TikTokの流行はニコニコ動画が原点? 日本における二次創作の礎を築いた“ニコ動文化”の重要性

 近年、若者に人気の動画に特化したSNS・TikTokから楽曲がヒットすることは珍しくない。直近ではHoneyWorksの「可愛くてごめん (feat. かぴ)」、[Alexandros] の「閃光」などがバズを生んだ。前者はTVをはじめとするアーティスト本人のメディア露出がほとんどないにも関わらず、そして後者は2021年の楽曲であるにも関わらず、2022年に突如MVの再生回数が増え、楽曲の知名度が急上昇したのである。そのヒットにはTikTokにおける二次創作文化が大きく影響しているのだが、そうした文化の発祥となったのは動画共有サービス・ニコニコ動画であり、その点で2つのプラットフォームには共通点があるように思う。

 「可愛くてごめん (feat. かぴ)」は主にTikTokにおいては“踊ってみた”の楽曲として多く利用されている。“踊ってみた”とは、ニコニコ動画で生まれた、既存の楽曲に合わせてダンスをするという二次創作的な動画ジャンルであり、他にも“歌ってみた”、“弾いてみた”などがある。

可愛くてごめん (feat. かぴ)/HoneyWorks 

 ニコニコ動画は2006年に開始されたサービスで、現在のTikTokのように互いの制作した、またはお気に入りの動画にコメントし合うコミュニティのような一面も持ってきた。動画の内容は主にアニメ・ゲーム・音楽(ボーカロイドなど)に関連しているものが多い。YouTubeほど明確に動画投稿者と視聴者が分かれてはおらず、“ユーザー対ユーザー”としての色が強いことが特徴で、個人で制作した二次創作動画も多く投稿された。こうしたニコニコ動画の“ユーザーとユーザーとの間で音楽を楽しむ”という特徴により歌ってみた、踊ってみた、音MAD等、音楽関連の二次創作文化が発展していったのである。

 ニコニコ動画では2007年ごろから主にアニメやゲームに関する曲を中心とした踊ってみたが投稿され始めた。踊ってみたというコンテンツが徐々にニコニコ動画外にも広まり、中でもその知名度を爆発的に上昇させたのは、2013年のAKB48「恋するフォーチュンクッキー」だろう。多くの人が同じダンスをしてその動画を投稿し、大ブームとなった。その後、2016年の星野源「恋」に合わせた「恋ダンス」もヒット。同曲はドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)のエンディングで、主題歌であった「恋」にあわせて新垣結衣、星野源をはじめとするキャストが踊っているダンスが人気を得た。こうした流れを経て、アーティスト側がダンスを用意し、それを踊ってもらうという、“踊ってみた”を利用したプロモーションが流行し始めたように思う。

【MV full】 恋するフォーチュンクッキー / AKB48[公式]
星野源 – 恋 (Official Video)

 一方TikTokは2017年にリリースされ、アプリでは動画の視聴と、短編動画クリップの撮影および編集、さらに動画クリップへの特殊効果の追加が可能となっている。BGMをリストから選択し撮影した動画にBGMを組み合わせて編集することで、オリジナルの動画が作成できる。動画に簡単にオリジナル性を持たせることができ、二次創作動画とは非常に相性が良い。そのようにしてユーザーによって無数に制作される動画は、時にはプロモーションに利用されるほど大きな影響力がある。個人で気軽に撮影・編集・投稿ができ、それを視聴するという相互的なメディアであるという点において、ニコニコ動画とTikTokは共通していると言えるのではないか。前述の「閃光」もその疾走感から、TikTokではスピード感のある様々な動画に合わせられ、二次創作的な用いられ方をしていた。

[Alexandros] - 閃光 (MV)

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