氣志團 綾小路 翔、ロックスターであり続けるBUCK-TICKへの憧れ 青春を捧げた思い出から交流秘話まで明かす

綾小路 翔、BUCK-TICKへの憧れ

 2022年にデビュー35周年を迎えたBUCK-TICK。メジャーデビュー以降リリースされたオリジナルアルバムの数は22枚にも上り、パンクやニューウェーブ、歌謡曲などの影響を独自に昇華して構築する美しい世界観や、ロックバンドとして放つ妖艶でソリッドなオーラ、圧巻のライブ演出などによって、多くのリスナーを魅了し続けている。3月8日にはニューシングル『太陽とイカロス』、3月22日には『無限 LOOP』、さらに4月にはニューアルバムのリリースも予告されており、アニバーサリーを経た2023年もその勢いは止まることがなさそうだ。

 リアルサウンドでは、そんなBUCK-TICKの魅力を著名人が語る企画を展開。第2弾は、氣志團の綾小路 翔が登場する。対バンツアーや互いの主催フェスに出演し合うなど、ライブでの共演歴が多いほか、楽曲提供やトリビュート参加を通した交流も見られるBUCK-TICKと氣志團だが、SNSを見てもわかる通り、綾小路はとにかくBUCK-TICK愛が深い。一見すると音楽性が異なるように思える両者だが、氣志團は様々な面でBUCK-TICKから強く影響を受けているのだという。今回は、綾小路にBUCK-TICKとの出会いや好きな楽曲、共演の思い出やちょっとしたこぼれ話まで、熱くたっぷりと語ってもらった。(編集部)

「最初に見た時は『マジで2次元が実体化した!』と思った(笑)」

ーーBUCK-TICKの昨年末のツアー『BUCK-TICK TOUR THE BEST 35th anniv.』静岡公演をプライベートでご覧になったそうですね。

綾小路 翔(以下、綾小路):はい、一人で行きまして、楽しかったなあ。自分のツアーで各地に行くのも楽しいですけど、好きな人のライブを地方に観に行く楽しさは別格で。ファンの皆さんの気持ちがわかる。お客さんと一緒に会場に入って、一緒にグッズの列に並んで、一緒に席に着いて、一緒に固唾を飲んで、一緒に熱狂して、一緒に手を振って、一緒に会場を出て、一緒にトランポ(のトラック)を撮影して、みたいな。

ーーそれは初心に返るような感覚でしょうか。

綾小路:なんだろう……実を言うと中高生ぐらいから感覚はあまり変わってなくて。自分がミュージシャンだという自覚がないわけじゃないんですけど、単純に、“バンドのファン”という精神状態から、あまり変わらないまま大人になっちゃったなあと思うので。フェスのバックヤードとかにいても僕が一番挙動不審というか、出演者のみんなは仲間だと思って声をかけてくれるんですけど、僕は心のどこかで「すごいところに紛れ込んでしまった!」みたいな。

ーー(笑)。そんな感覚がいまだにあるんですか?

綾小路:僕、アニイ(ヤガミ・トール)の家のすごく近所に住んでるんです。それで先日、アニイが連絡くれて近所で待ち合わせて、アニイ行きつけの店に連れていってもらって一緒に飲んだんですけど、その店は元LAUGHIN' NOSEで現SAのNAOKIさんも常連で、気がついたら僕、アニイとNAOKIさんの間に挟まれて飲んでるっていうすごく不思議な、奇跡のようなことになっていて。でも、翌日になると「俺、あのアニイと飲んだのか……」って、夢を見ていたような気持ちに毎回なるんですよ。あの頃から考えたらね、信じられない未来で生きてると思います。ただ、ステージを観ちゃうとすべてがぶっ飛びますね。一緒に飲んだアニイとステージのアニイは全く別人だなって、こないだのライブを観ても思いましたもん。

Debut 35th Anniversary LIVE 「BUCK-TICK 2022“THE PARADE”〜35th anniversary〜」SPOT

ーーBUCK-TICKを最初に知ったのはTV番組だったとか。

綾小路:CMが先だったか、NHKの『ジャストポップアップ』が先だったか定かではないんですけど、小学校6年ぐらいだったかな、リアルタイムで観たのは「JUST ONE MORE KISS」が最初だと思うんです。その後、今井(寿)さんが復帰して『惡の華』(1990年)が出た時の衝撃も覚えてるけど、一番最初はやはりビジュアルに度肝を抜かれました。

ーーやはり、あのヘアスタイルは衝撃でしたか。

綾小路:最初はヘヴィメタルバンドだと決めつけていて。ヘヴィメタル自体をまったく知らないのに。というのは、その頃『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ系)で「燃えろ!ヘヴィメタ」っていうシリーズがあったので、派手なファッションで長髪を逆立ててメイクしているロックの人はヘヴィメタルだって思い込んでいたんです。それでヘヴィメタル好きな従兄に「BUCK-TICKはどうなの?」って聞いたら、「彼らはヘヴィメタルじゃないよ」って言われて、「えええ! あんなに尖っているのにヘヴィメタルじゃないの!? じゃあ何なの!?」って。無知って恐ろしい(笑)。

ーーその誤解が「惡の華」で修正されるんですね。

綾小路:たぶん中学1年で『惡の華』、中学2年で『スピード』(1991年)が出た時かな。当時の僕ら中坊にとって最高に刺激的な作品でした。だって、今井さんの復帰一発目のタイトルが「惡の華」っていうのはあまりにも挑発的だなと思ったんですよ。そこから「スピード」ですからね。あと、あっちゃん(櫻井敦司)が髪の毛を下ろしたことも衝撃的だったんですよね。

BUCK-TICK「惡の華」
BUCK-TICK「スピード」

ーーフロントに立つ櫻井さんの変貌ぶりに驚いた?

綾小路:漫画家でいうと惣領冬実先生のタッチかな。僕も一応元祖2.5次元って言ってるんですけど、最初にあっちゃんを見た時は「マジで2次元が実体化した!」と思って(笑)。「HYPER LOVE」のMVなんて、あっちゃんがカメラ目線になるたびに「ギャーッ!」とか「ウッ!」とか言ってますからね、いまだに(笑)。ちなみに、当時『ロッキンf』の付録にバンドスコアがついていて、エレキギターを買って最初にコピーしようとチャレンジしたのも「惡の華」でした。結局難しくて全然弾けなかったけど。後に唯一コピーできた部分だけ引用したのが1stアルバムの2曲目(「甘い眩暈」)。イントロのベースラインとドラムパターンを丸々オマージュしております。この場を借りて、厚くお詫びとお礼を申し上げます。BUCK-TICKに限らず、そういう体験から作られた曲、ウチいっぱいありますね。学生時代に先輩から「コピーしてこい」って言われて、うまく弾けなくて、間違えて覚えた癖のまま作った曲とか。ちなみに初めて最後までしっかりコピーできたのはTHE BLUE HEARTSの「情熱の薔薇」でした……って、だいぶ話がとっ散らかりましたね(笑)。とにかく「惡の華」は衝撃的だった。

氣志團「甘い眩暈」

ーーそこからハマっていくんですね。

綾小路:「惡の華」と同時に、(インディーズ初作の)『HURRY UP MODE』が再発になって、「こんな曲もあるんだ!」みたいな。そこから遡って、メジャー1stアルバム(『SEXUAL×××××!』)、2ndアルバム(『SEVENTH HEAVEN』)、3rdアルバム(『TABOO』)と買っていったんですけど、より加速したのが、中学生の時にお付き合いしていたガールフレンドがめちゃくちゃ今井寿ファンだったからで。なのに彼女の家にあるギターはヒデ(星野英彦)モデルっていう(笑)。

ーー(笑)。

綾小路:彼女は不良で、口紅とか塗って登校するもので、先生に怒られてビンタされたりするんだけど、終始無言を貫いたまま帰宅しちゃうようなクールな子だったんです。どうにかそんな彼女の気を引けないものかと思って。当時、僕は楽器やレコード欲しさとライブ見たさで、中1から新聞配達、たまに運送屋でバイト、時期によっては潮干狩り場にアサリを撒いたりとかしていて、何しろ勤労中学生だったもので、多少お小遣いを持っていたんですよね。そこで思いついたのが、当時貴重盤として15000円のプレミアム価格がついていた『TO-SEARCH』(インディーズでの1stシングル)をゲットすること。これは誰も持っていませんでしたから。無事手に入れて、翌日から常に自分の机の上に置いておいたんです、これ見よがしに。そしたらある日、ついに彼女が「これって……」と話しかけてくれて。「貸すよ」って言ったら、家にレコードを聴けるプレーヤーがないって言うんで「じゃあダビングするよ」っていう話になり、BUCK-TICK以外にも自分のフェイバリットナンバーを集めたコンピレーションテープを作ったんです。『TO-SEARCH』のジャケットのコピーに加えて、手書きのライナーノーツまで挟み込んでね。どんな反応をしてくれるかなとワクワクしていたら「BUCK-TICKだけでよかったんだけど」って言われましたね。いやー、超塩対応だった(笑)。だけどこれをきっかけに交際に発展しました。結局、中学校を卒業してしばらくしてからお別れしてしまい、その後の消息はまったく知らないんですけど、氣志團でBUCK-TICKのトリビュートアルバムに参加させてもらった時に、「きっとどこかで聴いてくれてるよね」って空を見上げたことだけは忘れないです。

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