小説家 三浦しをん、BUCK-TICKから受けた多大な影響 ツアーに通い詰めて感じた“バンドの真髄”や“愛すべき隙”

「自由な解釈に委ねるBUCK-TICKの歌詞は、小説や散文のよう」

ーー櫻井さん、今井さんが書く歌詞への印象も教えてください。

三浦:BUCK-TICKって、“頑張ろうソング”みたいな曲が1つもないですし、愛とか恋とかもそこまでストレートじゃないというか。抽象度が高く、言葉に重層性があるところがすごく好きですし、そこは小説を書く上で見習いたいと思うんですよね。社会的な問題にもさりげなく応答したアルバムを作っている気がするんですけど、それも全然押しつけがましくないから、その問題がトピックではなくなってから聴いても古びない。櫻井さん、今井さんの歌詞には普遍性と、聴き手の想像力や自由な解釈に委ねる懐の深さがあると思います。美麗でナイーブなようでいて、実はシニカルな視線が感じられる櫻井さんの詞と、シニカルでとんがっているようでいて、実は純粋さが感じられる今井さんの詞というバランスもまた、最高です。

ーー作家として影響を受けた部分も?

三浦:すごーく影響を受けた気がしますね。私はエンタメ寄りな小説ばかり書いてるんですが、いつも心がけようと思っているのは、その作品の中で、何かをわかりやすく決めつけすぎたり、読者に押しつけすぎるのはやめようと。言いたいことがあっても、ユーモアに寄せて書くことで楽しんで読んでもらえるようにしようかなとか、読んだ方が「これはあの時、自分が感じたあのことを書いているかもしれないな」と、ちょっとだけ思いを馳せてもらえるような塩梅で書きたいと思っていて。それは確実に、BUCK-TICKの音楽をずっと聴いてきたからだと思うんです。あと、1作ずつ違うアプローチ、違うテイストにしたいと思っているんですけど、これはなかなか難しいことで、どうしても弾を撃ち尽くしてしまうというか。そういう点でも、やはりBUCK-TICKはすごいなと思いますね。

ーーエッセイにはたびたびBUCK-TICKのことが書かれていますが、小説の中には登場しませんね。彼らをモデルにして物語を書こうと思ったことは?

三浦:うーん、そうですねえ……。でも「まほろ駅前」シリーズ(2006年の『まほろ駅前多田便利軒』に始まるシリーズ3作)に出てくる行天(春彦)は、今井さんかなと思って書いてました。今井さんは行天みたいに変な人ではないと思うんですけど、何かちょっと掴みどころがなくて、破天荒そうな人って思うと、今井さんの姿がモヤモヤモヤ〜と浮かぶ(笑)。実際はわからないですけど。

ーーということは『まほろ駅前』シリーズの主人公で、行天の相棒・多田啓介は櫻井さんですか。

三浦:いやいや、それは違いますよ(笑)。櫻井さんは多田みたいにムサくない!

ーー(笑)。バンドの話を書こうと思うことはないんですか。

三浦:バンドの話で書きたいと思っているストーリーが1つだけあるんですけど、私、音楽自体には疎いんですよね。書きたいと思っていることもBUCK-TICKのような雰囲気ではなくて、もっとメンバー同士がギスギスしている感じ。BUCK-TICKにはそういうイメージはないですから……そういえば、櫻井さんが、歌詞が飛んだかタイミングを間違えたか、うまく歌い続けられなくなった時があって、もう1回頭からやり直そうって合図を一生懸命送っているのに、何事も起きていないかのように無視して進める今井さん、みたいなことはありましたね(笑)。他のメンバーも、さあどうするどうする? ってニコニコしてる。そういうことからもBUCK-TICKならではの魅力が感じられるというか。

ーー『天国旅行』(2010年3月)の冒頭に、THE YELLOW MONKEY「天国旅行」の歌詞が引用されていましたが、BUCK-TICKであのようなことはあり得るでしょうか。

三浦:BUCK-TICKの歌詞は、ここを切り取ればいいというものではないと思っていて。THE YELLOW MONKEYも好きなんですけど、吉井(和哉)さんの歌詞の方がフレーズとしてキレがあるというか、キャッチーではあるかもしれないですね……いや、BUCK-TICKにキレがないという意味じゃないですよ(笑)。THE YELLOW MONKEYの歌詞は短歌とか俳句っぽい“キメ”な感じがありますが、BUCK-TICKの歌詞は小説や散文のようで、一、二行だけを取り上げるのはちょっと違う気がするんです。

ーー面白い洞察です。言われてみればBUCK-TICKの場合、そういったパンチラインがあまりないかもしれないですね。

三浦:そうなんですよ、不思議ですよね。かといって、サビがキャッチーじゃないかと言ったら、そんなことないし。

ーーBUCK-TICKデビュー30周年の時、『別冊カドカワ 総力特集 BUCK-TICK』(2018年)で愛のこもった文章を寄稿されていますが、35周年を経た今の彼らにも寄せてみてはいかがでしょう?

三浦:あの時もどんなエッセイよりすっごく時間をかけて書いたんですけど、「有り余る愛が収まらない!」という感じになっちゃって、うまく表しきれないんですよね。なので、やっぱりBUCK-TICKから受けてきた影響や、見習いたいと思う姿勢を、自分なりに小説に精一杯込めていくことで、愛と感謝の思いを捧げ続けたいです。別に彼らはお読みにならないと思うんですけどね……(笑)。

BUCK-TICK 「無限 LOOP」 MUSIC VIDEO

■最新リリース情報
LIVE Blu-ray&DVD
『THE PARADE 〜35th anniversary〜』
2023年9月13日(水)リリース

・Blu-ray完全生産限定盤(2BD+4SHM-CD+PHOTOBOOK:¥15,400(税込)
・DVD完全生産限定盤(2DVD+4SHM-CD+PHOTOBOOK):¥14,300(税込)
・Blu-ray通常盤(2BD):¥7,700(税込)
・DVD通常盤(2DVD):¥6,600(税込)

商品詳細
https://www.jvcmusic.co.jp/linguasounda/b-t35th/

■最新アルバム情報
BUCK-TICK『異空 -IZORA-』
2023年4月12日(水)発売
ダウンロード/ストリーミング
https://buck-tick.lnk.to/izora

完全生産限定盤A(SHM-CD+Blu-ray):¥6,050(税込)
完全生産限定盤B(SHM-CD+DVD):¥5,500(税込)
通常盤(SHM-CD):¥3,300(税込)
完全生産限定アナログ盤(2枚組):¥5,500(税込)
完全生産限定カセットテープ:¥3,080(税込)

■ツアー情報
『BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA- ALTERNATIVE SUN』
・2023.10月20日(金)神奈川・KT Zepp Yokohama
OPEN17:30 START18:30
1F立見 ¥9,000(税込) / 2F指定 ¥10,000(税込) ※ドリンク代別

・2023年10月26日(木)愛知・Zepp Nagoya
OPEN17:30 START18:30
1F立見・2F後方立見 ¥9,000(税込) / 2F指定 ¥10,000(税込) ※ドリンク代別

・2023年10月28日(土)福岡・Zepp Fukuoka
OPEN17:00 START18:00
1F立見・2F後方立見 ¥9,000(税込) / 2F指定 ¥10,000(税込) ※ドリンク代別

・2023年11月4日(土)大阪・Zepp Osaka Bayside
OPEN17:00 START18:00
1F立見・2F後方立見 ¥9,000(税込) / 2F指定 ¥10,000(税込) ※ドリンク代別

・2023年11月12日(日)北海道・Zepp Sapporo
OPEN17:00 START18:00
1F立見・2F後方立見 ¥9,000(税込) / 2F指定 ¥10,000(税込) ※ドリンク代別

・2023年11月19日(日)東京・豊洲PIT
OPEN17:00 START18:00
全立見 ¥9,000(税込) ※ドリンク代別

・2023年12月2日(土)宮城・仙台GIGS
OPEN17:00 START18:00
1F立見・2F後方立見 ¥9,000(税込) / 2F指定 ¥10,000(税込) ※ドリンク代別

・2023年12月9日(日)東京・Zepp Haneda
OPEN17:00 START18:00
1F立見・2F後方立見 ¥9,000(税込) / 2F指定 ¥10,000(税込) ※ドリンク代別

<チケット一般発売>
2023年8月12日(土)10:00〜

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