坂本龍一、YMOやソロのみならず関連楽曲もバイラルチャート席巻 “世界の坂本”へ飛躍するきっかけとなった珠玉の名曲

 このように多くの楽曲に携わってきた坂本龍一だが、やはりチャート上位を占めるのは「Merry Christmas, Mr. Lawrence(戦場のメリークリスマス)」「energy flow」の2曲である。坂本龍一のディスコグラフィにあまり詳しくない方でも、聴き覚えのある2曲ではないだろうか。ちなみによく坂本龍一の代表作と勘違いされがちだが、「RYDEEN」は、坂本による作曲ではなく、YMOのメンバーで今年1月に亡くなった高橋幸宏が作曲を手掛けた楽曲だ。「energy flow」は、1998年リリースのソロアルバム『BTTB』に関連してリリースされた『ウラBTTB』収録楽曲で、栄養剤「リゲインEB錠」のCM楽曲。楽曲の提供だけでなく、坂本本人もCMに出演したことで、当時大きな話題を呼んだ。先日一部公開された『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)の「坂本龍一特集」のために坂本本人が回答したアンケートでも「energy flow」について言及されている箇所がある。自身のキャリアで最大のヒット作である「energy flow」だが、制作にあたりポップであろうと全く考えていなかったにもかかわらず、大ヒットとなったことに驚いたことや、YMO「Behind the Mask」が西洋人の感性に影響を受けたエピソードを振り返るなかで、「energy flow」はむしろ西洋人よりアジア人の感性に受けが良かったこと、などが語られている(※2)。

坂本龍一 — energy flow

 そして、首位を獲得した「Merry Christmas, Mr. Lawrence」は、ことさらに語ることがおこがましいほどの名曲であろう。大島渚監督作品『戦場のメリークリスマス』のメインテーマとして生まれ、坂本龍一を「YMOの坂本龍一」から「世界の坂本」へと飛躍させるきっかけとなった楽曲だ。耽美的でオリエンタルな雰囲気と西洋的なコードの融合が世界的に評価され、同曲も収録されているサウンドトラックは、1983年に英国アカデミー賞作曲賞を受賞している。「西洋から見ても東洋から見てもどこでもないどこか、そしていつでもない時間」をコンセプトに作られた楽曲だけあって、それを体現するように今でも国や地域を超え、そして時間も超えて愛されている。坂本龍一逝去を伝える公式サイトのコメントで印象的な「Ars longa, vita brevis. 芸術は長く、人生は短し」という結びの言葉のとおり、「Merry Christmas, Mr. Lawrence」をはじめとした坂本の生み出した楽曲群は、これから先も時の試練に耐え、永遠に残り続けることであろう。

Merry Christmas Mr. Lawrence / Ryuichi Sakamoto - From Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022

※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2023-04-05
※2:https://shop.mu-mo.net/st/special/ryuichisakamoto_12/kanjam/01.html?jsiteid=mumo

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