秋奈、そして歌い手・konoco、わかばやしが担当。コンポーザー陣にはGiga & TeddyLoid、じん、Chinozoなどボカロ/ネット音楽シーンで活躍する作家が名を連ねている。

 当初明らかとなっていた曲数は7曲。7月12日に「F協和音」、8月9日に「轍」が発表され、その全てが出揃った形だ。前回のコラム(※1)以降、カナタやカイのショートボイスストーリーも公開され、各キャラのバックストーリーが明らかに。特にカイ(CV:土岐隼一)については驚くべき事実も発覚し、ここまで紡がれてきた『響界メトロ』という物語の全貌が見えることとなった。今回は「F協和音」「轍」の2曲とともに、これまでの展開を紐解きたい。

 まずは前回のコラムで紹介した「Q&[ ]」の公開後、謎の少女・カナタのショートボイスストーリーの投稿がスタート。カナタのCVはオーディション優勝者・わかばやしが務めており、もともと歌ってみた活動をしていた彼女にとって、今回のようにキャラクターに声を当てる経験は初めてだという。「Q&[ ]」の歌声からはクールさと激しさを感じたが、キャラクターボイスではあどけなさも混じり、カナタの年齢に合った声質だと感じた。

 昔から「変わってる」と言われ、周囲から浮きがちだったカナタ。そんなカナタはカイと出会い、カイはカナタの歌に、カナタはカイの作る曲に惹かれたことで、2人は互いに心を通わせていく。カナタが「生きづらい系」と呼んだカイもまた、音楽なしでは世界とつながることができずにいたのだ。

 カイが作った曲をカナタが歌う約束をした直後、大災害が起こる。これまでのボイスストーリーでも、キャラクターたちの運命を狂わせ、絶望をもたらした大災害だ。カイを失ったカナタは、大災害が起こらない世界に行くため、「Q」がいるという最果ての駅に向かう。「Q」はメトロ響界線の支配者であり、運命の“チケット”を発行する者。物語は、より核心に迫っていく。

 こうしたカナタ編の最終話の投稿の後、7月12日に「F協和音」がリリースされた。ボーカルはイツカとカナタの2人、作編曲は加藤冴人(LOVE ANNEX)、作詞はこれまで同様RUCCAが務めている。プロジェクト全体を通してアートワークを担当しているSOLANIによる本曲のジャケットは、廃墟のような世界で、イツカがカナタへチケットを見せる様子を描いたもの。言うまでもなく、「青春は亡霊」のストーリーにあったイツカとカナタのワンシーンを表しているのだろう。神秘的なMVとともに流れる劇的で疾走感のあるサウンドは、アニメや映画のエンディングテーマのようにも感じられる。

F協和音 feat. イツカ(CV:秋奈),カナタ(CV:わかばやし)【Music Video】

 サビで繰り返される〈リドゥ〉は、一度取り消した操作を、再度繰り返して実行することを指す言葉だ。これまでキャラクターたちが各々の思惑のもと世界をやり直そうとした様子が思い起こされるが、〈繰り返す犠牲が 絶望を証明してる〉〈未来の亡骸を擁いた日々を 毀して〉など、実は後に公開されるカイのショートボイスストーリーに通じる要素も多分に含んでいる。

 「F協和音」の投稿後、カイのショートボイスストーリーがスタートした。これまで楽曲を公開後、その曲を歌っていたキャラのストーリーが公開されるという順番だったので、イツカとカナタによるデュエット曲だったこと、さらにその後カイのストーリーが始まるのは初めての流れだ。

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