“ヒゲダンらしさ”を感じる楽曲のポイントとは? Official髭男dism「TATTOO」から考察
特にびっくりするのは、サビが終わって〈消えない 消さない 消させやしない〉とダメ押しのフレーズが登場すると、すぐさま〈大丈夫~〉と次のAメロが始まるところ。息をつかせないまま、さらにストーリーが進んでいく。個人的には、ここに「ヒゲダンらしさ」を強く感じた。たとえばアニメ『SPY×FAMILY』のオープニング主題歌としてもおなじみとなった「ミックスナッツ」も、イントロを除けば、一小節休止が入る以外歌いっぱなし。ほか、「I LOVE…」も間奏が少ない1曲だ。決して短くない尺のなかに歌をぎゅうぎゅうに詰め込んで飽きさせない、そんな力技が成立するのがヒゲダンだ。
ここでわかるのは、主役はあくまで歌と言葉であるということ。歌うストーリーテラーとしての藤原聡の力が存分に活かされている。早口や語りにしてしまうことなく、いつもメロディがあふれだすかのように言葉に付き従っていることもヒゲダンの強みだろう。〈大丈夫〉と〈愛、ジョーク〉〈ハイボール〉を対比させるような(ときにストレートすぎる)押韻も、歌としての魅力を高めている。
出す曲出す曲、つぎつぎとスタイルを変えて楽しませるが、ジャンルのクリシェや引力に負けないヒゲダン。その剛腕には痛快さを覚える。「TATTOO」もそんな1曲だ。