WENDY、世界へ羽ばたく新時代のロックンロール 運命的な出会いからアルバムデビューに至るまでのストーリーを語る
2020年10月に結成し、半年後には初ライブを開催。そして2022年5月に1stデジタルシングル「Rock n Roll Is Back」をリリースし、その夏には『SUMMER SONIC 2022』に初出演して熱量の高いパフォーマンスを見せ喝采を浴び――と勢いを増している4ピースバンド WENDY。そのサウンドには、70年代、80年代のロックやハードロックの影響を色濃く感じる「これぞ!」というギターリフやキャッチーなメロディ、どっしりとしたビートがあり、またはそこから遡ったブルースなどの渋み、憂いをも感じさせるもので、これを奏でているのがまだ18歳〜20歳の若いバンドだというから驚く。その出会いを聞くと、漫画かドラマかと突っ込みたくなるドラマティックなもので、そんな成り立ちも含めて痛快なロックンロールストーリーを紡ぎ上げてくれそうなバンドである。
今年になってリリースした4thデジタルシングル「Pretty in pink」では、ジョン・バティステ『We Are』で『第64回グラミー賞』の年間最優秀アルバム賞を受賞したサウンドプロデューサー&エンジニアのマーク・ウィットモアとのタッグで、さらにバンドの個性に磨きをかけた。最新作となる5thデジタルシングル「Runaway」(6月21日リリース)も同様にマークが手がけ、様々な感情を乗っけて走り出していく青春映画のような、甘美さと、泣き叫ぶような開放感が貫く1曲となった。大きな会場でも映えるようなシンプルかつパワフルな曲で、「ロックンロールが帰ってきた!」とダイナミックに打ち鳴らすWENDYの名をさらに大きく轟かせてくれそうだ。今回はそんな4人がリアルサウンド初登場。始まりの物語から「Runaway」に至るまでを語ってもらった。(吉羽さおり)
バンド結成のきっかけは、ケンカを止めた“KISSのTシャツ”
――バイオグラフィによると、世田谷区の青少年センターで出会ったそうですね。
Skye McKenzie(以下、Skye):青少年センターで出会ったというのはいいふうに言ってるだけなんですけどね(笑)。JohnnyとPaulは、俺とSenaのひとつ下で、お互いに年の差もあって別グループにいたんです。Senaと俺は中1から一緒で、友達とグループで集まってて、夜にやんちゃしたりして。そのひとつ下にJohnnyとPaulのグループがいて、どうやら最近暴れ始めてるらしいと。そこで対立してとうとうケンカしそうだったんですけど。
――あまりいい出会いじゃなかったんですね(笑)。
Johnny Vincent(以下、Johnny):出会いはあまりね(笑)。
Skye:そのケンカになる前に、Johnnyが俺たちのグループに中学の先輩がいるから、先に話をつけるっていう感じで来たんです。その時Johnnyが、KISSのTシャツを着ていて。ケンカする相手に聞くのもアレだけど、俺が「KISS、好きなの?」って聞いたら「好きだよ」って。そこから仲良くなって、ケンカもなくなって2グループ一緒になったんですよね。それから、あるきっかけで「このエネルギーをみんなが好きな音楽に使おう」となって。それぞれ、ベースとかギターとかドラムをある程度かじっていたので。
Johnny:やってる楽器もちょうど4人でバラバラだったから。
Skye:じゃあバンドをやるかってなった時に、みんな独学で楽器をしっかり始めたんです。
――KISSのTシャツが窮地を救ってくれたわけですね。
Johnny:買っておいてよかったです(笑)。中3の時に東京ドームでのKISSのライブにひとりで行って、買ったTシャツでした。
――そのKISSにしてもそうですけど、WENDYの音楽を聴いてルーツに感じるのは70年代、80年代のロック、ハードロックが色濃いですよね。それぞれどういう感じで音楽と触れ合っていたんですか。
Skye:俺はダンスをやっていたので、マイケル・ジャクソンとかプリンスを最初は聴いていて、そこから洋楽ロックも好きになって、親の影響でJourneyあたりをよく聴いていました。他にも70年代、80年代の洋楽ロックから今の洋楽まで聴くんですけど、メンバーそれぞれバラバラで。JohnnyはThe Velvet UndergroundとかThe Rolling Stones、あとはアート性の高いバンドも好きで。PaulはLed Zeppelinとかだよね。
Paul:ブルースとかジャズも好きです。
Skye:Senaはどちらかというと今の洋楽寄りですけど、みんなと出会ってから80年代のものも聴いたりしていて。
Johnny:ロックという枠組みの中ではみんなまとまっているよね。
――Paulさんはどういう入り口でブルースやジャズに触れているんですか。
Paul:もともと音楽の入り口はThe BeatlesとかThe Venturesだったんですけど、ロックのルーツを辿っていくうちに、必然的にブルースやジャズに触れて、好きになりました。ギターを習う時、自分の師匠がブルース好きだったこともあって、教えてもらいました。ブルースって暗い曲調も多かったりしますけど、心が落ち込んでいる時やつらい時でもブルースを聴いていると元気になれるし、逆に慰める役割であり、寄り添ってくれる存在かなって思います。
――Senaさんはどういう音楽が自分の真ん中にありますか。
Sena:80年代のロックが痺れますね。Mötley CrüeとかGuns N' Rosesとか、Red Hot Chili Peppersとかも聴いたりしていて。最近の洋楽よりも80年代の方が、自分ではいいなって思っています。ライブの時もそれをイメージしてやっているんですけど、トミー・リー(Mötley Crüe)の360度ぐるぐる回る、あの回転ドラムは特にやってみたいですね。
スパルタ練習を積み、結成半年で初ライブへ
――共通するルーツも多いみなさんですが、WENDYとしてどういう曲をやっていくのかは、初期段階からはっきりしていたんですか。
Skye:80年代っぽいことをやろうって思っていたわけでなく、集まったら自然とこういう音楽になったんです。常に進化していかなきゃいけないので、昔の音楽へのリスペクトやルーツを残したまま、今の人たちにも聴きやすいものにしようというのは意識しています。
――結成前から、それぞれ曲を作ったりもしていたんですか。
Skye:俺はギターの弾き語りみたいな感じでやろうかなと思って、曲を書いてはいて。みんなに出会った時も、自分の曲を聴いてもらっていたんです。バンドを組んで初めての練習は、ブライアン・アダムス「Summer Of ‘69」のカバーをやったんですけど、それも1、2回で終わって、「俺、オリジナル曲あるんだけど」って言ってみんなでやったんです。
実はバンドを始める前、俺の家族がとあるドキュメンタリー取材のオファーを受けたことがあって。親が離婚していてお父さんと二人暮らしをしているんですけど、その生活をドキュメンタリーで撮るという話になったんです。そこで俺が音楽をやっていることを番組のプロデューサーさんや監督さんが知ったことから、「テーマ曲をお願いしたい」と言われて、16歳の時に初めてレコーディングをやりました。その曲も、出会った時みんなに聴かせたら、気に入ってくれて。
Johnny:びっくりしましたね。
Paul:完全にプロの人がやってる曲かと思った。
Skye:JohnnyもPaulも気に入ってくれたから仲良くなれたし、その曲があったから、バンドの初期段階から業界の人たちが協力してくれることも多かったので。リリース未定ですけど、一番心に近い曲ですね。自然にその時の気持ちを書いたもので。
――結成から半年ほどで初ライブに臨んでいますが、そこまでにどれくらい曲を蓄えたんですか。
Skye:6曲くらいは頑張って作りましたね。初ライブをする前にデモレコーディングをやろうとなったんですけど、みんなまだ下手だったし、Johnnyとかは最初コードもわからない感じだったので。
Johnny:何もわからなかった(笑)。
Skye:俺もコードを4つくらいしか知らないし、Senaもドラムを始めて数カ月というところで。Paulも昔からギターをやっていたけど、サボってた時期もあって。だから結成して最初の3カ月くらいはスパルタ教育みたいな感じでした。
Johnny:10代だけどみんな学校に行ってなかったので、時間は腐るほどあったんです。週7でスタジオに入ってました。
Skye:プロデューサーの浅田信一さんが最初にWENDYに興味を持っていただいて、「特訓だ!」って言って3カ月間鍛えてくださり、一緒にその6曲だけを毎日スタジオでやるっていう。映画の『ロックンロール・ハイスクール』みたいな状態でした。楽しかったですけどね。追い込まれる大切さとか必死さもそこで体感したので。
――晴れて迎えた初ライブでの感触は覚えていますか。
Skye:まだ下手くそだったけど、ライブとしてはいい感じで。俺も緊張するので人前で歌うのは好きじゃなかったんですけど、この4人でやっていたら安心して堂々とできたのは大きかったですね。
――Skyeさんの声、特徴的ですよね。初めて聴いた時には、10代のバンドがやっているとは思えない感じがあって。先ほどブライアン・アダムスの名前が出ましたが、そういう独自の雰囲気を放ってるというか。ボーカルとして参考にしていた人はいるんですか。
Skye:参考にしてたスタイルはあるんですけど、ボイトレをやっているわけでもなく、ずっと歌を歌ってただけなんです。最初はどうしても聴いている音楽の真似をしようとしていたんですけど、自分の曲を作っていくと、自分なりの歌い方がだんだん見つかってきて。自分で言うのもアレですけど、他にいないような声をしてると思うから。昔のロックのような唸りがありつつも、今のポップスの優しいメロディを歌うっていうコントラストはしっかりしようと思っていますね。