サザンオールスターズ、45周年の幕開けを告げる「盆ギリ恋歌」 新鮮さと中毒性に満ちた“時空を超えたエロソング”に

 サザンオールスターズの45周年イヤーがついに開幕した。

 デビュー記念日(6月25日)の前日には、桑田佳祐の母校・茅ヶ崎小学校(神奈川県茅ケ崎市)で茅ヶ崎商工会議所青年部が中心となり、記念イベントが開催された。全国からファンが集まり、「サザン 45 おめでとう」の人文字を作るなど、サザンへの愛とエールを送った。そして6月24日放送のラジオ番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』(TOKYO FM/JFN系)では「大発表スペシャル2023!!〜明日(6/25)はデビュー記念日〜」と題し、『茅ヶ崎ライブ2023』の開催を発表(神奈川県茅ヶ崎市 茅ヶ崎公園野球場/9月27日、28日、30日、10月1日)。さらに7月から3カ月連続となる新曲の配信リリースもアナウンスされた。

 45周年イヤーの幕開けを告げる3カ月連続新曲リリースの第一弾「盆ギリ恋歌」は海の日(7月17日)にリリースされた。その直後からSNSでは数多くの感想が投稿され、「盆ギリ恋歌めちゃくちゃいい やっぱりサザンの曲聴かないと夏が始まらね〜」「どことなく懐かしいけどノレる曲だね!」といったコメントが寄せられている。サザンらしさを濃密に残しながら、“こんなサザン、聴いたことないかも”という新鮮なインパクトを与える。その両義性こそが、「盆ギリ恋歌」の吸引力・中毒性の源だろう。

 まず特筆すべきは、さまざまな音楽的な要素が混ざり合ったサウンドだ。ビートの基調は80’s。サザンのアルバムでいうと『綺麗』(1983年)、『人気者で行こう』(1984年)、『KAMAKURA』(1985年)の時期の質感を思い起こさせる。単なる懐古趣味ではなく、そこに歌謡、演歌、GS、テクノ、そして2023年現在のサウンド作りなどのファクターを加えることで、世界のどこにもない、つまりサザンにしか作れない音像へと導いている。間奏で挿入される、映画『The Twilight Zone』(邦題『ミステリー・ゾーン』)っぽいフレーズ、エキゾチックにしてニューウェイブなサックスの音色、「あぁ、キモチイイ」という桑田の吐息交じりの台詞など、随所にちりばめられたネタも楽しく、何度聴いても新たな発見があるのもこの曲も魅力。すべての中心にあるのが、日本語をグルーヴさせる桑田のボーカルであることは言うまでもないだろう。

 夏の妖しさ、エロさをムンムンと滲ませる歌詞も濃密だ。“盆ギリ”(盆義理)とは、遠州地方(静岡県西部)に残る、初盆を迎えた家にお参りに伺う文化。そこから着想を得て、〈今は亡き人と/素敵なLovely Night〉しているうちに、いつの間にか〈呑めや歌えの迎え送り火/Stairway To Heaven!!〉と踊りまくるーーというのが「盆ギリ恋歌」の世界観だ。猥歌、艶歌、情歌の伝統に則りながら、誰もが楽しめるエロいポップソングに結びつけるセンスは、「女呼んでブギ」「マンピーのG★SPOT」に連なると言えるだろう。

 エロいなー、妖しいなーとシンプルに楽しむこともできるし、それで十分なのだが、何度も聴いているうちに、いなくなってしまった大切な人を思い出してしまうのも「盆ギリ恋歌」の大事なポイントだろう。

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