22/7 宮瀬玲奈が“立川絢香”と共鳴した瞬間 メンバーに見守られ迎えた卒業コンサート

22/7、宮瀬玲奈卒業公演レポ

 後半ブロックはまず、11thシングル収録曲「あやふやな世界観」がパフォーマンスされる。音源発表時から、転調を効果的に用いたこの作品がいかにメンバーの身体によって表現されるのか期待されたが、せわしなく展開する楽曲に合わせ、不穏さやシャープさ、ストレートな凛々しさと、ダンスによって異なる顔を次々に見せながら、独特のストーリーを描いていく。22/7のライブをドラマティックに彩る作品が、またひとつ誕生したことを思わせる初披露となった。

 続いて蛍光灯再生計画が「交換条件」「読みかけの漫画」を、紅組(天城、河瀬、宮瀬、雨夜、清井、椎名、四条)が「雷鳴のDelay」を歌唱、これまで宮瀬が参加してきたユニット楽曲を大事にたどっていったのち、最終盤に用意されたのは「循環バス」だった。切なくも優しく、かつノスタルジックな空気感をたびたび作ってきたこの楽曲は今回、卒業コンサートを温かく演出するための不可欠のピースとなった。とりわけ、2番サビで背中を押された宮瀬がソロダンスを披露し、後ろに下がったメンバーたちが見守る構図は、この日のハイライトともいえるものだった。そして、宮瀬の卒業を寿ぐ11thシングル表題曲「僕は今夜、出て行く」でコンサートの本編は締めくくられる。

 アンコールの声に応じて、スクリーンには宮瀬が声を担当するキャラクター・立川絢香が映し出され、他のキャラクターたちに見送られるさまが描かれる。やがてドレス姿で再登場した宮瀬が歌うのは、立川絢香としてのキャラクターソング「Moonlight」だった。

 コンサート本編の各ブロックでパフォーマンスされていたユニット楽曲が、もともとキャラクターを前提にメンバー分けされていることを思えば、ここまでのセットリストは“立川絢香役”としての宮瀬の軌跡を振り返るものでもあった。そして、アンコールでの「Moonlight」によって、不可分の存在として生きてきた「宮瀬玲奈」と「立川絢香」の2人は、この瞬間に最も強く共鳴し、重なり合う。

 「Moonlight」ののち、宮瀬は持参した手紙を読み上げながら、メンバー、ファン、家族らへの感謝を伝える。そして、ステージに戻ってきたメンバーとともにこの日最後の曲、宮瀬と立川の2人を象徴する2ndシングル表題曲である「シャンプーの匂いがした」を歌唱した。先輩が旅立つことを知らされた一人称の内省をつづった歌詞には、宮瀬が旅立つ立場となったこの日この時にしか生じない意味が託される。

 
 次なる目標へと向かってゆく宮瀬と、それを後押しするに相応しい充実度を保った今日の22/7メンバーたち。その双方に明るい希望を感じさせるからこそ、この日のコンサートには清々しい後味があった。立川絢香に息を吹き込み、演じ続けてきた宮瀬が、演技者としてまた新たな未来を描いていく日を心待ちにしたい。

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