れん、比喩に惹かれた3曲 RADWIMPS、aiko、Official髭男dism……改めて感じた歌詞表現の奥深さ

れん、心に残る3曲の歌詞

インタビュー連載『あの歌詞が忘れられない』第8回:れん

 アーティストの心に残っている歌詞を聞いていくインタビュー連載『あの歌詞が忘れられない』。本連載では選曲してもらった楽曲の歌詞の魅力を紐解きながら、アーティストの新たな一面を探っていく。第8回には、今年20歳になったばかりのシンガーソングライター・れんが登場。「うるうびと」(RADWIMPS)、「花火」(aiko)、「115万キロのフィルム」(Official髭男dism)の3曲を挙げた理由とは? また、彼の音楽ルーツや歌詞を考える上で心がけていることなどについても聞いた。(編集部)【インタビュー最後に読者プレゼントあり】

れんが挙げた3曲に共通する巧みな比喩表現

――まずはれんさん自身のルーツについて聞かせてください。音楽を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

れん:ずっとサッカーをやっていたんですけど、高2のときにコロナで部活も学校も休みになってしまって、サッカーができなくなったんです。その期間にずっとやってみたかったギターを始めたのがきっかけでした。

――そこから楽曲を制作するようになるまで、あまり時間はかからなかったのですか?

れん:ギターを始めて1年かからないくらいで曲を作り始めたと思います。最初SNSではカバー曲ばかりあげていたんですけど、活動を本格化するにあたって誰かに曲を書いてもらうのもいいけど、自分で書いた方が歌に説得力が出ると思うというアドバイスをいただいたこともあって、自分で初めて作った曲が1stシングルの「嫌いになれない」でした。当時高2くらいだったんですけど、先輩が浮気された話を電話越しに聞いて、本当に失礼ですけど「これ歌詞にできるな」と(笑)。「最悪だ」とか「最低だ」みたいなことを言ってるけど、結局相手のことを嫌いになれないんだなって思いながら作ったのが「嫌いになれない」でした。

れん - 嫌いになれない (Music Video)

――曲を作ろうと思ってすぐに作ることができたのは、それまでに曲作りにつながるような経験があったからなのでしょうか。

れん:いえ、最初は本当に未経験でした。でも直接関係があるかは分からないですけど、小さい頃からとにかくよく歌っていましたね。おばあちゃんの家にカラオケがあったので、正月に親戚で集まったときとか、カラオケ大会をしていて。僕の知らない世代の曲が多かったので、童謡や民謡を歌ったり「LA・LA・LA LOVE SONG」(久保田利伸 with ナオミキャンベル)などを歌ったりしてました。それから中学生のときに「Wherever you are」を聴いて、ONE OK ROCKにハマって。初めてライブに行ったのはONE OK ROCKでしたね。Takaさんはボーカリストとしても憧れの存在です。

――小さい頃から長く歌い継がれてきたJ-POPの名曲に意識せずとも触れてきたことが、今の音楽活動の土台になっているのかもしれないですね。

れん:そうかもしれないです。あとは音楽の土台ではないですが、サッカーをやっていたときは関東のJリーグのジュニアユースに入っていたんですけど、高いレベルの環境に身を置いた経験も今に活かされているかもしれません。中途半端なのが嫌というか、サッカーだけでなく音楽に対しても「絶対やってやる」という気持ちが自然と出てきたのは、僕の良さなのかなと思います。

――今回選んでいただいた曲について聞かせてください。まずは「うるうびと」(RADWIMPS)はどのように出会った曲なんですか?

れん:映画『余命10年』の主題歌で、公開されたときに観て「めっちゃいい曲だな」と思って。家に帰ってから即カバーしました。

――歌詞のどんなところに惹かれたんですか?

れん:映画と曲がリンクしているところですかね。歌詞に映画のストーリーの欠片が散りばめられているんですけど、全部は言わないという言い回しが良くて。特に〈今や人類はこの地球を 飛び出し火星を目指す/なのに僕は20センチ先の 君の方が遠い〉という歌詞が気に入っています。火星と地球の距離と、僕と君との距離って明らかに地球と火星の方が遠いのに、僕と君の方が遠く感じるっていう。映画を観るとより沁みるんですよ。泣きましたね。〈全人類から10分ずつだけ寿命をもらい/君の中どうにか 埋め込めやしないのかい〉とか、〈それか僕の残りの 命を二等分して/かたっぽをあなたに 渡せやしないのかい〉もすごい歌詞ですよね。命をなくすことの重大さを表すような歌詞で。比喩が素敵だなと思います。

RADWIMPS - うるうびと [Official Music Video]

――2曲目に選んでいただいた「花火」(aiko)も比喩が特徴的な楽曲ですよね。

れん:「花火」は俺が何かを喋るのが申し訳ないくらいすごい曲ですよね。〈三角の耳した羽ある天使〉って夏の大三角形のことなんですかね? 分からないですけど、自分はそんな気がしていて。サビの〈夏の星座にぶら下がって 上から花火を見下ろして〉っていう表現もヤバい。普通花火って下から見るじゃないですか。それを夏の星座にぶら下がって見るっていうユーモアとか、上から見ているから〈涙を落として火を消した〉とか。恋愛の歌詞だと思うんですけど、それだけではない情景の描き方がすごいと思いました。

――ちなみに「花火」はどんなときに出会った曲か覚えていますか?

れん:有名な曲ですし、いろんなところで自然に聴いていたと思います。自分で作詞作曲をするようになって改めて歌詞を聴いたときに、すごく面白い歌詞だなと。ずっとなんとなく聴いていた音楽も、ちゃんと歌詞を見て聴くことでこんなにいろいろな解釈ができるんだということに気づいたきっかけの曲でもあります。

――歌詞に注目して音楽を聴くようになったのは、ご自身で曲を作るようになってからだったんですか?

れん:そうですね。前まではメロディ重視で、気持ちのいいメロディラインの曲を多く聴いていたので。でも今はいろんな曲に触れるようになりました。歌詞の解釈も人それぞれ違うのが面白いです。

aiko- 『花火』music video

――3曲目に選んでいただいたのは「115万キロのフィルム」(Official髭男dism)です。

れん:「115万キロのフィルム」って、80年分くらいらしいんですよ。だから人の一生と同じくらいということから人の人生を表しているのが面白いです。あとは歌詞の全編に渡って「115万キロのフィルム」というタイトルに合ったワードチョイスがされているところもいいですよね。子供のことを〈キャスト〉と言ったり、〈エンドロール〉、〈クランクアップ〉とか。なのに分かりづらさは全くなく、情景が浮かぶのがすごいなと思います。あとはAメロのはじめで〈これから歌う曲の内容は僕の頭の中のこと〉と言っていることで、この後の歌詞がちゃんと頭に入ってくるようになると思っていて。そういう歌詞の順序立ても勉強になります。

Official髭男dism - 115万キロのフィルム[Official Audio]

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