PEDRO、新体制となって1年半ぶりに帰還 再会の高揚感が溢れた一夜限りのシークレットライブ

 PEDROが帰ってきた。彼女たちと過ごす新しい生活がまた始まる。

 “楽器を持たないパンクバンド”BiSHが東京ドームの大舞台で約8年間の活動に終止符を打った翌日。無期限活動休止中だった、元BiSHのアユニ・D率いるロックバンド PEDROが、始まりの場所である新代田FEVERでのシークレットライブで再始動を果たした。

 幸運にもこのシークレットライブに立ち会うことができたのは、2021年12月22日に横浜アリーナで開催されたPEDRO活動休止前のラストライブ『さすらひ』のファンクラブ限定チケット購入者の面々。『さすらひ』の結びとして届けた楽曲「雪の街」で、真っ白なスモークに溶け込むようにバンドが去ってからも、PEDROが遺した音楽は、きっと彼らの生活の中で鳴り続けていたはず。ファンとPEDROの間の時は止まっていなくて、音楽がその絆を保ち続けていたのだと思う。活動休止から約1年半が経ったこの日、彼らとPEDROが再会を果たしたわけだ。

 この日のステージのドラムセットに座ったのは、アユニ・Dにとって思い入れの強いバンド・ヒトリエのゆーまおだった。そう、アユニ・D、田渕ひさ子、ゆーまおの3人からなる新生PEDROが始動したのである。

 「おかえり!」の歓声に迎えられたバンドは、お馴染みの「よろしくどうぞ」(アユニ・D)の声と共に1年半ぶりのライブをスタート。その1曲目は、活動休止への想いを綴った楽曲「さすらひ」だった。PEDROとしては久しぶりのライブということで、少なからずプレッシャーもあっただろうが、それよりもナチュラルな笑顔で歌うアユニ・Dの姿が印象的だ。アユニ・Dの唯一無二の歌声、田渕ひさ子の鋭角なギターサウンド、身体にずしんと響くゆーまおのドラム。3人が生み出す新たなグルーヴに身を委ねるフロアの様子は、まさにロックバンドのライブそのもの。PEDROはもはや元BiSHのメンバーがやっているバンドでもなければ、サイドプロジェクトでもない。そこには純粋なロックバンドの姿があった。ライブハウスの匂いに包まれながら聴くPEDROの音楽、そこには当然懐かしさもあるのだが、同時に新体制による新鮮さもしっかりと感じ取れたこともポイントだった。

 「さすらひ」のパフォーマンスを終え、アユニ・Dは「お待たせしました。ただいま。待っててくれて本当にありがとうございます」と、シンプルな言葉だからこそ伝わるまっすぐな感謝の想いを届ける。さらに、活休前ラストアルバム『後日改めて伺います』を新体制で再レコーディングした活動再開第1弾アルバム『後日改めて伺いました』をリリースしたこと(この2作品のジャケット写真のストーリー性にはグッと来るものがある)、同作を携えて『PEDRO TOUR 2023「後日改めて伺いました」』を開催することを発表すると、会場に大きな歓声が上がった。

 続いて「浪漫」からライブが再開し、「自律神経出張中」に繋げてから新曲「手紙」のパフォーマンスへ。オルタナ調で『後日改めて伺います』――もとい『後日改めて伺いました』の地続きにあるようなPEDROらしい音楽を聴いていると、バンドが活休中も水面下で準備を続け、前に進み続けていたことが伝わってきて嬉しくなる。その後も『後日改めて伺いました』の収録曲を中心にしたセットリストで本編は進行していくのだが、アユニ・Dが紡ぎ出す言葉の数々は、聴き手の日常に優しく寄り添うものばかりだからこそ、活休期間に送ってきた日々のふとした瞬間がライブ中にフラッシュバックすることがたびたびあった。PEDROの音楽は、それだけ聴く者の心に深く刻み込まれているのだ。

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