Cö shu Nie、多面的な表現スタイルでバンドシーンに残す爪痕 「no future」は中毒性と破壊力に溢れた新曲に

〈何もしたくない 何も意味ない/仕事いきたくない/何もしたくない 何も意味ない/家から出たくない〉

 共感必至のこのフレーズは、Cö shu Nieが6月28日に配信リリースした新曲「no future」で歌われているものだ。曲を聴いていない時にも思わず「何もしたくない~」と口ずさんでしまいそうになるほど、メロディにも、ボーカルの声色や節回しにも中毒性がある。

 Cö shu Nieが新曲を発表するのは、2022年9月にリリースされたデジタルシングル「夢をみせて」以来9カ月ぶり。「この曲にはどんな想いが込められているんですか?」という質問をメンバーに投げかけるまでもなく、「no future」では、とにかく面倒なことはしたくないという気持ちがダイレクトに表現されている。

 ソファにだらっと寄りかかりながら身を溶かしたくなる音像。ヒップホップ調のリズムワークが心地よく、あえて脱力気味で発せられる中村未来(Vo/Gt/Key/Programming)の歌声、粘り気のある節回しも浮遊感を誘う。チルと呼ぶには退廃的に感じられるのは、グランジ/オルタナ系の荒い音作りのギターによるところが大きいだろう。ノイズとして存在するギターや、LとRをゆったりと行き来するサウンドの振り分けが目の回るような心地を誘発するなか、1番、2番が終わったあとのDメロ以降、バンドの演奏に徐々に動きが生まれる。そして〈ちょっとくらい報われていいんじゃない?〉というフレーズをきっかけに、激しく複雑なオルタナサウンドへと一気に変化する。

Cö shu Nie – no future(official video)

 中村の歌に対する意識は日々明瞭になっていて、ステージ上での存在感も増していくばかりだが、今作におけるボーカルは周りのサウンドに溶け込んでいて、あくまで一つの“楽器”として機能している――と曲の前半を聴き終えた時点では思っていた。しかしそれは誤解だったと後半に入ってから気づかされる。心の声の氾濫と言うべき多層的なコーラスをバックに、〈上手に泣けない〉、〈平穏が欲しい〉、〈空が燃え尽きるのが見たい〉と言葉を重ねることで怠惰の中に潜む欲望を一つひとつ曝す終盤部は、リスナーの感情をもかき乱すほどの破壊力だ。そして最後には〈何もしたくない 何も意味ない〉というフレーズに回帰。曲が終わる頃には、ざわざわとした心で余韻を感じながら、脳内であのフレーズをリフレインさせている自分がいた。

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