連載『lit!』第63回:NGT48、僕が見たかった青空、超ときめき♡宣伝部……今夏マストで聴きたいアイドルの新曲
今年の夏は新型コロナウイルスの規制緩和に伴い、アイドルシーンは声出しやジャンプなどが解禁され、コロナ禍以前の状態へと徐々に戻りつつある。8月4~6日にかけて開催された『TOKYO IDOL FESTIVAL 2023』(以下、TIF)は約7万500人の来場者を記録し、大きな盛り上がりを見せた。今回はそんなアイドルシーンの流れを受けて、この夏に聴いておきたい爽やかなアイドルソングを紹介。活動歴の長いアイドルからデビューを控えフレッシュなアイドルまで、この夏にマストで聴いてほしい5曲だ。
NGT48「あのさ、いや別に…」
NGT48の9thシングル『あのさ、いや別に…』は、すでに卒業を発表している中井りかのラストシングルとなるグループにとって節目の作品だ。〈ラララ…〉から始まる表題曲の冒頭は中井の卒業を祝福しているかのようなメロディで構成されているが、曲を聴き進めてみると単なる卒業ソングではないポジティブな音像が浮かび上がってくる。歌詞に目を向けて見ると、〈だからいきなりキスしちゃいました〉やラストの〈興味なさそうに そっけなく 元気でな〉といった不器用な言い回しが印象的だ。こうした歌詞のあちこちに中井らしさが感じられるのも興味深い。MVは『今日から友達になれますか?』(フジテレビ系)で中井とも共演経験のある小籔千豊がプロデュースを手掛けた意欲作。ピンクを基調とした鮮やかなセットはまさに“りか姫”を表しており、最後の最後まで中井らしさが詰まった作品となっている。
僕が見たかった青空「青空について考える」
8月30日にデビューする僕が見たかった青空は、2023年6月15日にお披露目された秋元康による新アイドルグループ。“乃木坂46の公式ライバル”として結成され、公式サイトに掲載されているプロフィールには「『AKB48』の公式ライバルとして生まれた『乃木坂46』のように大きな背中を追いかけ、いつか日本のアイドルシーンを共に盛り上げられる存在になるべく『僕が見たかった青空』は走り出します」と書かれている(※1)。デビュー曲「青空について考える」でセンターを務める16歳の八木仁愛は初々しい表情を見せながらも、フォーメーションの中心に立つ姿は堂々としており、すでに逸材ぶりを感じさせる。
作曲にはNGT48「僕はもう少年ではなくなった」や乃木坂46「人は夢を二度見る」などを手掛けた松尾一真を起用し、グループ名に相応しい爽やかで青春の息吹を感じさせるアレンジが新しい。初期にはフレンチポップに代表されるような上品な路線でスタートした乃木坂46とも、そのアンチテーゼのような形で始まった欅坂46(現・櫻坂46)とも異なり、僕が見たかった青空は両グループの隙間を縫ってきた印象。すでに『お台場冒険王2023 SUMMER SPLASH!』や『TIF』では楽曲を披露しているが、23人によるフォーメーションダンスは圧巻だった。今後のアイドルシーンに新たな風を吹かせるかもしれないと期待感を漂わせるフレッシュなグループだ。
超ときめき♡宣伝部「かわいいメモリアル」
〈好きすぎて大好き 大嫌い 大好き〉から始まる、これぞ超ときめき♡宣伝部と言わんばかりの王道アイドルソング。同曲はドラマ『みなと商事コインランドリー2』(テレビ東京系)の主題歌にもなっている。近年の傾向からすると、王道路線を行くアイドルグループが台頭しており、彼女たちはその潮流の中にいると言える。前作『LOVEイヤイヤ期』から比較的短いスパンでリリースとなった同曲の作詞曲を担当するのは、超ときめき♡宣伝部には欠かせないMUTEKI DEAD SNAKE。曲自体はカラッと爽やかに聴くことができるアレンジになっているが、歌詞は〈一生一緒なんだから〉〈ちゃんと答えてよ!〉などインパクトのあるフレーズが盛り込まれているそのギャップが絶妙。アイドルソングとしてはど直球を攻めていながらも、サビのメロディには「すきっ!」にも通ずるキャッチーさもあり、SNSでの拡散も期待できそう。リリースするごとにアップデートした姿を見せてくれるグループの今後が楽しみになる楽曲だ。