ao、進化を重ねるグルーヴィな歌声 2000年代生まれの若き才能が台頭するJ-POPシーンでひと際輝くポテンシャル
2000年代生まれのミュージシャンたちが台頭している昨今のJ-POPシーン。古今東西のあらゆる音楽を超高性能なポップソングに仕上げてしまう2000年生まれのVaundyをはじめ、その活躍はますます見逃せないものになってきている。
「NIGHT DANCER」が韓国でも大バズりしTikTokの再生回数が20億回を超えた2000年生まれのimase、「Overdose」がストリーミング総再生2億回を突破しアジア圏を中心にブレイク中のなとり、メンバー4人が愛聴する楽曲が自然と昇華された、メロウなソウル/R&Bをベースにしたジャンルレスなバンドサウンドを鳴らす、2002年生まれのメンバーで結成されたchilldspot、EDM×オルタナティブロックを軽やかに行き来する21世紀生まれのWurtS……などがその好例だ。なかでも本稿で注目したいのは、高畑充希と田中圭が主演を務めたドラマ『unknown』(テレビ朝日系)の主題歌であり、4月18日にリリースされたRADWIMPSの新曲「KANASHIBARI feat.ao」にフィーチャーされているaoだ。
aoは2006年5月18日生まれ、17歳のシンガーソングライター。今回のフィーチャリングに対し、RADWIMPSの野田洋次郎は「この曲の2番を誰かに歌ってもらいたいと漠然と思っていた時、YouTubeで彼女の歌声を耳にし、引き込まれました。まだ高校生と聞いて驚きました。今しかないその声で、この曲を彩ってほしいと思いました」とコメントしている。
そんな野田から歌をバトンタッチされ、『unknown』のストーリーを深化させるような、愛し合ってはいるが、誰にも言えない秘密を抱えた夫婦の逡巡や葛藤や告白を、透明さと神聖さを宿した凛とした歌で彩っている。まず彼女は、野田の想いを真摯に受け取り、強い意志をしたためたような声色で、〈この日々だけは 何言われても 私が確かに 掴んだ光〉と歌った後、〈私の全部なんて知らないでいい あなたの全部で 私を見てて〉と想いをぶつける。これまでao自身が発表してきた楽曲では、現行のグローバルポップとシンクロするようなビートの強いサウンドを、繊細さとタフさが共存したグルーヴィな歌で巧みに乗りこなしている印象があった。だが、「KANASHIBARI feat. ao」での新たな歌唱アプローチは、ボーカリストとしてのaoの底知れないポテンシャルを示している。
aoは2021年9月、15歳の時に「Tag」でメジャーデビューし、2022年1月にはあいみょん、藤井風、Vaundyほか、数々の人気アーティストを輩出しているSpotifyの「RADAR: Early Noise 2022」に選出された。早耳の音楽リスナーを中心に支持を広げ、代表曲「you too」や、藤井風やiriの楽曲などで知られるYaffleがサウンドプロデュースを手掛けた東宝YouTube映画『チェンジ』の主題歌「チェンジ」をリリース。ここ最近は、新曲の「ENCORE」が東京・大阪・名古屋国際工科専門職大学のCMに起用されたり、ハーゲンダッツの新テレビCMでクロード・ドビュッシー「月の光」にオリジナルの歌詞を乗せたカバーソングを歌唱するなど、活動の幅を広げている。ライブでは、多彩な楽曲がまるで肉体と一体化しているかのように思えるほど、終始グルーヴィなボーカルパフォーマンスを展開するao。幅広い音楽リスナーが集まる都市型フェスティバル『SUMMER SONIC 2023』への出演も決まっており、さらなる飛躍が期待される。