きゃりーぱみゅぱみゅ、日常の延長線上にある音楽表現 好きなものや人生経験を反映した“らしさ”溢れるステージを観て

きゃりー、日常の延長線上にある音楽表現

 「こんなにカラフルな野音はなかなか見たことないんじゃないですか?」

 2023年7月15日、きゃりーぱみゅぱみゅ(以下、きゃりー)のワンマンライブ『祝・日比谷野音100周年 きゃりーぱみゅぱみゅ Special Live 2023 - Midnight Sun -』が日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)にて開催された。会場に入って驚いたのが、華やかで祝祭感のあるステージセットだ。日比谷公園に本店を構える日比谷花壇とのコラボによって実現したもので、天井近くには大きな花束があり、そこからパステルカラーのリボンが何本もステージへと伸びている。ステージも上手から下手まで、カラフルな花々で彩られていた。

 鳥のさえずりのような音が聞こえてくると、まず、ステージに仮面をかぶった4人の音楽隊が登場。ライブは北欧のお祭りをイメージしているそうで、彼らが奏でる明るいケルト音楽が会場を盛り上げていく。演奏が「良すた」のイントロ部分に切り替わったところで、4人のダンサーに囲まれながらきゃりーが登場。そのままパーティー感のある「良すた」をダンサー4人とともに届け、にぎやかにライブをスタートさせた。

 白いドレスをまとい、頭にベールをつけたきゃりーを見て結婚式の花嫁が思い浮かんだが、それもそのはず、今回のライブのテーマは「人生最大のセレモニー」だという。ダンサー4人はそれぞれきゃりーの父、母、妹で、観客は森の奥深くで行われている祭典に招待された人々、という設定だ。さらに、今回のライブは声出しに加え、一部の楽曲で撮影も許可された。「次の曲は撮影OKです! 写真撮りながらも一緒に踊ってくださいね!」と始まった「キミに100パーセント」では、観客はスマホのカメラを構えながら、体を揺らしたり、片方の手を高く挙げたりして盛り上がる。きゃりーもステージを左右に往復しながら、端や遠方の人に手を振るなど、フロアとのコミュニケーションを欠かさない。

 「もんだいガール」「ファッションモンスター」といったキラーチューンが続けて披露されると、会場はきゃりーのダンスを真似して踊る人たちであふれた。しかし、なかには初めてライブを訪れた人もいるわけで、その人たちも一緒に盛り上がれるように、きゃりーは「みんなで声出すよ! もっともっと!」「みんなでジャンプ!」と観客を煽る。積極的にエスコートする姿には、来た人全員に楽しんでもらいたいという思いやりを感じる。

 「あんまりやらない曲やっていいですか?」と披露されたのは「すんごいオーラ」。〈散歩のコースに猫がいて/微妙な距離を歩いてる/こっちに来いと誘うけど/ておーい ておーいって逃げてくよ〉の歌詞にあわせて、猫に扮したダンサーをきゃりーが呼んだり追いかけたりする素振りを見せるなど、短編劇のような演出でも楽しませた。ダンサーが全員舞台から去り、ステージに1人残ったきゃりーは「Unite Unite」を力強く披露。続く「夏色フラワー」はスタンドマイクを用い、妹役のダンサー2人とともにしっとりした雰囲気で届けた。

 ここで1度きゃりーはステージから去り、入れ替わりでケルト音楽隊がステージに再登場。彼らの陽気な演奏にのせて、ダンサーたちが愉快にダンスを繰り広げる。演奏とダンスが盛り上がりを見せたところで、衣装チェンジを終えたきゃりーが再び登場し、ライブは後半戦へ。「CANDY CANDY」では間奏部分で観客がジャンプし、「きらきらキラー」では観客のタオルがクルクルと回された。

 この頃ちょうど日が落ち始めてきたのだが、そうなるといよいよペンライトの出番だ。続く「きゃりーANAN」で、きゃりーはペンライトをはじめに赤色に設定し、〈ぱみゅぱみゅ〉の部分でボタンを2回押すようにアナウンス。指示通りに観客がペンライトを操作すると、会場を埋め尽くす光が同じタイミングで赤→青→黄→紫→緑と順番に変わっていく。その光景は圧巻で、歌唱後にきゃりーも「大変よくできましたー!」と嬉しそうに叫んだ。

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