Dannie May、1stアルバム『Ishi』を経て新たなフェーズへ　バンドの現在地を強烈に示したワンマンライブをレポート

　Dannie Mayが1stアルバム『Ishi』を携えた東阪ワンマンライブ『Dannie May ONEMAN LIVE 「Ishi - I sing the happy irony -」』を開催した。本稿では、初日の渋谷CLUB QUATTRO公演をレポートする。

　実はライブを観るのが、個人的には初めてだった。ジャンルの振り幅が大きいというのは彼らの形容詞として頻発するが、ライブ演奏で楽曲の多彩さを体感すると、正しくは「ジャンルと彼らの距離感をどうオリジナルに詰めるか？」が個性になっているように感じた。たとえば、ビルボードのトップチャートに入ってくるようなR&Bや、ビリー・アイリッシュを彷彿させるようなダークポップ、はたまたポストパンク、J-POP王道のバラードなどなど、インスピレーション源に「自分はどこに共感し、どこを変えるのか？」という意味での“距離”だ。それが彼らのミュージシャン、ひいては人間性に基づいているから、あたかも現代のヒットチャートを一望するような多彩なジャンル感でセットリストが構成されていても、飽きない、楽しい、もっと演奏を聴きたいという好循環が生まれるのだろう。いきなり結論めいたことを書いてしまったが、限りなくリスナーに近く、でも今を生きているアーティストとして腑に落ちるスタンスが見て取れたのだ。

　オープニングSEに「I sing the happy irony」が流れる中、サポートの成瀬太智（Dr）と共にオンステージ。アルバムの曲順通り、痛烈なイマココからの一撃と言える「笑わせらぁ」がプリミティヴに発される。声出しOKになったオーディエンスに向けて、マサ（Vo/Gt）がロングトーンで対決姿勢を見せるのが面白い。続く「玄ノ歌」でYuno（Vo/Kantoku）のベースラインが効力を発揮し、冒頭から渋谷CLUB QUATTROはダンスフロア状態だ。3曲目には田中タリラ（Vo/Key）のソングライティングセンスが際立つメロウなR&Bナンバー「メロディが浮かばなくても」を披露。一曲あたりの尺が短く、テーマを凝縮した曲ばかりなせいか、3人の個性が3曲だけでもすぐ飲み込めた。

　続いてはタリラがハンドマイクで歌う（しかもオリジナルの牛乳パックも手にして！）「マママ」。大好きな人のものならゴミみたいなものでも愛おしいという極端な喩えとして〈腐りきった牛乳のゴミすら愛おしい〉という歌詞のちょっとした狂気を、マサとYunoが挟む効果音的なコーラスが笑いに転じさせる。ヒップホップ／ソウルのフレーバーは「一生あなたと生きていくなら」「ユートピア」「たぶん、80年」と繋がり、いい流れを生む。ただ、歌メロのフロウにお囃子っぽいノリすら感じた「一生あなたと生きていくなら」はライブだからこそ生まれたものかもしれない。