連載『lit!』第61回:デュア・リパ、オリヴィア・ロドリゴ、Latto…グローバルポップの中で存在感放つ女性アーティストたち

 『SUMMER SONIC 2023』にも出演するロンドンの3人組・FLOは、1990~2000年代のR&Bにトラップ以降の現代的なプロダクションを施した作風により、“現代版TLC”とも称されるR&Bガールズグループだ。デビュー曲「Cardboard Box」は4000万回以上のストリーミング数を記録。数々の新人賞も受賞し、英国ガールズグループの復活と評価されている。そんなFLOが今年リリースしたミッシー・エリオットを迎えた楽曲「Fly Girl」は、ミッシーの名曲「Work It」を下敷きにしている。フックとなる歌詞もそのまま使っているが、より明るいパーティーソングに生まれ変わったようだ。そこにミッシー本人がラップを被せる展開は、FLOがポップミュージックの歴史を大胆ながらも的確に引用できる優れたグループであることを示している。

FLO - Fly Girl ft. Missy Elliott

 FLOが“現代版TLC”なのに対して、“2020年代のSpice Girls”と称されるのがLAの5人組ガールズグループ、Boys Worldだ。楽曲のリリース前からTikTokで話題になったり、YouTubeではダンスのリハーサル動画をアップロードしていたりと、K-POPカルチャーの影響が随所から感じられるグループである。しかも、彼女たちの楽曲を過去に手掛けてきたのは、BTSやBLACKPINKなどの楽曲制作に携わった実績のあるプロデューサーであるという(※2)。K-POPがUSのトレンドを追いかけてきたが、その逆の現象がすでに起きているのかもしれない。

Boys World - me, my girls & i (Official Music Video)

 2023年はヒップホップ生誕50周年の年だが、今年に入ってから半年以上ものあいだ一度もヒップホップの楽曲が全米1位を取れていない状況が続いていた。そんな中BTSのメンバー、JUNG KOOKの初のソロシングル「Seven」が初登場1位を獲得したことで、それに客演していたアトランタの新人ラッパー・Lattoが今年初めて全米チャート1位の座に名が載ったラッパーとなった。一方、始めに紹介した『Barbie The Album』では、「Area Codes」のバイラルヒットで知られるカリ(Kaliii)が、FIFTY FIFTYとのコラボ曲「Barbie Dreams」を発表している。

FIFTY FIFTY (feat. Kaliii) - 'Barbie Dreams' Official MV [From Barbie The Album]
정국 (Jung Kook) 'Seven (feat. Latto)' Official MV

 両者に共通するのはK-POPアーティストとUS(フィメール)ラッパーとの共演作という点、そしてビートが軽やかなUKガラージ直系ものである点があげられる。ヒップホップの周縁に追いやられてきた女性ラッパーとK-POPが、UKガラージという軽やかなサウンドを経由して出会うのは、清涼感のあるジャージークラブが流行しているヒップホップシーンの動きと無関係ではないだろう。

※1:https://www.bbc.com/news/newsbeat-61512053
※2:https://avyss-magazine.com/2023/06/27/44445/

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