鹿野淳、10回目の『VIVA LA ROCK』で届ける集大成 コロナ禍でも途切れなかった“エンターテインメントの架け橋”としての自負

鹿野淳、10回目のビバラへの想い

VIVA LA GARDEN復活の感慨 10回目が“集大成”となった理由も

――あと今年の大きなトピックは、入場無料の屋外エリア=VIVA LA GARDENの4年ぶりの復活ですよね。ぶっちゃけ、GARDEN STAGEだと人が集まりすぎて混乱が生まれるんじゃないか、みたいなアーティストも今年はいるじゃないですか。

鹿野:それはね、今年GARDEN STAGEに出てみたいって言ってくれた人が結構いるからなんです。例えば、コロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店)のデビューライブはビバラなんですけど、コロナナモレモモのオマキ(ドラムと歌とニタニタ)がこのライブをもって脱退するんです。だからメモリアルなライブなんです。5回目のビバラでデビューしたバンドだし、10回目で辞めるメンバーがいるっていうタイミングだし、もう1回原点に戻る気持ちでVIVA LA GARDENに立ちたいと。自分もそれがベストだと思ったし。

 

――他にも、2日目に出演するマハラージャンもホールでライブやってるようなアーティストでしょう?

鹿野:そうそう。ザ・リーサルウェポンズも大人気だし、Aile The Shotaくんもいるからね。

――鹿野さんの中ではVIVA LA GARDENがあってこそ“完全体のビバラだ”という意識はすごく強いと思うんですけど、今年やっとそれを迎えられて、しかもこういう強力なブッキングになっているっていう――。

鹿野:……今、叱られてるんですか?

――いやいや、そうじゃなくて。もちろん本望だと思うんですけど、お金を払わないでVIVA LA GARDENだけ行こうと思ってる人もいっぱいいるじゃないですか。子供連れでも行けるエリアで、無料でライブを観られて、ご飯を食べて帰れるし。Aile The Shotaくんを観るためだけに、さいたまスーパーアリーナの中には入らないけど地方から来る人もいるかもしれないわけで。今年また、VIVA LA GARDENを作れるっていうのはどういう感覚なんですか。

鹿野:さいたまスーパーアリーナって素晴らしいライブができるアリーナなんですけど、同時にさいたまスーパーアリーナで「本当の意味でフェスをやってるぞ」という自負を持てるフェスを作るのって結構大変なんです。野外フェスとかの場所と違って、音楽にとって異空間じゃないから。少なくとも僕の中では、さいたまスーパーアリーナの中だけでビバラが完結したら、それはさいたまスーパーアリーナでやってる他のイベントとかワンマンライブとあまり変わらないものになっちゃうと思っていて。でも、VIVA LA GARDENっていう野外のエリアを音楽フェスがプロデュースしてるんだということを、ビバラのチケットを持ってない人や、近隣の人にプレゼンテーションできることはすごく重要なことだと思う。あとはDJをやっていたり、ご飯を食べながらみんなで談笑しているVIVA LA GARDENの雰囲気を見てからアリーナに入ってライブを観るのと、その雰囲気がないままライブを観続けてるのって本当に違うんだなっていうのは、改めて2021〜2022年の開催を通しても思ったし。

――ですよね。

鹿野:だからやっぱり、今年こういう状態で久しぶりに開催できるってことで、「ビバラらしいフェスが久々にできる」っていう気持ちはどこかにあります。もちろん、2020年のオンライン開催や、2021〜2022年の開催を一切否定しないし、コロナ禍でそれをやれたことほど誇らしいことはないんだけど、「さいたまスーパーアリーナで完全体のフェスをやるんだ」という意味においては、本当に久しぶりの感覚なので。

――奇しくも10回目でそこを取り戻せたことはすごく大きいですよね。その流れで行くと、VIVA LA J-ROCK ANTHEMSが今年、一旦の最終回を迎えるのも大きいポイントだと思うんですけど、これは10回目というひとつの区切りみたいなのもあって?

鹿野:そこにはいろんな意味合いがあるんだけど、VIVA LA J-ROCK ANTHEMSも3回で終わるはずだったんですよ。ビバラの2回目の開催(2015年)からやっているので、本当は2017年で終わるはずだったんです。でも3回目のライブが終わったときに、特に亀田(誠治)さんが「J-ROCK ANTHEMSで新しい出会いができて、ミュージシャン人生としてこんなに楽しいことはない」「最初は急造ユニットみたいに見られていたし、そう思ってた自分もいたかもしれないけど、今年やった後に完全に新しい“バンド”が組めた気持ちになったから、この先も続けよう」って言ってくれて。あー嬉しいな、いつまでも続けてほしいなとそのときに思ったんです。それで続けていたら、2020年に(津野)米咲が亡くなって。あのときもやめるかやめないかって話になったんだけど……。

――その話になったんだ。

鹿野:なりました。そこからしか話は始められませんでしたし。一晩かけて、結構な時間、話し合って。でもこのままやめちゃうと、米咲がJ-ROCK ANTHEMSを解散させたことになるねっていう気持ちが大きくて。それは嫌だな、アンセムズとしてもそれはもったいないという気持ちに全員がなったんです。

――米咲自身も、そう思われるのは嫌でしょうからね。

鹿野:だから、そうならないためにも伊澤(一葉)くんを呼んで、2年続けてきて。ただ現実的に、このフェス自体が毎年新しい人に入れ替わるラインナップではなく、このフェスなりの癖があるブッキングをしてきたから、ゲストボーカルとしての新しいアーティストの選択肢がどんどん狭まってるんです。あとは、一個人の些細な話なんですけど、10回目を迎えて、今後は僕がフェスの顔役から一歩後ろに引こうと思ってるんですね。

――え、そうなんですか。来年から?

鹿野:そう。そうなったときに、VIVA LA J-ROCK ANTHEMSは亀田さんと僕で作ったコンセプトだし、フェス側で新しく誰かが引き継ぐ形でシステム化していくこと自体がバンドとして面白いことだと思えなかったから、今年で終わるっていう感じです。

――一歩後ろに引こうと思ってるのはどういう理由なんですか?

鹿野:あまり重要ではない話に惹かれるね。少なくとも来場者にはどうでもいい話な気がするけど。理由は、このまま自分が顔役でいたら、ビバラがカッコ悪くなるからです。このフェスが終わって3カ月経ったら59歳ですよ? 来年60歳の人が、いつまでもこのフェスにしがみついて顔役になって、朝から「VIVA LA ROCK!!」とか顔を歪めて全力で叫んで盛り上げようとしてるっていうのは、少なくとも僕にとっては見苦しい。10回目を総集編にしたというのはそういう個人的な意味もあって。加えて、ありがたいことにこのフェスはここまで育ったから、いい意味でシステムもでき上がってるんです。だから自分が旗を振って、フェスとは何なのかってことを一つひとつ体現してきたビバラを、ここでひと区切りにしたいなって気持ちです。以上!

――これは結構驚く人も多いんじゃないですか?

鹿野:だから以上だって! ものすごく小さな話で、お客さんにとっては関係のないことなんだから。すでにそのことを話した何組かのアーティストからは、温かい声もいただいたけど。まあ、そうやって言われるうちが華じゃん? 言われるうちに一歩後ろに下がれるのはラッキーだなって。

――なるほどね。コロナ禍とかいろいろあったけど、とりあえず10回目をこういう形で迎えることができて、ビバラを預けることができるなっていう思いになれてるってことですもんね。

鹿野:そうそう。今の『VIVA LA ROCK』にとって、サイズ感とかスケール自体が、気持ちで開催することと同じぐらい重要なものになってきてるから。そういう状態にさせてくれたのは今まで出演してくれたアーティストであり、参加してくれたお客さんだっていうことだと思うんだよね。今後もビバラをその人たちに支えていただくんだったら、自分がプロデューサーを降りて新しい体制になるっていうのはすごくいいことなんじゃないかなと思っています。

――でも、鹿野さんの話を聞いてると、やっぱりフェスを作るのが好きなんだと思うですよね。新しいものをリスクを背負って作るっていう、そういうスリリングなチャレンジが好きなんですか?

鹿野:チャレンジをしようって気持ちはそんなにないんです、一貫して。やれちゃうからやってるだけなんですよ。そもそも、僕がやりたいことってあまり人に理解されないことが多くて、それでもビバラは理解されてる部分が多いからラッキーなフェスだなと思うけど、やっぱりスタッフと話していても、「それ、やらなくてもいいじゃないですか?」ってことばかりだし。例えば、GARDEN STAGEだって何千万円もかかってるわけで。単にビジネスとして考えればお金をかけない理由はいっぱいあるよ。でも、「そこにお金をかけるからには絶対に成功させるぞ」「これくらい人を集めるぞ」「少なくとも全体で利益を出すぞ」みたいな気持ちが逆に湧いてくるんですよ。その熱量はやがてスタッフ全体の熱量になるんです。けど、普通は会社単位でその事業の予算案が承認されなかったら、主催になれないわけじゃない? そういうビジネスだからね、フェスって。でも自分はそういうのがもどかしいんですよ。だったら、そんなつべこべがない関係性と責任を持っている方同士で、いっちょ祭りを立ち上げませんか? っていうのが自分の会社経営者としての考えでもあって、そことフィットしている人とはありがたく仕事をしたい。「誰かにそのリスクを負わせるべきじゃない。自分で請け負います」っていうところで、素直に結びついている者同士でやれるフェスが好きなんですよね。

――チャレンジという気持ちではないって言ってたけど、要するに“新しい遊び場”が欲しいってことなのかなと思ってますよ。

鹿野:それはそういうことだね。

――埼玉でビバラの基盤を作れて、人に任せられるまでに確立できたから、次は『TOKYO ISLAND』(2022年に海の森公園で7年越しに再開されたキャンプフェス)で新しい遊び場を作りたいっていうことなんでしょうね。

鹿野:道筋を勝手に作ってくれてありがとうございます(笑)。『TOKYO ISLAND』を省みるとね、やはり自分が中心になってやっていくものって、立ち上げ期にリスクが大きいものなんですよ。発想も作り方も堅実じゃないから。

――でも楽しそうですよね。フェスをやる人として、引退する気がさらさらないじゃないですか(笑)。

鹿野:どうしたらいいんだろうね。でも、こう見えて僕はこれまでいろいろ引退してきてるんですよ。『MUSICA』の編集長も辞めてから15年近く経つしさ。ビバラの顔役から退くのも、「もう自分じゃなくていいだろう」っていう意味ではその瞬間と一緒。でもそうなると、個人としては次に何をやっていいのかわからなくなっちゃうんだよね。僕自身の理由でやめたというよりも、「会社として、イベントして考えたときに、こっちの方がいいだろう」っていう選択肢を取ってきたから。

――でも、生きがいになっちゃってるわけだから。パーティを続けたいってことでしょ?

鹿野:そうだね、どうしても何かひとつのコミュニティを作りたいんだろうね。

――それってやっぱり、クラブやテクノ好きなところから始まってるからなんですかね。鹿野さんのイベントでのお客さんとの距離の近さって、元を辿れば、クラブでのDJとフロアの距離感の近さに似ていると思うんですよ。それは『MUSICA』もそうだけど。

鹿野:完全にそうだね、ありがとう。DJ的にアーティストを紹介してるんですよ。もともとLIQUIDROOMの店長が同い年で、友達になれたことがきっかけで、自分の責任でできる範囲でイベントをやろうと思って始めたのが最初で。それからクラブ寄りの雑誌の編集長になれたから(『BUZZ』)、その現場を作りたいなと思って毎月パーティをclubasiaでやるようになったので。

――さっきのフェスのキュレーション性の話にも重なるけど、DJがBPMを合わせながら気持ちよくジャンルを移行していく感じと似ていて、やっぱり鹿野さんはアーティストとリスナーを繋ぎたいんだなと。そこはすごく合点が行きます。

鹿野:そうかもね。しかも、それを気合い入れてやるっていうよりは、「ちょっとこれ面白くない?」ってフェイクを入れながら繋いでいく感覚に近いというか。まあ、それ以外のやり方は僕にはきっとできないからね。そういう場所とチャンスがあってよかったです。

■イベント情報
『VIVA LA ROCK 2023』
公演日:2023年5月3日(水・祝)、4日(木・祝)、5日(金・祝)、6日(土)、7日(日)
出演アーティスト
5月3日(水・祝)
ano / Amber's / UVERworld / 大森靖子 / THE ORAL CIGARETTES / 岡崎体育 / 片平実(Getting Better) / KEYTALK / キュウソネコカミ / THE KEBABS / go!go!vanillas / SHISHAMO / SKY-HI / Chilli Beans. / This is LAST / Tele / Novel Core / Hakubi / MY FIRST STORY / マカロニえんぴつ / moon drop / 森 大翔 / WurtS
(五十音順)

5月4日(木・祝)
Aile The Shota / 秋山黄色 / androp / KANA-BOON / キタニタツヤ / クリープハイプ / スガ シカオ / TAIKING(Suchmos) / DJ石毛&ノブ(the telephones) / Dios / TENDRE / dawgss / Vaundy / Bialystocks / BE:FIRST / VIVA LA J-ROCK ANTHEMS【Ba:亀田誠治/Gt:加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)/Dr:ピエール中野(凛として時雨)/Key:伊澤一葉】 / FIVE NEW OLD / flumpool / BREIMEN / マハラージャン / UNISON SQUARE GARDEN / Ryu Matsuyama / ROTH BART BARON
(五十音順)

5月5日(金・祝)
4s4ki / indigo la End / Ochunism / ODD Foot Works / ORANGE RANGE / Creepy Nuts / Saucy Dog / 水曜日のカンパネラ / SUPER BEAVER / sumika / そこに鳴る / DJやついいちろう / 帝国喫茶 / DISH// / XIIX / tonun /にしな / BiSH / FINLANDS / フレデリック / 黒子首 / マルシィ / Lucky Kilimanjaro / 凛として時雨
(五十音順)

5月6日(土)
打首獄門同好会 / ELLEGARDEN / エレファントカシマシ / 大宮セブン / coldrain / 小林私 /サバシスター / ジェニーハイ / シンガーズハイ / the dadadadys / CHAI / DJピエール中野 / TETORA / 東京スカパラダイスオーケストラ / totemぽぉる(BRAND-NEW BAND STORYグランプリバンド) / バックドロップシンデレラ / Panorama Panama Town / ハルカミライ / the band apart / マキシマム ザ ホルモン / ヤバイTシャツ屋さん / ヤングスキニー / 夜の本気ダンス
(五十音順)

5月7日(日)
ART-SCHOOL / ACIDMAN / KALMA / Ken Yokoyama / コロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店) / Suspended 4th / SiM / 四星球 / DJダイノジ / Dizzy Sunfist / the telephones / 10-FEET / ドミコ / Dragon Ash / Nothing's Carved In Stone / ねぐせ。 / 04 Limited Sazabys / BRAHMAN / HEY-SMITH / bokula. / ザ・リーサルウェポンズ / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS / ROTTENGRAFFTY
(五十音順)

●会場:さいたまスーパーアリーナ
●主催・制作:(株)FACT /(株)ディスクガレージ /(株)イープラス / ソフトバンク(株)
●制作:さいたまスーパーアリーナ
●後援:埼玉県 / さいたま市 / 浦和レッズ
●協賛:ファミリーマート / LIVE DAM AiR  第一興商 /  サッポロビール(株) / コカ・コーラ / GLAB. / デジマート
●協力:一般社団法人さいたま新都心エリアマネジメント
●お問い合わせ:ディスクガレージ

【チケット一般発売(先着制)】
●チケット料金
5日通し券:44,000円(税込)
2日券各種:20,000円(税込)
1日券:11,000円(税込)

■イベント情報
『VIVA LA ROCK 2023【前夜祭】』
開催日時:2023年5月2日(火)/ 開演 17:00 ~ 終演 20:00(予定)
会場:GARDEN STAGE(さいたま新都心駅すぐ・けやきひろば「VIVA LA GARDEN」内)
価格:入場無料(混雑時には、ステージエリアへの入場を制限する場合もあり)
出演:the telephones、超能力戦士ドリアン、DJダイノジ

●VIVA LA ROCK 2023公式アプリ
・iOSをご利用の方:https://apps.apple.com/jp/app/viva-la-rock-2023/id1454487644
・Androidをご利用の方:https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.eplus.vivalarock
●イープラス:https://eplus.jp/viva/
●チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/vivala23/
●ローソンチケット:https://l-tike.com/viva/
●For foreigners(海外からのご購入)https://ib.eplus.jp/vivalarock2023/

●エリアマップ:https://vivalarock.jp/2023/map/areamap.html
●オフィシャルHP:https://vivalarock.jp

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