『【推しの子】』『ぼっち・ざ・ろっく!』……音楽を扱ったアニメのヒット続く 成功の鍵は作品の“骨太さ”

 アニメ『【推しの子】』が話題を呼んでいる。『次にくるマンガ大賞 2021』で1位を獲得したスリリングな原作に加えて動画工房謹製の美麗な作画、実力派キャスト、YOASOBIと女王蜂を主題歌に据えた完璧な布陣は見事に視聴者の心を掴んで大ヒット。アニメの放送は終了したが第二期も発表されており、原作も絶好調。物語の行方にも主題歌「アイドル」および「メフィスト」にも注目が集まっている。

 『けいおん!』の初放送から14年、水樹奈々による声優初の東京ドーム公演からも12年が経ち、今や日本映画歴代興収ランキングベスト10のうち7作品はアニメ。アニソンは“オタクの音楽”ではなくなり、TikTokでは老若男女がYOASOBIによる『【推しの子】』OP主題歌「アイドル」で踊っている。流行りものにノるという意味ではタピオカを飲むのと「アイドル」で踊るのは同じことなのかもしれない。

 この近況を傍観している20代後半の筆者は、2006~2012年頃の深夜アニメ黄金期と共に青春を過ごした世代。周囲には『けいおん!』を見てギターを始め、挫折して寂しい青春を過ごしたヤツが何人もいる。

 そんな筆者がアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』に抱いた率直な感想は「ついに来たか」だった。同作の主体はリアルなライブハウスの日常。チケットノルマやライブハウスの法的扱いにまつわる描写で「おや?」と思った業界人も多いことだろう。主人公・後藤ひとりのギタースキルについても才能で片づけず、毎日6時間×3年という努力が示されているのが良い。それは極度のコミュ障の彼女が仲間を得たことへの説得力にもつながっていく。

 このあたりの作劇は『けいおん!』でバンドに憧れながら音楽活動の現実を知ったオタクにも深く刺さる。『ぼっち・ざ・ろっく!』は女子高生の日常が主軸である『けいおん!』との差別化が意識された作品だが、それは結果として社会現象としての『けいおん!』を経験した世界に上手く噛み合ったのではないかと思う。

 ここ数年、音楽を扱ったアニメは1期に数作程度見られる。『アイドルマスター』『ラブライブ!』『うたの☆プリンスさまっ♪』等数々のヒットを連発するアイドル系シリーズや、『響け!ユーフォニアム』『青のオーケストラ』等のクラシック系、『パリピ孔明』といった変わり種。『ウマ娘』だって音楽系といえば音楽系だ。

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