BiSHはライブに生き、ライブに散った 結成から東京ドーム解散公演まで貫かれたパンクな生き様
激しいアンコールに応えて、BiSHは白い衣装で登場。そして「オーケストラ」が始まった。「プロミスザスター」と並ぶBiSHの代表曲だ。普遍的な別れの歌にして、〈こんなにも流してた涙も/語る声も オーケストラ〉と、内面の苦悩を描く詩的な飛躍をする表現が現われる。6人ともコンディションの良い歌声で聴かせてくれたことが素直に嬉しかった。
そしてMCでは、BiSHの6人がそれぞれの心中を語りだした。東京ドーム内部の反響で聴きとれない部分もあったので、大意を記録する。
アユニ・D「実は解散が決まってからうまく寝れない夜は、あなた方、清掃員からの手紙とか、この時代ならではのメッセージとかをたくさん読み返してました。私が日々朝を迎えられているのは、あなたたちのおかげです。本当にありがとうございます。必死にがむしゃらに変わらず生きます。この8年間の日々を、おばあちゃんになってもたくさん思い出して、ギュッと強く強く抱きしめて、何ひとつこぼさないように生きていきます。出会ってくれて、見つけてくれて本当にありがとうございました」
リンリン「正直、始まる前、直前まで実感がわかなくて。でも、18時が近づくにつれて、脚がゾワゾワゾワゾワしてきて、猛獣のように『よっしゃー』ってセトリを倒して倒して、今ここまで来て、やっと心も落ち着いて、ここが東京ドームだとすごい感じています。私の人生にBiSHがいて、本当に良かったなと思います。今日でBiSHのリンリンは清掃員さんとお別れなので、最後に右手を挙げて、私と握手しましょう。8年間ありがとうございました! Thank you! See you!」
ハシヤスメ・アツコ「こんなにワクワクして、こんなにも寂しい気持ちの6月29日は初めてです。ずっとライブをしてきて、そして今日もライブをして。すごい東京ドームは広いし、清掃員と作る時間はめちゃくちゃ楽しいから、この時間がまだまだ続くような気がするんだけど、アンコールまで来てしまいました。すごく寂しいです。BiSHは今までいろんな壁を壊してきました。今日この東京ドームは、BiSH史上最大の夢であり、BiSH史上最大の壁を壊した伝説の日になったと私は思います。その壁を一緒に壊してくれて感謝しています。清掃員、BiSHチーム、ありがとうございました。今日入れない人もいるっていうのもわかっております。それだけBiSHはたくさんの人に愛された8年間だったなと思います。BiSHを愛してくれて、応援してくれてありがとうございました。そして、BiSHのハシヤスメ・アツコを応援してくれてありがとうございました!」
モモコグミカンパニー「最後まで走り回って、汗まみれで、ドロドロで、心臓バクバクで、でもこれが『生きる』ってことなんだなと、私はBiSHに教わりました。私がかっこ悪くても、弱くても、それでも強がってBiSHのモモコグミカンパニーとしてステージに立てたのは、あなたのおかげでした。ありがとうございます。あなたに会えたことは、私の人生の生涯の誇りです。東京ドームにみんなで立てました。ありがとうございました!」
アイナ・ジ・エンド「清掃員、8年間いっぱい応援してくれて本当にありがとう。私、こんなに幸せな8年を送れるとは、BiSHになったときは思っていませんでした。誕生日も『これでもか』って思うほどお祝いしてくれたり、幸せの前借りをしたのかなと思うほどです。私にとってBiSHのライブ、それからBiSHに振り付けをすることは、生きがい中の生きがいでした。いつも振り付けを考えるときは、おうちの中のベッド、シャワー、みんなで移動したハイエースの中です。ちっぽけな世界で『清掃員が踊ってくれるかな?』って思ってると、いつも全力で踊ってくれました。ありがとう。清掃員も立派なBiSHメンバーです。80人キャパから始まったBiSH、今日は夢の東京ドームに立てました。誰が何と言おうとBiSHは最高です。8年間ありがとう、清掃員さんありがとう、愛してます」
セントチヒロ・チッチ「BiSHを始めたときからずっと思い描いてきた夢の日がやってきました。来てしまいました。人生をかけて愛したBiSHが今日バラバラになってしまうと思うと、何よりも何よりも寂しいです。私はいまだに解散したくないなあ、と思ってしまう自分と戦っています。だけど、この6人で生き抜いてきた日々に何ひとつ後悔はありません。東京ドームに胸を張ってバイバイしにきました。一生懸命みんなで駆け抜けた青春は、一生の宝です。アイナ、モモコ、アユニ、リンリン、ハシヤスメ、出会えて良かったです。セントチヒロ・チッチとしていさせてくれてありがとうございました。そしてBiSHを愛してくれて、本当にありがとうございました。最高に幸せな8年でした」
そこから歌われた「beautifulさ」の歌詞に励まされて、日常を乗り越えてきた清掃員も多いだろう。BiSHは、メンバーだけではなく、多くの人々ーーそれは「清掃員」ではなくてもーーにとっての「人生」でもあった。そして、バンドメンバー紹介から、 再び「BiSH-星が瞬く夜に-」へ。銀テープが噴射され、冒頭よりさらに大きなシンガロングが響いた。
大歓声にセントチヒロ・チッチが涙した。そして、「BiSHは生まれてきて良かったです、以上、私たちBiSHでした」と言い、6人で手をつなぎ、清掃員を静まらせてから、「バイバイ、We are BiSH!」という肉声を東京ドームに響かせた。
それでもアンコールの声は止まらない。ダブルアンコールでは、ステージ上に真っ白な木が一本あり、枝を広げていた。「Bye-Bye Show」では、落ちサビでファンが用意したピンクのサイリウムが焚かれた。さらに、会場には桜の花びらが舞い散った。
BiSHは湿っぽさは最小限にして、あまりにも潔く解散した。語弊はあるが、私はあまりにもちゃんとBiSHが解散したことに驚いたほどだ。2014年に横浜アリーナで解散した第1期BiSは、翌日に「元BiS」としてワンマンライブを開催して、ファンを唖然とさせたものだ。しかし、BiSHの解散ライブには気を衒ったところはなかった。だからこそ、ライブバンドの生き様を見届けたかのような感覚になったのだ。そんな心の揺れ動きの大きさゆえに、終演後の東京ドームが激しい雷雨に襲われたことにあさましくも物語を感じたとしても、この日だけは許される気がしたのだ。
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