くじらのアーティストとしての強みが凝縮された2ndワンマン 観客に伝えた“1人じゃない”というメッセージ

 再びMC。退屈な毎日の中で、いろんなものをため込んでいる、それがふとしたことで悩みの解決になる、いろんなことがここにくるための人生だったらそれも悪くない、と心情を吐露した後、こう客席に投げかけた。

「退屈ばかりじゃつまらないということで、人生もっと楽しいことを。盛り上がっていけますか? (客席から拍手と歓声)楽しい、やりましょう!」

 最初の一音で大歓声があがった「金木犀」。くじら本人も、すでにこの曲が身体に入っているようで、リズムに合わせて自由にステージを行き来する。ゴージャスなアレンジが華やかなアップナンバー「抱きしめたいほど美しい日々に」では、抜群のリズム感を生かして安定した歌を響かせる。この曲の特徴であるリズミカルに駆け上るようなメロディさえ、まったくぶれなく歌った姿は、ニクいほどカッコ良かった。ソファに座り「ねむるまち」を歌った後、再びマイクをとり「すごく楽しみにしてたんです」と、この日のライブを振り返る。そしてライブタイトルにもなった『生活を愛せるようになるまで』のリリースから、あと3カ月で1年経つと述べた後こう結んだ。

「自分が20~21歳に思った大切なことを詰めたアルバムだから、絶対にこのタイトルで(ライブを)やりたかった。自分は世の中が、果てしなく生きづらいなと思う人間でして。そういう自分の中身を書こうと思って音楽をやっていて、一つひとつの言葉を大切に……。悩んでいるのは私だけかなって思っている人に、そうじゃない、1人じゃないよって思ってもらえたら。同じことを思っているようにしか伝わらない言葉で、音楽をやっていきます。また集まれたらいいなと思います。共に生きていきましょう」

 この言葉を受け、歌われたのが「生活を愛せるようになるまで」だった。独特の描写で綴られたこの曲の歌詞は、今のくじらの人生観に通ずるものだろう。傷つくことを知っていて、傷つきながらも生きていること、それが美しいのだと、彼は言っている。しかし願いも込められている――生きるなら、日々が輝き、美しいと感じる方がいいよね、そうなるまで毎日を紡ごう、と。

 最新シングル「幽霊少女 (2023 ver.)」の他、本人曰く「音源としてもこのライブが初解禁」という新曲も含め全20曲。安定したピッチとリズム感、オクターブ上を使いこなすボーカルアプローチのスキル、そして優美で軽やかなメロディライン。くじらというアーティストの強みと個性が凝縮されたライブだった。

 終演後。明るくなった客席。ステージに1人残ったくじらは、端から端まで何度も行き来しながら、手を振る観客の顔を一人ひとり見ながらレスポンスしていた。

「ありがとうございます。ライブも、今の楽しいこと、たくさんしたいなと思いますので、これからもよろしくお願いします」

 そんな未来に繋がる言葉を残してくじらはステージを後にした。

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