リアルサウンド連載「From Editors」第17回:『ウルトラマンブレーザー』が面白すぎる! 対話と理解の必要性を説くストーリー

 「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。

 第17回は、特撮とメタルが好きな信太が担当します。

視聴者を没入させる“緻密さ”こそが『ブレーザー』の魅力

 ついに始まった新しいウルトラシリーズ『ウルトラマンブレーザー』(テレビ東京系)。昨日7月29日に第4話が放送されましたが、すでにとんでもなく面白いので、この場を借りて紹介させていただきます。

 前回の「From Editors」で、『ブレーザー』放送前に観ておきたい特撮作品として『UNFIX』を紹介しましたが(※1)、まさにその『UNFIX』的な世界観を引き継ぐ形で、『ウルトラマンブレーザー』第1話「ファースト・ウェイブ」は幕を開けました。

 この第1話が非常に画期的だったと言えるでしょう。約25分の放送時間を、夜の池袋に現れた1体の怪獣(バザンガ)と防衛隊の市街地戦だけで描ききるという、ウルトラシリーズ初の試み。今年で放送25周年を迎える『ウルトラマンガイア』も、第1話「光をつかめ!」がかなりリアルなシミュレーションストーリーでしたが、『ブレーザー』の第1話はそれを凌駕する緻密な完成度。主人公のヒルマ ゲント隊長(蕨野友也)が意外な形でウルトラマンに変身“させられる”瞬間以外は、防衛隊内での細やかな作戦行動の連携(と不連携)が描かれていきます。

 特に見応えがあったのは、防衛隊の上層部、現場指揮所、航空部隊、地上部隊、特殊部隊とさまざまなチームが怪獣排除のために動くものの、混乱で適切な命令が特殊部隊に降りてこず、作戦続行が困難になる点。どういう原因で行き違いが発生し、それによって現場への指示にどういった弊害が出るのか、といった綿密な展開構成は、この物語がフィクションであることを忘れさせ、一気に視聴者を“怪獣がいる世界”へと没入させていきます。田口清隆監督の特撮愛と、それを現代的な価値観でアップデートして描き直す研究心、ハイクオリティな映像表現などが濃縮され、この第1話だけですでに傑作と呼んでいいでしょう。

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 第2話「SKaRDを作った男」、第3話「その名はアースガロン」も秀逸な作品でした。23式特殊戦術機甲獣と呼ばれる戦闘ロボット・アースガロンの登場が、「メカゴジラっぽい!」とSNSで話題になっていたので、どれどれと放送を確認してみたところ、出撃から飛行、着陸、攻撃のあらゆるシーンに至るまで、「ホンマにメカゴジラやん!」と喜びの舞を踊りたくなるほど、特撮心をくすぐる素敵なシーンになっていました。直近のウルトラシリーズでは、防衛兵器として利用していたはずのロボットが、突如として人類に牙を剥く展開も多かっただけに、アースガロンがどうなっていくのかは気になるところです。

 また、第2話〜3話では、田口監督による“キャラクターを魅せる手腕”も光ります。訓練や出撃のシーンでは、特殊部隊らしいピリッとした空気感を漂わせつつ、5名の隊員たちの人間関係や、おっちょこちょいな一面も垣間見えるよう、うまく展開の妙を練り上げているのがよくわかります。個人的に、小柳啓伍さん脚本、田口清隆さん監督の『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』第8話「繁殖する侵略」が大好きなのですが、基地が墜落するかもしれないほど切羽詰まっているのに、てんやわんやな隊員たちがコミカルな行動を取ってしまい、ただ敵を倒すだけでなく、個々人の素の面白さが出てしまうという演出が素晴らしいのです。田口監督の脳内では常に、「どうやってユニークなキャラクターで笑いを取ってやろうか」という発想が渦巻いているんだろうなと思いますし、『ブレーザー』第2話〜3話でもそのセンスが炸裂していました。謎の宇宙人であるウルトラマンブレーザーでさえも、暑がったり、気持ち悪がったり、何かと性格が出まくりなので、人間的で面白いです。

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