由薫、ファンの前で歌う喜びに満ち溢れたステージ 初のワンマンツアーで共有した“人との繋がり”

 私たちがライブに行くこと。年齢も性別も住む場所も異なる人たちが、こうして同じ場所に集まっていることを、由薫は公演中に“Alone Together”という言葉で表現していた。今回のツアータイトルにもなっているこの言葉には、彼女の現在の想いと、音楽やライブの魅力が詰まっているように思う。

 由薫が自身初のワンマンツアー『由薫 1st LIVE TOUR 2023“Alone Together”』を開催した。本稿では、6月3日に行われた東京・Spotify O-WEST公演の模様をレポートする。

 SEにThe 1975の「Me & You Together Song」が流れる中、由薫とサポートメンバー4人がステージに登場。5月26日リリースのEP『Alone Together』に収録された「ミッドナイトダンス」でライブはスタートした。スタンドマイクに両手を添え、フロアを真っ直ぐに見据えながら歌う由薫の姿は、心なしか緊張しているようにも見える。しかし、それも次第にほぐれ、続く「Fish」「my friend」では時折体を揺らしてリズムを取りながら、伸びやかな歌声を響かせた。

 3曲を歌い終え、由薫は「どんな人たちが私の音楽を聴いてくださっているのかずっと想像していました。夢のような景色がここにあります」と嬉しそうに語った。「全員の顔が見えます!」と客席に手を振り、会場が和やかな雰囲気に包まれたところで、続いて披露されたのはアップテンポなナンバー「Swimmy」。自然とクラップが沸き起こったフロアに笑顔を見せながら、由薫はハンドマイクでステージ前方に歩み出て歌う。サビでは自身も手を高く上げて観客にハンズアップを煽るなど、フロアと積極的にコミュニケーションを取っていた。

由薫

 音楽を始めたばかりの頃は弾き語りでライブをしていた彼女にとって、バンド編成でライブを行うことも夢の一つだったという。本公演では、バンドメンバーとの一体感にあふれたパフォーマンスを何度も見せた。例えば、イントロを長めにアレンジして届けられた「風」。前半は由薫のギターの音色が主体となり、後半にかけて徐々に楽器が重なって盛り上がっていく様子は、まるで一遍の物語を描いているようでドラマチックだった。そんな「風」の後に披露された「欲」は、幻想的な雰囲気から一転しダークなムードに。深みのある低音ボーカルと、ラテン調の力強いバンドサウンドが会場に響きわたり、迫力のある演奏にフロアから歓声があがった。

 豊かなバンドアレンジが施された楽曲が続いた後は、ベース、ギター、ボーカルのみの小編成で「lullaby」を披露。さらに、彼女が2020年にライブ活動を始めてから何度も歌ってきた曲だという「ヒヤシンス」を、ギターの弾き語りで届けた。どちらも歌詞の一言一句を噛みしめるように、心を込めて歌う姿が印象的だった。

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