Nissy(西島隆弘)、日本音楽史上で唯一無二の成功を収めたソロアーティスト デビューから10年間の軌跡を振り返る
日本におけるダンス&ボーカルグループの歴史は90年代以降、TRFやDA PUMP、w-inds.、EXILEなど、今も現役で走り続ける先人たちが多くのファンを熱狂させ、今に繋がる時代と文化を築き上げてきた。しかし長い歴史上、グループとソロの両方で6大ドームツアーを成功させたアーティストはたった一人しかいない。それが、8月6日にソロプロジェクト始動10周年を迎えたNissyこと西島隆弘だ。本稿では10周年を記念して彼の軌跡を辿り、その“すごさ”を解剖していきたい。
男女混合ダンス&ボーカルグループ・AAAのメンバーとして2005年にエイベックスからデビューした西島は、聴く人を虜にする卓越した歌唱力と20年以上にも及ぶダンスキャリア、そして類まれなるスター性で、当時はまだ前例の少なかった男女編成のグループを長きにわたり牽引してきた。2013年に「どうしようか?」でNissy名義での待望のソロプロジェクトを世に送り出すと、2018年にはソロでは初の東京ドーム公演を開催。同年12月には自身初の4大ドーム公演を発表し、日本人男性ソロアーティスト史上最速でドームツアーにたどり着いた。昨年から今年にかけて開催した3年ぶりのドーム公演は、史上最年少かつ男性ソロアーティスト史上2人目の6大ドームツアーを全公演ソールドアウト。老若男女から絶大な支持を得る、まさに国内でも有数の存在だ。ここまでの経歴も錚々たるものであるが、彼を“すごい”と言わしめる理由はもっと深淵にある。
一つ目は、ライフワークともいえる“Nissy Entertainment”の存在だ。炎や水、スモーク等の壮大な特効を大胆に用い、時には気球やムービングステージを駆使した彼のライブは、いわばコンサートの域を超えたテーマパーク、“究極のエンターテインメントショー”である。人はよくNissyを“魔法使い”に例えるが、その理由の一つは、生み出す楽曲の世界観からライブの演出に至るまで全てが一つのストーリーとして一貫して描かれ、細部までこだわり抜かれたエンターテインメントがまるで魔法にかけられたように観る人の心を奪って夢のような幸福をもたらしていくからだ。2019年発売のベストアルバム『Nissy Entertainment 5th Anniversary BEST』がBillboardの総合アルバム・チャート“HOT ALBUMS”で総合首位を獲得するなど、リリースのたびに作品をチャート上位に位置づけているのも、彼のエンターテインメントが多くの人に求められていることの表れである。
8月6日は、正確には“ソロデビュー日”というより、“デビュー曲「どうしようか?」のMVが公開された日”だ(発売日は2014年11月19日)。しかし、この日が事実上のデビュー日として毎年大切にされているのは、彼が長年苦労を重ねて構想を練ってきたソロプロジェクトがやっとの思いで世にお披露目された記念すべき日だからであろう。今でさえ6大ドームを埋めるソロアーティストになったNissyだが、ソロ活動を始めるまでの道のりは想像を絶するものだった。10年前のその日、西島を慕う後輩であるDa-iCEの花村想太が「僕が尊敬してやまない、西島先輩!!!本当にかっこいすぎる!!!(原文ママ)」とSNSにMVのリンクを投稿したり(※1)、当時の西島が夢を込めて作った企画書の分厚さを「どうしようか?」を制作したSHIROSEがのちに「“本やん”って心で突っ込むほどのものだった」と表現していたりと(※2)、逆境も乗り越えてエンターテインメントに対する熱い想いで走り続ける西島の姿に心動かされてきた人は業界内にも多い。