サザンオールスターズ、45周年の幕開けを告げる「盆ギリ恋歌」 新鮮さと中毒性に満ちた“時空を超えたエロソング”に
ポップスやロックはもともとユースカルチャーであり、10代〜20代前半のリスナーを対象にしたものだった。サザンオールスターズはキャリアを重ねるなかで表現の幅を広げ、世代を超えて愛されるタイムレス&エイジレスな音楽へと到達した。亡き人に思いを馳せ、官能性を伴ったラブソングにつなげた「盆ギリ恋歌」は、“ついにサザンが時空を超えた”楽曲と言えるだろう(筆者は50代だが、過去の恋愛の名場面を思い出し、ぼんやりと恥ずかしい気持ちになりました……)。
楽曲のエンディング近くには、「江ノ島が見えてきた、俺の家も近い」という念仏のような「勝手にシンドバッド」のオマージュ的フレーズも(最後は「いい加減にしなさいよ!」と女性に突っ込まれる)。これもまた45周年を意識した演出だろう。
7月19日に公開された「盆ギリ恋歌」のMVも話題を集めている。MVは、「満月の夜、初盆。魔界の江ノ電に乗ったサザンオールスターズが空からやってくる。年に一度の凱旋、その行き先は魔界の扉が開いた江ノ島……」というコンセプトで撮影され、「盆ギリ恋歌」の妖しさ、エロさ、カオスを見事に映像化。歴代の作品のアートワークを散りばめた演出も楽しいが、何よりもサザンの5人が揃って演奏し、飲めや歌えの大騒ぎを笑顔でパフォーマンスしている場面にグッときてしまう。根底にあるのはもちろん「ついに45周年がはじまる!」という高揚感だ。
8月、9月にも新曲が発表され、『茅ヶ崎ライブ2023』へ。ここから本格的にアニバーサリーイヤーへ突入するわけだが、「盆ギリ恋歌」を聴く限り、サザンの45周年は懐古的なものではなく、キャリア全体を俯瞰しつつ、“2023年のサザンオールスターズ”を強く体感できるものになるのだと思う。45周年にあたってサザンは「我々の音楽やライブが、ほんの少しでも皆様の心に晴れ間をつくることが出来るのであれば、これ以上嬉しいことはございません」(※1)とコメント寄せているが、これまでの名曲の数々はもちろん、“現在進行形のサザン”を感じられることは音楽ファンにとって何よりの喜びなのだ。
※1:https://realsound.jp/2023/06/post-1359487.html
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