Queens Of The Stone Age、Foo Fightersと共に“ロック低迷”のシーンに風穴を開ける? 快作『In Times New Roman...』を聴いて

 1990年代半ば、その後のUSロック/ハードロックシーンを長きにわたり牽引し続けるバンドが生まれた。ともにオルタナティヴロック界隈で名を馳せたメンバーがフロントに立ち、メインストリームとオルタナティヴシーンの架け橋となるような作品をいくつも生み出し続けることで、カリスマ的存在として現在までリスペクトされ続けている。

Queens of the Stone Age - In Times New Roman... Out Now!

 その2バンドこそジョシュ・ホーミ率いるQueens Of The Stone Age(以下、QOTSA)と、デイヴ・グロール率いるFoo Fightersだ。2組は奇しくも今月、ほぼ同じタイミングにニューアルバムをリリース。Foo Fightersは6月2日(海外。日本では6月14日)に11thアルバム『But Here We Are』を、QOTSAは6月16日に通算8作目のオリジナルアルバム『In Times New Roman...』をそれぞれ発表した。本国アメリカではこれまでに発表した7枚のアルバム中6作がBillboard 200(全米アルバムチャート)でTOP20入りを達成。特に前々作『...Like Clockwork』(2013年)は全米1位、「BEAT RECORDS BEST ALBUMS 2017」に選出され、第60回グラミー賞「最優秀ロック・アルバム」部門にノミネートした前作『Villains』(2017年)は全英1位、全米3位、オリコン洋楽チャート4位と、チャート面でも大きな実績を残している。

 デイヴのキャリアについてはここで説明するまでもないが、一方のジョシュに関してはそこまで深く認知しているロックリスナーも少ないのではないだろうか。ここではジョシュのキャリアを振り返りつつ、たびたび訪れるデイヴとの邂逅、そして最新アルバム『In Times New Roman...』の聴きどころを解説しながら、QOTSAという“今、日本でもっとも知られるべきロックアイコン”の魅力に触れていきたい。

 ジョシュの音楽キャリアは1980年代後半、Kyussというバンドのギタリストとしてスタートする。ストーナーロック/デザートロックというハードロックのサブジャンルに分類される彼らは、同時期に勃発するグランジとの共通点も多く、大きなヒットにこそ恵まれなかったがアルバムを重ねるごとにカルト的人気を博し、1993年にMetallicaのオーストラリアツアーでオープニングアクトを務める頃にはさらなるブレイクが期待されていた。

 しかし1996年、Kyussは4枚のオリジナルアルバムを残して解散してしまう。ジョシュはScreaming Treesのツアーでサポートメンバーを務めながら、新バンド結成を画策。そのバンドは幾多の編成を経てQOTSAと命名され、1998年9月にストーン・ゴッサード(Pearl Jam)が設立したレーベル“Loosegroove Records”からセルフタイトルの1stアルバムをリリースする。同作は当時日本盤が未発売(2011年の再発時に初日本盤化)だったこともあり、ここ日本ではあまり話題になることはなかった。そんな彼らの名前がようやく日本のロックリスナーにも浸透し始めるのが、続く2ndアルバム『Rated R』(2000年)と3rdアルバム『Songs For The Deaf』(2002年)でのことだった。

 『Rated R』からメジャーのInterscope Records(Universal Music傘下)に移籍したこともあり、同作は海外から3カ月遅れの2000年9月に国内盤リリース。Kyussから継承されるシンプルなストーナーロック的テイストにキャッチーなメロディが加わることで、「Feel Good Hit Of The Summer」や「The Lost Art Of Keeping A Secret」といったリードトラックが高く評価される。また、同作にはKyuss時代の盟友ニック・オリヴェリや、Screaming Treesのフロントマンでもあるマーク・ラネガン、Judas Priestの“メタルゴッド”ことロブ・ハルフォードなどが参加したこともあり、コアなロックファンのみならずハードロック/ヘヴィメタルファンからも注目を集めることとなった。そして、2002年8月発売の『Songs For The Deaf』には先のニックやマークに加え、ドラマーとしてデイヴ・グロールをフィーチャー。同作発売前の7月末に開催された『FUJI ROCK FESTIVAL '02』では、デイヴを含む編成で初来日も果たしており、シンプルながらも濃厚でダイナミックなハードロックナンバーが次々に繰り出された圧巻のステージは今でも筆者の記憶に強く残っている。

 その後もメンバーチェンジを繰り返しながら、『Lullabies To Paralyze』(2005年)、『Era Vulgaris』(2007年)と力作を連発する一方で、ジョシュはマーク・ラネガンのソロ作やジェイムズ・ラヴェルによるプロジェクトUnkle、Foo FightersやPrimal Screamのアルバムにボーカリストやギタリストとして客演したほか、Arctic Monkeysの3rdアルバム『Humbug』(2009年)やThe Hivesの5thアルバム『Lex Hives』(2012年)などではプロデューサーとしても活躍。QOTSAと並行して進められてきたThe Desert SessionsやEagles Of Death Metalとしても作品を制作するほか、2009年にはデイヴ・グロールとLed Zeppelinのベーシスト/キーボーディストとして知られるジョン・ポール・ジョーンズとともにThem Crooked Vulturesを結成。セルフタイトルのアルバムを発表し、2010年夏には『FUJI ROCK FESTIVAL '10』にも出演している。2000年代以降のUSロックシーンを支える2大巨頭のコラボレーションは、今振り返ってみても非常にレアな機会であり、“ロック低迷”と言われ始めるその後のUSシーンを考えるとひとつのターニングポイントだったのかもしれない。

 Them Crooked Vulturesでの活動を経て、再びQOTSAの活動を再開させたジョシュは2013年、Unkleで幾度もコラボしてきたジェイムズ・ラヴェルを共同プロデューサーに迎え6thアルバム『...Like Clockwork』を制作。クラシックロックやストーナーロックというルーツミュージックを軸に、よりモダンなテイストを強めた唯一無二のサウンドでその存在感を提示した。その一方で、2016年にはQOTSAのメンバーでもあるディーン・フェルティータ、Arctic Monkeysのマット・ヘルダースとのバンド形態でイギー・ポップのアルバム『Post Pop Depression』制作、およびツアーに参加して話題を集める。そんな課外活動を経て、2017年にはブルーノ・マーズやエイミー・ワインハウス、レディ・ガガなどで知られるマーク・ロンソンのプロデュースによる7thアルバム『Villains』を発表。前作の延長線上にありながらも、しなやかでダンサブルなリズムを取り入れた最新型ハードロックサウンドが好評を博し、アルバム発売直前の2017年7月にはQOTSAとしては14年となる来日公演を『FUJI ROCK FESTIVAL '17』で達成。さらに、翌2018年夏には『SUMMER SONIC 2018』と単独での再来日公演が実現した。

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