WENDY、世界へ羽ばたく新時代のロックンロール 運命的な出会いからアルバムデビューに至るまでのストーリーを語る
「マーク・ウィットモアが気持ちをどう音楽に表すかを教えてくれた」
――2022年5月、WENDYとしての第1弾リリースが「Rock n Roll Is Back」という、まさにこのバンドそのものの姿を高らかに宣言した曲でした。第1弾として、この曲だっていう確信はあったんですか。
Skye:迷ってはいましたね。2曲目に出した「Devil’s Kiss」が最初にみんなでイチから作った曲だったので。けど、まあ最初は大きく行こう、“Rock n Roll Is Back”という大きなメッセージを背負ってやろうということになって。選んで正解だったなと思います。
――「Rock n Roll Is Back」ではどんなことを重視しましたか。
Skye:Queenの「We Will Rock You」みたいなドラムとボーカルだけのイントロで、何かが起こる感じがあるっていうか。〈Rock 'n roll is back!〉って言った後に竿(ギターとベース)がどーんと入ってくるという、このストーリー性を重視した曲でしたね。その中で今っぽさを加えたのは、ヒップホップのビートを感じられるドラムや、ラップっぽいAメロからみんなで歌えるサビへの流れです。ロックだけど、それぞれいろんなものに影響を受けている4人なので。ギターソロも、ブルージーでシンプルになってるよね。
Paul:……今、ちょっと変えたいなっていうところはあるんだけどね(笑)。
Skye:もう遅い(笑)。でも、そういうのが好きっていう人もいるからね。俺の叔父さんは「Rock n Roll Is Back」のソロが好きでライブで聴くのを楽しみにしていたのに、ライブで変わってたっていう。
――どんどん曲が短くなったり、ギターソロがカットされたりする時代だからこそ、ソロパートの存在感やバンドが肝としているアンサンブルの醍醐味が伝わります。Paulさんは、ギターソロを作るのは好きですか。
Paul:そうですね。でも頭で考えようというよりは、自分の体で覚えているというか……体で考える感じです。
――その場のフィーリングで曲に乗る感じですね。
Paul:ライブでもそうなんです。その時その時で弾きたいことを弾くっていう感じで。
――Senaさんはいかがですか?
Sena:俺も感覚派なので、「ここでこうしよう」とかよりも、曲に合ったものを出す感じというか。
Skye:基本的にみんなそうですね。
Johnny:その瞬間のベストを選ぶっていう。
――そして今年に入って出したシングル「Pretty in pink」はマーク・ウィットモアとのレコーディングです。レコーディング現場はどんな感じでしたか。
Skye:まずデモを送って、その中からマークがいいと思った曲をやっていったんですけど。レコーディング当日に、ここはこう変えようかとかお互いに意見を出し合いながらやっていって。
Johnny:その場で変えて、チャレンジしてみることが多かったですね。
――この曲あたりから意識がより変わっている感じがしますよね。曲の組み立て方やバンドサウンドも、キャッチーなだけでない、個性や得意技を出している曲になってるのがいいなって思います。
Paul:そういうのもまさにフィーリングですね。
Skye:例えば、レコーディングする時も気持ちが入るように、曲に合わせて照明を変えたりとか。ちゃんと気持ちが入るまではやらないというのもあったりします。
Johnny:録る前に、著名なアーティストのちょっと雰囲気が似た曲をミキシングルームのでっかいスピーカーで何曲か流して。それをみんなで共有して聴いてから、レコーディングに臨むというのもあったよね。そうやってテンションを上げていくのは、いいやり方だなって思いました。
Skye:あとは、みんな同じ部屋で一斉にレコーディングする方法だったんです。
Johnny:俺はこの一斉に録るやり方でしかやっていないんですけど、それぞれの楽器でバラバラに録ることの方が多いと聞いて、「それで録れるの?」って思ったんです。絶対に一斉にやったほうがいいだろうって。
――リズム隊は特に、その方がノリやグルーヴを感じられそうですね。
Skye:みんな同じ部屋でライブみたいに一発録りでやる。それでミスったら、後から手直しするんじゃなくて、また最初からみんなでやるっていうね。だからたまにイラつく時はあります。誰かがミスると、「あー間違えた!」って(笑)。
Sena:だいたい俺が怒られるんですよ、ドラムがミスったら終わりなので(笑)。
Skye:でも、円になってみんなの顔が見えるから、ノリもすごく良かったんですよね。ドラムはクリックも聞くんですけど、俺らはクリックを聞かずに雰囲気でやったりとか。
Johnny:ヘッドフォンを外してやることも多かったね。
Skye:止めるところはパンっと止められたり、ソロも自分の気分次第で出す音が変わるので、その時にみんなで笑ってやっていたら、Paulがテンションが上がってわーっとやっちゃうとか。俺も1回レコーディングしてる時に気分が上がって思いっきり外しちゃったりすることもあったけど、そういう精神状態でレコーディングに臨む楽しさは学びましたね。
――それがWENDYにとって一番映える形だったと。
Skye:そうですね。だからスマホとかで聴いても、生々しさが伝わると思うんです。ライブに行ってる感覚というか。いい意味で、全部が完璧じゃない。AIにはできないような人間らしさが出てると思います。
Johnny:若干のかすれがあったりとかね。
Paul:シンバルの揺れとかね。音楽って気持ちの表れだと思っていますし。マークと一緒にできたことにも感謝ですけど、マークが気持ち作りの面でも俺らの手助けをしてくれて。自分の気持ちをどう音楽に表すかを教えてくれました。心ができ上がってないと何も出てこないから。